映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の大ヒット御礼スタッフトーク上映会が、4月2日に新宿ピカデリーにて開催。プロデューサーの仲寿和と3DCG制作デスクの藤田進夢が登壇し、劇中のCG制作秘話などをたっぷりと披露してくれた。


「ガンダムSEED」シリーズ20年ぶりとなる完全新作劇場アニメ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、全国353館で上映スタート。公開66日間で観客動員250万9428人、興収42億2975万6590円と、1982年公開の『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(23億円)を超えて、数あるガンダムシリーズ劇場公開作品の中でNo.1の興行収入を更新した歴史的作品となっている。

今回のイベントでは”CGアセット編”というテーマで、3DCG制作デスクとしてメカニカルアニメーションディレクターの重田智や、福田己津央監督と2年間にわたって密なコミュニケーションをとってきた藤田と仲プロデューサーのふたりがステージに登場。スクリーンに映し出された資料映像とともにモビルスーツと戦艦のCGモデルの制作工程を詳細に解説してくれることに。

基本的にはメカニカルデザインである大河原邦男の設定画をベースに、モビルスーツの初回モデルを「重田さんだったらこう描くかな」というアレンジを加えながら作成。それに対して重田がプロポーションで1回、アップで見たときのディテールで1回と最低2回の監修を入れ、その修正部分を再現しながら本番モデルを完成させていく。
通常のアニメでは設定に合わせてモデリングするのがスタンダードだが、今作ではTVアニメ当時の映像の印象をフィードバックさせたいということで、「手間は増えるがこうしたスタイルを今回試してみた」と仲プロデューサーは語ってくれた。
中でもライジングフリーダムガンダムとイモータルジャスティスガンダムは最初のすり合わせでだいぶ苦戦したらしく、藤田は「ディスティニーとかは4回作り直しぐらいで終わったんですが、イモータルは20回くらい」と当時のやりとりを振り返ってくれた。

また当初は全5幕構成という本作の前半部分、アークエンジェルが沈む第2幕までに登場する機体だけをモデリングする予定だったが、カットやCGモデルを作っていくうちに「CGさんけっこう出来るじゃん」とスタッフ間での信頼度が上昇。後半に登場するモビルスーツも手掛けることになったそうで、大量追加されたモビルスーツの映像がスクリーンに映し出されると会場からはどよめきが。藤田も「こんだけ後半作ることになるとは(笑)」と苦笑を浮かべていた。

出番が少ないモビルスーツもちゃんとCGモデルが作られている。
例えばアカツキは当初出番が少なく作画の予定だったものの、CGのゼウスシルエットと映像を合わせるのが難しいことが予想されていた。そこで納品数週間前の直前になってディレクターと藤田が相談し、「アカツキ、作りますか」「よし、やっちゃうか」と意気投合。2週間ほどでCGモデルを完成させたといったような、高い士気のもと制作が進んでいったエピソードなどが紹介された。

さらに腕がもげたモビルスーツの壊れバージョンなどもCGで作成。最終的にモデリングした機体は最終的に全49機種60体近くに増加した。この壊れバージョンが活用されているシーンとして、藤田は前半ラストでライジングフリーダムガンダムが壊れていくカットをピックアップ。
コンテに福田監督が「ここらへん壊したい」と書かれた指示を基に作られたCGモデルを参考に作画作業が行なわれるなど、本作では3D先行で壊したものを作画するという通常と違うアプローチにチャレンジしてみたと仲プロデューサーは語ってくれた。

続いての戦艦のCGモデルの制作工程についてはアークエンジェルを例に解説。本作に合わせて各艦艇のディテールについては新規に起こし直したそうで、まずTVアニメのディテール感を基にしながらラフを作り、そこに新ディテールを反映させ、さらにCGで質感を付けディレクターらが調整。ディテールが細かいため、線をそのまま出すと黒く潰れて絵にならないため、「これは薄いラインにしよう」とか「はっきりアウトライン出そう」といったように線を取捨選択しながら最終的なルックに近付けていったという。

制作期間はアークエンジェルは約1年、物語後半に活躍する新造戦艦ミレニアムは1年8ヶ月。ミレニアムはCGモデルを作り終えたところで、コンテ作業中の福田監督から「槍出したいんだよね」とか「ここらへんからデッカい主砲出すんだよね」といった追加の要望が次々に到着。
藤田はそのムチャ振りに驚きながらも「ここまで来たらお祭りですよね」と言いながらも頑張って作業をしたとのこと。またアークエンジェルについてもTVシリーズ当時のCGモデルを再利用するつもりが、福田監督から「1から作ってくれるでしょ?」と言われて、「(CGモデル)あるのにな」と思いながらゼロからCGモデルを作っていったいう、福田監督絡みの苦労話を次々に披露してくれた。

各勢力の宇宙艦艇についても全て3Dモデルで制作されたそうで、本編全2300カットのうち15カット程度しか登場しない戦艦などについても全艦CGモデルを作成。クサナギは20カット、エターナルに至っては3カットのみしか登場シーンがなく、「発進用のカタパルトも作ったものの見ることなかったです」と残念そうに言う藤田に会場は大爆笑となっていた。ちなみにモビルスーツと戦艦を担当したスタッフは、外注を除くとディレクター含めて5人だけの精鋭チームで構成。藤田も仲プロデューサーも「その5人の方々がいなければ(作業は)終わらなかった」と口を揃えるほどの活躍だったとのことで、ふたりからはCGスタッフに感謝の言葉が述べられていた。


