大型ショッピングモールなどで利用することが多いフードコート。個人的に好きなものを選べて、同行者と一緒に食べられる、かつての「デパートの大食堂」の現代版ともいえるだろう。


■家族と出掛けた平日のショッピングモールで
「東京郊外に住んでいますが、数年前、近くにショッピングモールができました。とはいえ大型ではなく、来るのもだいたい近隣の人が多い。ただ、昼間はランチ客、午後は高齢者の集団でにぎわっています」

サリさん(38歳)は、6歳と4歳の子を共働きで育てている。夫は仕事が多忙で、週末もきちんと休める日がないほどだ。そんなときに助けてくれるのは、自宅から徒歩5分ほどのところに住む義父母。義父は今も現役で働いているため、義母が率先してサリさんの「助けて」をキャッチしてくれる。

「この義母が本当に人間ができているというか。いつでも私の味方をしてくれる。尊敬していますし大好きです。でも義母の方からお節介は焼かない。そこがすごいと思う。『すみませんけど、今度の水曜日……』と言いかけると『すみませんなんて言う必要ないの。
何時から何時ごろまで?』とあっさりさっぱり言う。以前はお礼にお金を差し出したこともあったが、『いらないわよ。いつかサリさんに時間があったら、一緒にランチでもしましょ』と茶目っ気たっぷりに言うんです。今まで何度かランチに行っています。義母とだと話が尽きない。彼女は趣味も多いし関心事の幅も広いから」

ある日、サリさんと夫は、平日に有給休暇をとることにした。

「ショッピングモール内に子どもたちが遊べる場所があるんですが、週末に行くと混んでいるので、平日、思い切りそこで子どもたちを遊ばせようということになって」

■下品な話を大声でする集団
子どもたちも楽しみにしていた。「今日は思い切りパパと遊べるよ」と言ったときの子どもたちのはしゃぎようはすごかったという。

「午前中から行って、広場や室内、場所を変えながら子どもたちは夫と遊びまくっていました。私は途中で体力が尽きたほど」

昼は、ランチ時を過ぎたあたりでモール内のフードコートで食事をした。子どもたちの楽しそうな顔を見ながら、夫とも話が弾む。少しすると、急に大きな男性の声が聞こえてきた。


「それがすごく下品な話をしていて。10人ほどの高齢者男性軍団で、『あのときのキャバクラのおねえちゃんがどうした』とか『おまえ、胸触ってただろ』とか。それほど混んでいなかったけど親子連れもけっこういたし、みんな眉をひそめていましたね。男性たちはみんな昼間から酔っ払っていました」

店の人も注意すればいいのにと思ったが、フードコート担当者は少ないようで姿も見えなかった。

■一番酔っ払って騒いでいたのは
そのうち、夫が「ん?」と言いながら男性軍団へ目線を向けた。その方向を見ると、立ち上がって下品な話を主導していたのが……なんと義父だった。

「あちゃーという感じでしたね。夫は『冗談だろ』と立ち上がった。いいよ、行こうよと言ったんですが、『許せない』とそちらへ歩いていきました。さすがに義父も気づいて『おお。みんな、これ、オレの息子。仕事はどうした』と酔っ払い特有の大声が炸裂していました。
夫は何ごとか話していましたが、最後には『あんたら、人の迷惑を考えなさい』と大きな声で言って戻ってきました。『情けないよ』とつぶやいた夫の顔が忘れられません」

息子に諫められてさすがに義父もおとなしくなったかと思いきや、その後も女性の品評会みたいなことを言ったり、静かにするよう求めてきた女性スタッフに『おねえちゃん、一緒に飲もう』と誘ったりしていたという。

サリさんは内心、非常に驚いていた。義父はかつては教育関係の仕事をしていた人で、実直で堅物として知られていたからだ。サリさんにも、いつも「ためになる言葉」を説いてくれていた。だがそういえば、と思い当たる節もあった。

■義父の態度に肩を落とす夫
「義母は義父のことをほとんど尊敬していないように見えました。家庭での義父は義母に甘えきりだったし、思い通りにならないと怒鳴ることもあったと夫も認めていました。外面がいいというのか、立派な肩書きがプレッシャーだったのか、かなり裏表があったようです。でもあそこまで下品だとは知らなかったと夫は肩を落としていました」

このことは義母には内緒にしておこうと二人は話しあったのだが、狭い街のこと、下品に騒ぐ父親を息子が諫めたとうわさが広がって、義母の耳にも入ってしまった。

「義母は『迷惑かけたわね』と私に言って、『あの人の節操のないのは昔からなの』と。おそらく浮気などもされたんでしょう。
でも義母は『放っておくことにしてるから』とさっぱりした顔をしていました。むしろ夫がしょげていて。夫は父親を誇りに思っていたんだと思います」

大声の酔っ払い軍団が下品なことを言って周りに迷惑をかけている。その真ん中にいたのが父親だと目の当たりにしたときの息子は、いくつになっても衝撃が大きいのかもしれない。
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