まだ何者でもない中学生の ”ルパン” が、後の相棒となる次元と出会い、高度経済成長期の日本を駆け巡るアニメシリーズ『LUPIN ZERO』。知られざる二人の過去の物語は笑いと涙、そしてちょっぴりビターな成長譚としてファンを大いに唸らせる内容となっている。


今回は『LUPIN ZERO』の大きな牽引力となったルパン役/畠中祐、そして次元役/武内駿輔に本作でいかなる課題に挑んだかを語ってもらった。本物のルパンと次元を彷彿させる、二人のやり取りにもぜひ注目してもらいたい!

>>>若きルパンと次元の出会い!『LUPIN ZERO』場面カット&畠中さん・武内さん撮り下ろしショットを見る(写真17点)

――『LUPIN ZERO』の企画を聞いた時の印象、また台本を読まれてキャラクターやストーリーのどんなところに魅力を感じられたかをお聞かせください。

武内 二人共通の思いとしては「いよいよここに手をつけたか!」という思いがあったよね。

畠中 そうだね。オーディション用の企画書を見た時は「まさかあのルパンじゃないよな? タイトルだけ借りているんでしょ?」と思ったら本物で(笑)。

武内 ルパンと次元って書いてあったら、あのルパンでしょう、ということなんですが、オーディションの段階では内容がまったくわからなかったんです。
二人は同級生ということで、そういうやり取りの台詞が書いてあったものの、その絵がまるで浮かばなくて、どう演じればいいか悩みました。自分なりに頑張ってみたところ、次元役を戴けることができました。

この作品はやはりルパンが大事だと思っていて、「僕が選ぶなら畠中祐だな」と思っていたら、まさにそうなって。祐以外にできないでしょう?
『LUPIN ZERO』畠中祐&武内駿輔の名コンビが捧げた先人へのリスペクト

畠中 こっちはそう思ってないですけどね(笑)。 でも、今回何人オーディションに参加されたかはわからないんですが、選ばれるのは若手だろうとは思っていたんです。
次元役が武内くんと知った時「ああ、彼は相当研究してくるんだろうな」というのが目に見えていて、それは作品にとって大きなプラスであり、自分にとっては大きなプレッシャーにもなりました(笑)。


武内 プレッシャーに関して言えば、『ルパン三世』ってすっかり完成されたイメージが強いんですが、台本を読むと未完成のルパンと次元の成長の物語になっていたので、自分たちも演じる中で彼らとリンクする形で一緒に成長すればいいのでは、と思えて気が楽になりました。
ストーリーも笑いあり、泣きあり、アクションあり、そして十代ならではの葛藤や悩みありと、盛りだくさんなんですよね。

畠中 オーディションの時はルパンであることをあまり意識せずに演じたんですよ。でも、台本を見たらセリフに「だけっどもなぁ」って書いてあって「おおっ、むっちゃルパンだ!」って(笑)。

それを見た瞬間「ルパンをやっていいんだな」って思いました。実は前もってPART1からシリーズを観直して研究して、山田康雄さんならどんなアドリブを出すのかな、なんて考えたりもしていたので、それを存分に発揮する時が来たぞと。


武内 僕もPART3までのシリーズを全て観直して、ルパンと次元のアドリブのやり取りをデータ化したんですよ。

――ええっ、それは凄いですね!

武内 それをすることで、いろんなリアクション――例えばものを避ける時、〇〇だったら「うわっ!」で、●●だったら「あららら!」みたいなパターンを導き出して、そこからまた自分たちで考えました。

畠中 「ルパン・次元語録」を作ったよね。

武内 勿論、僕たち役者は台本にあるものを演じるのが第一なんですが……。

畠中 普通の現場とは一味違っていましたね。山田さんと小林(清志)さんのルパンの現場でアドリブをポンポン交わしていたなら、こっちもそのグルーヴ感を持ち込まないと、と思いまして。


武内 アドリブ、すごいんですよ。「しばらく」を「しらばく」とか、手錠をはめられた時に「ワッパ!」ってリアクションしたり。

畠中 アフレコ風景の動画を観たら「そうはイカのタマタマよ」なんて言ってて「それ、良いのか?」って(一同笑)。

武内 まあ、今回配信で良かったのは、そういうコンプライアンスの部分を気にしなくてよかったところですかね。次元は喫煙するし、ルパンは車を運転するし。でも、それがルパンだから。

『LUPIN ZERO』畠中祐&武内駿輔の名コンビが捧げた先人へのリスペクト

――ルパンと次元を演じるに当たって、意識された部分がありましたらお聞かせ下さい。

武内 山田康雄さんと小林清志さんの人生観がキャラクターに込められていると思っていて、まずお二人を知らなければならないというのが共通認識としてありましたね。なので、お二人の生い立ちやお仕事、インタビュー記事などを徹底的に調べましたし、そうしたことで二人が何を大切にして演じていたのかを推測していきました。

畠中 調べると、本当に山田さんはまんまルパンだったんだなって解るんですよ。照れ屋でシャイで寂しがり屋で……繊細で優しい部分を湛えたルパンの器が見えた気がしたので、そこは踏襲したいと思いました。そしてルパンの中に山田さんがあるからこそ、今回のルパンで自分の色が出てくるところもしっかり見せないといけないと思いました。
そうしないと山田さんに怒られるんだろうなって。

