リリースが間近に迫った、『仮面ライダー』をテーマにしたアプリゲーム『ライドカメンズ』。世界観構築・メインシナリオは『仮面ライダーエグゼイド』『仮面ライダーゼロワン』の脚本を手がけた高橋悠也さん、世界観監修・プロデュースは『仮面ライダーオーズ/OOO』『仮面ライダー鎧武/ガイム』などでプロデューサーを務めた武部直美さんが担当する。


『仮面ライダーギーツ』でもタッグを組んだ、『仮面ライダー』シリーズ作品に多く携わる高橋さんと武部さんによるゲームの『仮面ライダー』は、いったいどんな物語になるのだろうか。お二人にゲームならではのチャレンジ、今後の展望ならぬ”野望”について語っていただいた。

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◆一年で終わらない『仮面ライダー』という挑戦◆

――『ライドカメンズ』で、特撮ドラマ『仮面ライダー』シリーズとは別の形で作品が生まれたと思いますが、今作をどういったチャレンジと捉えていますか?

武部 特撮ドラマの『仮面ライダー』は多人数ライダーも、敵ライダーも、女性ライダーも、ありとあらゆることをやってきた感覚があるんですよね。今作は特撮ファンとは違う層もターゲットとして見据えているので、全く違ったことができるんじゃないかと思っています。それに、ゲームはテレビと違って放送期間が一年と決まっていない、一年経つと全く別の新しい作品が始まるわけではないことも特徴で。一年で終わらない物語、一年で入れ替わらない『仮面ライダー』はどんなふうになるんだろう、という好奇心もありますね。


高橋 いろいろなエピソードを描く、多角的な土壌を用意するために、仮面ライダーを最初から16人登場させたところもあります。戦う理由の差別化を含めて、全員が主人公でもおかしくないキャラクターになっていると思います。

――世界観の構築やシナリオづくりで、大切にしたポイントは?

高橋 同族同士の戦いや親殺しみたいな、『仮面ライダー』の定義を外さないように作ること、初めて『仮面ライダー』に触れた方に楽しんでもらえるものにすることです。特撮ドラマのほうは『仮面ライダー』ありきで、毎年モチーフが変化していくじゃないですか。今作はそれ以前に「『仮面ライダー』ってなんだろう」という部分を楽しんでもらう。”仮面” をテーマに、なぜ仮面をかぶって戦うのかを描くことが新たな挑戦、今回開拓したところなのかなと。
今作は特撮よりも少し大人向けに、人間ドラマに焦点を当てていて、仮面と言いつつ変身後も顔が見えるんですよね。だからこそ、キャラクターがどんな表情で戦っているのかなど、喜怒哀楽の感情の機微みたいなものをフィーチャーしていきたいと考えています。

――キャラクターデザイン原案は内海紘子さんが担当し、キャストも非常に豪華な布陣となっています。

武部 キャスティングやキャラクターデザインなどのキャラクター造形は、バンダイさんのほうで進めてもらったんですが、悠也さんが書かれた人物像をもとに作り上げた部分も大きいと思います。声優さんに関しては、佐藤拓也さんは『仮面ライダー』シリーズも元々お好きですし、実写っぽいお芝居が上手なので、とても良かったですね。

――アクション・ポーズ制作協力で、平成仮面ライダーほぼ全ての作品で主役を演じた、スーツアクターの高岩成二さんが参加していることも注目のポイントです。


武部 高岩さんもバンダイさんから名前が挙がったんです。『仮面ライダージオウ』で平成仮面ライダーが一区切りしたタイミングだったので、興味を持っていただけるのではないかと思いました。快く引き受けていただき、指輪(カオスリング)の指への装着方法から、変身ベルト(カオスドライバー)へのかざし方など、キャラクターの個性に応じた多種多様なバリエーションを考えていただきました。ポーズ考案作業の時に、さまざまな方向から高岩さんを撮影していたことも印象的です(笑)。

――今作に携わって感じた、ゲームならではの面白さや難しさはありますか?

