名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家の当主シエルと、彼に仕える執事セバスチャンが学園の謎に迫る、アニメシリーズ最新作『黒執事 -寄宿学校編-』が2024年4月より放送がスタートした。
本作の主な舞台は、名門寄宿学校・ウェストン校。
校内に存在する4つの寮をそれぞれ統べる監督生たち・通称「P4(プリーフェクト・フォー)」がストーリーの大きな鍵を握ることに。
「P4」キャスト――エドガー・レドモンド/渡部俊樹さん、ロレンス・ブルーアー/ 榎木淳弥さん、ハーマン・グリーンヒル/武内駿輔さん、グレゴリー・バイオレット/橘 龍丸さんに、本作の印象や収録現場の様子について伺った。

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――まずは『黒執事 -寄宿学校編-』のストーリーの印象からお聞きしたいです。

武内 これまでの『黒執事』シリーズとは違う雰囲気を感じましたね。物語の舞台となるのはシリーズ初となる寄宿学校。その設定がまず新鮮でした。


橘 作中で起こる事件も、引き起こすのは学生たちなんですよね。そのせいか、今までよりもキャッチーで身近に感じやすい物語になっています。加えて、そこに潜り込むシエルとセバスチャンの新たな一面を垣間見られたように思います。

榎木 舞台が閉鎖空間になっているのも『寄宿学校編』の面白さですよね。その中で失踪した生徒を追うシエルたちの姿は、見ていて魅了されるものがありました。

渡部 学園にある寮が各々に個性を持っており、個別のカラーを持っているのも良かったですね。
”推し寮” を考えていく楽しさも本作にあると思いました。

――物語の舞台となる寄宿学校には、どんなイメージを抱いていましたか。

武内 僕自身、イギリスの文化がすごく好きで、寄宿学校が舞台となる映画も多く観ていたんですよ。その中で感じたのは、生徒たちが学校に対しプライドを持っているということ。「P4」の一員を演じるにあたり、その誇りは表現したいと考えていました。

榎木 国のエリートを輩出する場所というイメージが最初に浮かびました。
そこに集まる人たちは皆、学校の伝統を重んじていると想像できました。僕は「学校の伝統は破るためにある」みたいな価値観で生きてきたので、その意識を変えて演じる必要があると思いましたね。

橘 上品な人が集まる場所、というイメージはありました。ただ、今作の舞台であるウェストン校は寮によって空気感が違う。特に僕が演じるバイオレットが監督生を務める ”紫黒の狼(ヴァイオレット・ウルフ)” には、品行方正とは言い難い生徒も見受けられます。

渡部 ”深紅の狐(スカーレット・フォックス)” は4つの寮の中でも最も高貴な生徒が集まる場所。
その監督生であるエドガーを演じるにあたり、彼の高貴さをいかに表現するかは悩まされましたね。
ある程度自信を誇示する必要がありますが、それが行き過ぎると下品になってしまうので、良いバランスを探る必要がありました。

――ご自身と演じるキャラクターの間に通じる部分などはありましたか。

渡部 エドガーのナルシストな部分は僕と似ている気がしました。あと僕自身も赤色と薔薇モチーフが好きで、アクセサリーも多く持っているので、服装のセンスは似ているんじゃないかと(笑)。

武内 僕とグリーンヒルの共通点は、太眉毛と脳筋ですね(笑)。
あと、男の友情に敏感なところは共通しているように思いました。

榎木 僕が演じるブルーアーは、しっかりしていそうで油断した顔を見せるところもあるんですよ。そこは僕と似ていると思いますね。僕自身抜けている部分があり、忘れ物や電車の乗り間違いも多いので共感する部分も大きかったです。

橘 僕はバイオレットのように絵は描けないのですが……ただ、幼少期は引っ込み事案であまり喋らない、友達もいないタイプだったので、潜在的な部分に似たところがあるかもしれません。

――演じるにあたって何かディレクションはありましたか?

榎木 4人それぞれに「個性を強めに演じてください」と言われた気がします。


渡部 そうでしたね。僕も「ナルシスト感を強めに出してほしい」というディレクションを受けました。

橘 僕は逆に「もっと抜いて芝居してほしい」と言われていました。声もできるだけ抑えてほしいと。かなり大変だった上、演じていてやりきった感もなかった……。

武内 そんな橘さんの演技は、見ていて感動する部分が大きかったです。声量を落とすと何を言っているのかが分からなくなるリスクがあるので、実行するのは勇気がいるんです。でも、今作の橘さんはギリギリまで声量を落とし、時にはセリフが聞き取れないところまであるのに ”何が言いたいか、わからない” というシーンはひとつもなかった。意志の込め方がお上手だと思いました。

(C)Yana Toboso/SQUARE ENIX,Project Black Butler

――「P4」として4人でセリフを揃えるシーンもありましたが、収録の際には苦労もあったのでは?