トーク後半戦にはモデリング作業時の裏話が次々に明かされていくことに。コズミックイラのモビルスーツの表現について、福田監督から「キャラクターが(特撮)スーツを着て動いてるような、すごく有機的な感じにしてほしい」という話が何度もあったらしく、藤田はそれを目指してCGモデルを作っていったとのこと。そんな福田監督からストライクフリーダムガンダム弐式について、「白馬の騎士みたいな感じで。イケメンは細いから下半身は太くしちゃダメだよ」とのアドバイスがあったことが明らかになると会場からは笑い声が上がっていた。

さらに登場予定だったのにボツになった機体も明らかに。グフイグナイテッドはCGモデルを途中まで作っていたものの「グフは登場しない」と言われてあえなくボツに。
デスティニーインパルスは発注リストにあり、藤田も「格好いい! ついにか!」と意気込んだものの、「ディスティニーと被るし、インパルスでいろんな武器使って戦ってた方が差が出る」といった福田監督の考えもあり、フォースインパルスガンダムSpecⅡに変更されてしまったことが明かされた。
さらにM1アストレイも登場予定がありCGモデルを作ったものの、本土防衛の描写がないことから「アストレイは出さない」と言われて作業を中断。しかし本編カットに出ていることが後から判明し、作画さんにお願いすることになったといったぶっちゃけトークが連発。このイベントだけの貴重な話の数々に観客たちは興味津々といったようすで聞き入っていた。

スタッフトーク上映会は今回の”CGアセット編”に続いて、第2弾となる”アニメーション編”が4月9日に予定されている。「もっとスピード感があったものを福田監督からリアルな感じで重めにしてほしいということで全修正が入った」という冒頭のライジングフリーダムガンダムが初めて変形するシーンの没動画など、より詳細な制作秘話が語られることになるとのことなので、ぜひ会場に足を運んでみてほしい。

(C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

絶賛公開中
配給:バンダイナムコフィルムワークス、松竹

<イントロダクション>
.E.75、戦いはまだ続いていた。
デュランダル議長の死により、デスティニープランは消滅したが、同時に大戦終結後の世界を安定させる指標は失われた。
各地で独立運動が起こり、ブルーコスモスによる侵攻はくり返され、人々はさらなる戦乱と不安の最中にあった。
事態を沈静化するべく、ラクスを初代総裁とする世界平和監視機構・コンパスが創設され、キラたちはその一員として、各地の戦闘に介入する。
そんな折、ユーラシア連邦からの独立を果たした国・ファウンデーション王国から要請があった。
ブルーコスモス本拠地へのコンパス出動を求めるものだ。
要請を受け、キラたちはラクスを伴い、ファウンデーシ
【ガンダムSEED FREEDOM】CG班が明かす秘話!MSの苦労とこだわり!
ン王国へ向かう。

<CAST>
キラ・ヤマト:保志総一朗 / ラクス・クライン:田中理恵
アスラン・ザラ:石田 彰 / カガリ・ユラ・アスハ:森なな子 / シン・アスカ:鈴村健一 / ルナマリア・ホーク:坂本真綾 / メイリン・ホーク:折笠富美子
マリュー・ラミアス:三石琴乃 / ムウ・ラ・フラガ:子安武人
イザーク・ジュール:関 智一 / ディアッカ・エルスマン:笹沼 晃 /
アグネス・ギーベンラート:桑島法子 / トーヤ・マシマ:佐倉綾音
アレクセイ・コノエ:大塚芳忠 / アルバート・ハインライン:福山 潤 /
ヒルダ・ハーケン:根谷美智子 / ヘルベルト・フォン・ラインハルト:楠 大典 / マーズ・シメオン:諏訪部順一
アウラ・マハ・ハイバル:田村ゆかり / オルフェ・ラム・タオ:下野 紘 / シュラ・サーペンタイン:中村悠一 /イングリット・トラドール:上坂すみれ
リデラード・トラドール:福圓美里 / ダニエル・ハルパー:松岡禎丞 / リュー・シェンチアン:利根健太朗 / グリフィン・アルバレスト:森崎ウィン /
ギルバート・デュランダル:池田秀一

<スタッフ>
企画・制作:サンライズ
原作:矢立肇、富野由悠季
監督:福田己津央
脚本:両澤千晶、後藤リウ、福田己津央
キャラクターデザイン:平井久司
メカニカルデザイン:大河原邦男、山根公利、宮武一貴、阿久津潤一、新谷学、禅芝、射尾卓弥、大河広行
メカニカルアニメーションディレクター:重田 智
色彩設計:長尾朱美
美術監督:池田繁美、丸山由紀子
CGディレクター:佐藤光裕、櫛田健介、藤江智洋
モニターワークス:田村あず紗、影山慈郎
撮影監督:葛山剛士、豊岡茂紀
編集:野尻由紀子
音響監督:藤野貞義
音楽:佐橋俊彦
主題歌:西川貴教 with t.komuro 「FREEDOM」/エンディングテーマ:See-Saw「去り際のロマンティクス」
製作:バンダイナムコフィルムワークス  
配給:バンダイナムコフィルムワークス、松竹

>>>『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』公式サイト

>>>『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』公式X(旧Twitter)

(C)創通・サンライズ