「ガンダムSEED」シリーズ20年ぶりとなる完全新作劇場アニメ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、全国353館で上映スタート。公開73日間で観客動員256万4398人、興収43億2096万10円を記録するなど、1982年公開の『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(23億円)を超えて、数あるガンダムシリーズ劇場公開作品の中でNo.1の興行収入を更新した歴史的作品となっている。
今回のイベントではモビルスーツと戦艦のCGモデルやエフェクトなどを徹底解説した”CGアセット編”に続いて、”CGアニメーション編”をテーマにトークを展開。3DCG制作デスクとしてメカニカルアニメーションディレクターの重田智や、福田己津央監督と2年間にわたって密なコミュニケーションをとってきた藤田と仲プロデューサーのふたりが、本作におけるCGアニメーションの制作工程を当時の思い出を交えながら繰り広げていくことに。
まずはCGカットの制作工程のワークフローについての説明からスタート。絵コンテ→演出&CG会議→絵コンテからCGムービー作成→福田監督チェック→調整・再作成→重田さんチェック→調整or再作成→仕上げ作業・撮影納品→撮影処理後ラッシュチェック→再修正→再撮という工程で完成という進行スケジュールでCGカットを制作。
これらの工程の中で大変だったと藤田が語ったのは、福田監督とカニカルアニメーションディレクターの重田によるチェック。福田監督からはほぼ毎回「実はこういう感じなんだよね。こう出来るかな?」と修正指示が入ったそうで、藤田はそのたびに監督の言葉のニュアンスなどを拾いながら「調整という名の作り直し(笑)」を行っていたと、当時の苦労を思い出しつつ苦笑交じりに解説してくれた。
続いての重田によるチェックでも「監督はなんて言ってたの?」「それを基にこういう風に出来るかな?」と修正が入り、ここでも再び作り直しが発生したとのこと。特に物語などの見せ場など表現を追求するカットではCG映像をコマごとに紙で印刷、それを重田が持ち帰って図解などを交えながら直筆で修正、それを基にCGで再作成をするといった作業を繰り返して映像をブラッシュアップしていったそうだ。
こうした極めて手間のかかる作業工程をあえて選んだことについて藤田は、「福田監督や重田さんたちによる”見映え”をファンに届ける映像に反映したかった」とコメント。TVシリーズで福田監督や重田が表現していた絵作りを「CGだから無理」とは言いたくなかったそうで、「それを考えると手間は増えちゃいますがこうした手法をとった方が絶対いいものになると思って」と、CGクリエイターとしてのプライドを賭けて制作に携わっていたことを明かしてくれた。
また本作の制作に関わったCG協力会社の紹介も行われ、スクリーンには各社のロゴがズラリ勢揃い。藤田が「アニメのCG会社の有名どころは軒並みお願いした」と語るように、『ラブライブ!』で知られる「サブリメイション」や、新海誠の各作品を手掛ける「コミックス・ウェーブ・フィルム」、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』で美麗なCG映像を制作した「グラフィニカ」など錚々たるCGスタジオが協力してくれたそうで、素晴らしい映像に仕上げてくれた各社の対して感謝の言葉を口にしていた。
ここからは前回のスタッフトーク第1弾で予告されていた、お蔵入りとなった劇中冒頭のライジングフリーダムガンダムの発進&変形シーンを公開。
そんな幻となったライジングフリーダムの変形シーンと参考にしたZガンダムの変形シーン、さらに実際に劇中で使われた完成映像が順番にスクリーンに映し出されると会場からはどよめきが。ゆっくりと変形させることで「出撃したライジングフリーダムがどういった機体なのかをちゃんと見せて印象付けたい」という福田監督の意向も踏まえて修正していったとのことだが、「監督が『トップガン マーヴェリック』をそのタイミングで見てて『やっぱCGってこうだよね!』と言っていたこともあって、頑張りましょうとなりました(笑)」と藤田がぶっちゃけると客席からは笑い声が。
結局完成に至るまでこの僅か数秒のシーンを13回ほど作り直したとのこと。「多分ここでしかこの動画は見れません」と仲プロデューサーが断言する貴重な映像を堪能した観客たちから、福田監督の演出意図を汲み取って映像に反映させる重田の技術、さらに多大な苦労を積み重ねながら映像を仕上げたCGスタッフ陣の努力に対して大きな拍手が送られていた。
他にもこだわりのカットとしてシーンに合わせた専用色を作ってもらい、作画と同じようにパーツ毎に色を変更させてゾンビのような雰囲気を意識して作ったというオルドリンの防衛隊がカナジへ侵攻し始めるシーンや、若手スタッフが直訴して初のアニメーションを手掛けたというデスティニーガンダムSpecIIの出撃&戦闘シーンなどをピックアップ。また新規にモデリングして作り込んだものの1カットしか使われなかったというというプラントのコロニーや、同じく1カットだけ登場したクサナギの同型艦であるイズモ級をはじめ、「ジェルが展開されてクリスタルになる」と書かれた福田監督のコンテを基に宇宙空間の冷却で凍ったというイメージで映像化したミレニアムの耐熱耐衝撃装甲や、TVシリーズで一回だけ映った映像の表現をさらに磨き上げたというラミネート装甲廃熱シーンなどディープなファンにはたまらない注目ポイントを詳細解説。藤田は「他にもいろんなところにいろんなネタを仕込んでいますので、ぜひBlu-rayが出たらよく見てください」と客席に向けてアピールをしていた。
観客との質疑応答のコーナーでは、現場でのジェネレーションギャップについての質問が。
ただ古い例えだけでなくマンガ、なろう系の異世界転生ものといった最新のトレンドも福田監督はしっかり押さえていたそうで、藤田がブラックナイトスコードルドラのビームマントのイメージを聞いたときには「トウカイテイオー」との回答が。「そういう作品が昔あったんですか?」と聞き返すと「違う違う、ウマ娘」と言われ、「え? 監督『ウマ娘』やってるんですか?!」と驚きの声をあげたといったような面白エピソードも飛び出すなど、制作スタッフならではといえるトークの数々に観客たちは大喜びとなっていた。
今回開催されたスタッフトーク上映会が好評だったこともあって、4月18日(木)には福田監督が登壇しての大ヒット御礼ティーチイン上映会、4月23日(火)には福田監督とメカニカルアニメーションディレクター・重田智によるスタッフトーク上映会第3弾の実施が決定。今回同様にこのイベントだけでしか聞けない内容が盛りだくさんとなっているので、ぜひ会場に足を運んでもらいたい。
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