武内 全然タイミングが揃わなくて大変でした。色々と試したけど最後まで方法論が確立できないままでしたね(苦笑)。

橘 各々演じるキャラクターの個性が強すぎたからね。高らかに喋るエドガーみたいなキャラもいれば、ボソボソ喋るバイオレットみたいなキャラもいる。各々に役を演じながら、同時にタイミングまで合わせるのは本当に難しかった。

武内 僕ら4人の仲が良すぎたのもいけなかったと思うんですよ。そのせいでお互いに譲り合ってしまい、結果的に揃わなくなった。誰かが剛腕で引っ張って、他の人がそれに追随する形だったらもっと上手くいったかも。

榎木 譲り合いが原因で上手くいかなかったのは確実にありましたね。この4人は世代も近かったこともあり、常にワキャワキャしていましたから。

――演じていく中で見えてきたキャラクターの一面はありましたか?

橘 バイオレットは最初人間嫌いのキャラクターだと思っていたんですが、演じていくうちにそうでもないことに気付かされました。彼は気楽に接せる人間を限定しているだけで、身近に寄ると温かい一面を見せてくれるんですよね。それが分かってからは、演じ方にも遊びが作れるようになったと思います。

榎木 ブルーアーは最初もっと硬い人間だと思っていましたが、物語が進むにつれて徐々に愛嬌が見えてきました。途中家族との交流も描かれるのですが、そこでは温かい一面も覗かせてくれて、それを見ながら思っていたよりも普通の青年なんだと理解しました。

武内 「P4」のみんなは初登場時、監督生ということもあり特別な存在に見えたのですが、徐々に普通の青年っぽさを感じられるようになりました。本当は等身大の青年で、むしろ監督生の姿こそが背伸びしたものだ、ということが徐々にわかってきます。

渡部 エドガーにもその一面を強く感じましたね。クリケット大会の際に親族と話している時の彼は、どこにでもいる普通の青年なんですよね。高貴な面は、あくまで彼の演じている姿だと思いました。

――映像で観るのが楽しみなシーンはありますか。

渡部 僕はお茶会のシーンが楽しみですね。そこは原作の雰囲気も素敵だったので、映像になった時どう演出されるかに注目したいです。

武内 作中に「P4しか立ち入れない芝生」が登場しますが、アニメでどのように描かれているのか、楽しみにしています。加えて、教室内の閉鎖感と屋外の開放感をどう描き分けているかも気になります。

橘 クリケットのシーンが楽しみですね。全体を通してシリアスな本作ですが、あそこだけ飛び抜けてコミカルな印象に変わる。そのメリハリを映像でどう表現されるか気になりますから。

榎木 僕は4人の初登場シーンです。原作でもインパクトのあるシーンで、本作が持つ独特の空気感を感じられる部分だと思っていますので、それをどう映像にするのか注目したいです。

――小野大輔さんと坂本真綾さんの演技はいかがでしたか?

渡部 これまでの放送で拝見してきたお二人の掛け合いを、今回生で見られたのは純粋に嬉しかったです。と同時に、その演技が時を経てさらに進化していることに感激しました。

橘 シエルとセバスチャンは内心、お互いを信頼しあっているじゃないですか。それがお二人の演技から感じられたのもすごく印象的でしたね。

武内 他現場でも度々ご一緒しているにも関わらず、今作での小野さんと坂本さんはこれまでにない表情を見せてくださいました。特に坂本さんは普段と大きく違っていて、普段は凛とした印象なのですが、今作では全霊を込めて攻めた演技をしていたように感じました。

榎木 武内くんの話した印象は僕も感じられました。坂本さんはこれまで長くシエルを演じているので、リラックスして現場に臨んでいると思っていたんですよ。なのに現場でお会いした坂本さんは、普段見られない緊張感をまとっていました。本シリーズがここまでやってこられた要因の一つは、そんな坂本さんの姿勢にあるんじゃないかと思いました。

武内 とはいえ、他人に対して厳しい感じでもないんです。収録現場自体はすごく朗らかなのですが、坂本さんは自分自身と必死に向き合われている感じでした。

――では最後に、ご自身がもしウェストン校の寮に入るとしたら、どこを選びますか。

渡部 やっぱり「深紅の狐(スカーレット・フォックス)」ですね! どうせ入学するなら赤を基調としたあの制服を身につけたい!

榎木 僕は「翡翠の獅子(グリーン・ライオン)」かな。高貴な身分ではないし勉強も苦手で、一芸に秀でている自信もないし……。

武内 やはり僕も「翡翠の獅子」。演技力を評価してくれるなら「紫黒の狼(ヴァイオレット・ウルフ)」もアリかもしれないけれど。

橘 僕も同じく「翡翠の獅子」です。健康的な生活が送れそうですよね。「深紅の狐」は疲れそうなので、ちょっと……。

渡部 寂しい! みんな「深紅の狐」に来てよ!

一同 (笑)。

(C)Yana Toboso/SQUARE ENIX,Project Black Butler