私は役者という仕事をさせていただいていますが、役者というのは、時に凶悪な殺人者にもなれば、ドジだけどまっすぐで純朴な主人公にもなれなければいけません。
キャラクターを誇張したコメディーなら過剰に表現することで成立しますが、リアリティを重視する作品になってくると、自分の内側から滲み出るもので勝負することが必要とされます。


美男美女という生まれつきの才能(と断言しますが)を持った人たちであれば、そこで勝負することもできます。しかし、それができるのはごく限られた人たちのみ。あいにく私はその才能を持ち合わせていないので、表面では勝負できない分、内面の引き出しをいかに持つかが重要になってきます。

そして意外に、監督たちが真に求めているものは表面的な美しさよりも内面から滲み出る人間性だったりします。

先日、ある監督から「君は、色気の中の狂気を表現できるようになったらいい。もっと言えばその反対の、地味で真面目な役もできる二面性があれば一気に幅が広がるね」とお言葉をいただきました。色気の中の狂気! そんな役をください! とその場で言うのは控えましたが、ほほう、二面性かと。

なぜか惹かれる二面性今、日本で女の生き様を描ける女優をひとり例にあげるとすれば寺島しのぶさんでしょう。清楚で控えめな昭和の女性が似合う一方で、妙な哀愁と匂いたつ色気を同時に兼ね備えていらっしゃる。映画『昼顔』でカトリーヌ・ドヌーヴが演じた夫の前では貞淑な人妻、昼は娼婦という主人公もそうですが、そういう役がはまるのは、その方の内面から滲み出るものがあるからです。

それは色気だったり、世の中の世知辛さだったり、いろいろな経験から作られるものです。

色気のある人というのはわりと少ないにも関わらず、意外とみんな本能で求めていたりします。


色気を身につけるにはイメージすることでは色気を身につけるには、どうしたらいいのか。むろん、娼婦になればいいという話ではなく、監督にはこう言われました。

「たとえば同性を恋愛対象だと考えたら、どうする? 女性に対してどういうアプローチをするか。目の前にいる女性に対してイメージしてごらん。不思議とイメージするだけで変わってくるから」

男性が恋愛対象なのは普通。その価値観から外れてもう一歩先を覗いてみろと。

でもね、たしかにそうイメージしてみると、状態が変わるというか、新しい感覚が芽生えてくるんですよ! なんかドキドキします。妙に体がくねくねしてきたり(笑)。

そうやって価値観を広げていくだけでも多面性は作られていくのです。というか役者という職業は、自分が経験したこともないことも表現していかなければいけないので、どれだけ具体的にイメージできるかが仕事のクオリティに関わってくると言ってもいいのではないでしょうか。それがうまくできれば苦労はしないのですが。ほほ。


自分の二面性を考える役者に限らず、深みのある女性は人間的にも魅力的です。

まずは、自分の持っている面から考えてみるのがいいでしょう。自分はどんな性格なのか、サバサバしているのならしっとりとした要素が、おとなしい性格ならどこか大胆な一面があると意外性が出てきます。ギャップというと使われすぎていて面白味がないのですが、自分の中の面を増やすことが、相手がおっ!と思う魅力的な人間になる、いわゆるモテ女になる秘訣ではないでしょうか。

しかし本来、人は多面的な生き物。まだ自分でも気づいていない自分の中の面を意識して、隠さずに表現していけば、きっと魅力的な要素はあなたの中にもすでにあるはずです。

30歳を過ぎたらもう若さという鎧では戦えませんから、ANGIE女史は滲み出る、匂いのするような色気で勝負していきましょう。

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