武部 物語にプレイヤーの視点がある、というのが面白いなと思いました。画面の外で観ているだけのテレビや映画だと、物語の中に入り込むというのはなかなかできないことなので。
仮面ライダーの戦いだけでなく日常が描ける、その日常を共にできることも、ゲームならではの画期的な側面ですね。逆にテレビでは主人公が目立つとか、誰がヒロインと仲が良いみたいなことができるんですが、今作は16人をみんな均等に見せることには苦労しました。

高橋 主人公のエージェントと、プレイヤーの心情を乖離しないように描くのは大変ですね。仮面ライダーたちは主義主張を言えるんですが、主人公を操作するのはプレイヤーの皆さんじゃないですか。劇中の出来事に対して怒りを覚える人もいれば同情する人もいる中、主人公はある一定の共感を得なければいけない。そのバランスを取るのが非常に難しいです。


武部 そうですよね。「自分はこう言わない」と思われたら良くないですし。

高橋 ドラマ上ではどうしても、考えをズバッと言わせたくなるんですよね、主人公として。そこをプレイヤーが自分と近い選択肢を選ぶことで、昇華させていく。そのことは意識してシナリオを書いています。

武部 選択肢によってセリフが変わる部分もあるので、そういったところがプレイしてみて楽しいところになるんじゃないかなと。


(C)石森プロ・東映 (C) BANDAI

◆エージェントは『仮面ライダーギーツ』のサポーター?◆

――『ライドカメンズ』はお二人が参加した『仮面ライダーギーツ』より前に企画が立ち上がっていたとのことですが、今作の経験で『ギーツ』に、『ギーツ』の経験で今作に活きたことはありますか?

高橋 あまり双方向での影響は考えずにやっていたんですが、結果的に作用し合ったところを挙げるとしたら、『ギーツ』の「サポーター」ですね。『ギーツ』は「デザイアグランプリ」というリアリティーショーが登場し、そこで仮面ライダーを応援する「サポーター」が中盤から出てきたんです。ある種メタ的な、あたかも視聴者と同じ立ち位置にいるキャラクターを描いてきたんですが、それって今作におけるエージェントかなという気がしないでもなく。『仮面ライダー』というコンテンツが何十年と続き、人々の中で仮面ライダーを応援することが身近になったからこそ、楽しみ方の幅が広がっていったのだと感じました。

武部 私の中では悠也さんへの信頼度が上がりましたね(笑)。テレビだといろいろと制約みたいなものが少なからずあるんです。でも、今回は制約がないと言えばないし、テキスト量も膨大で。『ギーツ』よりも悠也さんにお任せするところも多いですし、より悠也さんの魅力が凝縮されて出ている気がします。

――今作は高橋さんの味が強く表れた作品になっていると。

武部 そうだと思います。

高橋 あくまでメインシナリオの話ですけどね。今回はいろいろなライターに携わってもらっていて、キャラクターの解釈がバラバラにならないように監修して取りまとめたり、設定を緻密に作ったりもしているんです。ライターによってキャラクターの表情の変化というか、僕だけじゃ書けなかったようなこともあって、幅広く楽しんでもらえるんじゃないかと思っています。

――最後にアプリゲームのリリースを控えたタイミングですが、今後の展望を伺えればと思います。

武部 ゲームとして成り立つかどうかはともかく、いろいろなライダーを出して増やしていけたら面白いなって。どんどん話が広がっていって、100人くらいになったらいいなと思っています(笑)。

高橋 この作品も一つのオリジナル作品ではあるので、いずれは実写化してニチアサに持ち込む……というのは冗談ですが(笑)。アニメだったり舞台だったり、いろいろメディアミックスできるんじゃないかと。ゲームでは武部さんがお話した通り、キャラクターをどんどん追加登場させていきたいですね。

武部 そうですね。『仮面ライダー』では一年間という期間が区切られていない作品は珍しいので、長く愛されていくと嬉しいです。キャラクター単位でも、この先できることがたくさんあるはずなので。

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