武内 うん、結局自分でやらないとダメなんだよね。山田康雄さんや小林清志さんのモノマネで終わったら、それは役者としての取り組みとは違うわけですよ。完コピを狙うのではなく、その言葉を発する手前まで自分を徹底的に追い込んで、結果として同じ解釈(演技)になれば良い、という風に考えました。

原作:モンキー・パンチ (C)TMS

――お話をうかがっていると、お二人の関係から既に「相棒」という雰囲気を感じ取れるのですが、ルパンにちなんでお互いから盗み取りたいものは何かありますか。

武内 何だろうな……僕は自分のことを「声優」と思っているんですが、祐は「役者」だと思うんですよ。根っこの部分がすごく泥臭くて……きっと舞台にお客さんがいなくても、食べることができなくても決して演じることを辞めないと思うんですよ。そういう生き様を盗みたいって思います。
あと歌やダンスも上手いエンタメ力が強いところもリスペクトしていますし、僕自身見習っていかないといけないなと思っています。

畠中 (照れながら)……これ、地獄みたいな質問ですね(笑)。

武内 先日関智一さんの舞台(劇団ヘロヘロQカムパニー第39回公演『立て!マジンガーZ!!』)に二人とも日替わりゲスト出演させていただきまして。今まで舞台のお誘いはお断りしていたんですが、祐を見ているとやっぱりここは挑戦しなきゃいけないんじゃないか、という気持ちにさせられたんです。

畠中 自分で言ってるとおり、彼は声の職業を愛していて、仕事に関する探究心がすごいんですよ。「この人のこういう演技が素晴らしい」といろんな情報を紹介してくれるんですけど、そのどれもが間違いなくて、耳の肥え方も尋常じゃなくて。

さらに驚くのが、そのすごいものを自分のものにしようとするところです。その貪欲さたるや……声の仕事を愛していなければ決してできない努力を積み重ねている姿勢が怖ろしいなって思います。

武内 今回の仕事もそうなんですけれど「先輩の仕事はすごい!」で終わらせたらダメなんですよ。僕ら後輩の仕事っていうのは、先輩を超えていくことだと思うので。特に今回の作品で大事にしたいと思ったのは、下手くそでも全力で山田康雄さんや小林清志さんにぶつかっていくこと。

畠中 そうだね。

武内 お二人にどんな風に言われるかな、なんて想像しながら、自分自身の新たなキャラクターを作っていく――こういう姿勢ってなかなか理解されない気がしていて。
でも、そういう自分のやり方に乗っかってくれる祐の懐の深さ……こういう時に「お兄ちゃんだな」って思いますね、思いっきりタメ口きいちゃってますけど(笑)。

畠中 お互い尊敬できるところがあるからこそ、タッグが組めるんじゃないかと。彼も照れ屋なので一見「何もやってないよー」みたいな振りしていますけど、本当に誰よりも真面目なんですよ。
『LUPIN ZERO』畠中祐&武内駿輔の名コンビが捧げた先人へのリスペクト

――お二人が本当にルパンと次元に見えてきました(笑)。酒向監督の印象はいかがでしたか。

畠中 ルパンが超好きな人なんですよね。

武内 監督が1話のアフレコの時に「(作品の)周りはルパンにしておいたので、あとは自由にしてください」って言ったんですよ。あれは心強かったよね。

畠中 うん、そういう熱量を持って迎えてくれる監督と仕事ができたのが幸せでしたね。

武内 この作品を通して様々な実験を重ねることで、ルパンの世界観をさらに広げていこうと頑張りました。実は、そういう取り組みこそがルパンの精神だと思うんです。劇伴も絶妙なチョイスでしたしね。

畠中 作画と劇伴をしっかり固めていただいたおかげで「こうしてくれ」という縛りはなかったように思います。逆に「ここはそこまでルパンでなくていいです」とか……もう本当に自由にやらせて頂きました。

――酒向監督は本当にお二人のことを「ルパン」「次元」として信用されていたんだと思います。

畠中 ああ……そういうところもあったのかもしれませんね。

武内 僕らの他の出演作を観て「あの演技、良かったですよ」なんて言ってくださって、モチベーションが上がりました。

畠中 そうですね、『LUPIN ZERO』の現場は本当に楽しかったです。

――『LUPIN ZERO』は全6話ということですが、お二人は本作のさらなる展開を期待されていますか。

武内 「6話で終わる美学」っていうのもあるわけですよ。じゃあ高校生編をやるのか、それとも青年編をやるのか……そこは僕らの範疇では決められないですし。ただ、今後も少年ルパン&次元を演じる機会があればいいなとは思います。

畠中 求めてくれた時に、それは叶うんだと思いますね。なので放送を観て「うわ、これの続きがもっと観たい!」と思ってもらえたなら、それを声に出してもらいたい。

武内 ああ、それは言ってほしい!

畠中 今回ルパンたちと出会えたことで僕らは楽しめましたし、機会があればもっともっと彼らと関わりたいと思いますので!
『LUPIN ZERO』畠中祐&武内駿輔の名コンビが捧げた先人へのリスペクト


原作:モンキー・パンチ (C)TMS