ヘッドフォンを付けたハムスターがユーモラスに動く『ブルーハムハム』などのキャラクターを始め、映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』の企画・制作、サントリー天然水スパークリングレモンのウェブCM「スパークリングパーク」、『SPY×FAMILY展』の展示企画など、アイデア満載で ”たのしみなコンテンツ” をつくり続ける、「CHOCOLATE Inc.」が手がけるオリジナルアニメーション『パンの赤ちゃん』が、12月にYouTubeおよびXにて公開。
監督は、本作が初監督作品となる市川晴華が務めるほか、キャストには花澤香菜や小倉唯などの人気声優だけでなく、田辺智加(ぼる塾)、こやまたくや(ヤバイTシャツ屋さん)、山田孝之、コウメ太夫といった豪華なメンバーが集結。

深夜のパン屋さん、モチモチでかわいらしいパンの赤ちゃんたちは、どのようにして泥棒を退治するのか。本作の魅力を花澤香菜が語る。

>>>『パンの赤ちゃん』場面カットを見る(写真8点)

◆最高の「ミ!」を出したい◆

――かわいいパンの赤ちゃんたちを主人公にした作品『パンの赤ちゃん』への出演が、決まった時のお気持ちを教えてください。

花澤 パンの役は初めてなので、本当に嬉しかったです。最近は人間ではない役をやる機会が増え、サメとかネコとかやっているのですが、まさかパンまで来たかと思って(笑)。それも赤ちゃんということで、とてもかわいいのだろうなと想像してワクワクしました。ただ喜んだはいいものの、どういう役作りをすればいいのか、台本を読むまでは「どうなるんだろう?」という感じでした。

――台本には、どういうセリフが書かれていたのですか?

花澤 「ミ」とか「リ」といったカタカナが一文字書かれていて、カッコでどういう感情なのかが書かれているといったものでした。他のパンもみんなそういうセリフで、パン屋さんの店主と泥棒も出て来ますが、人間もはっきりとしたセリフが無いんです。

――それだけ映像のみでも内容が分かって、楽しめる作品ということですね。

花澤 はい。動きがダイナミックであったり、パンの赤ちゃんたちがとにかくかわいくて、映像だけでもすごく楽しんでもらえると思います。
私が演じさせていただいたのは「クリームパンの赤ちゃん1」という主人公で、お店に泥棒が入ってピンチに陥るのですが、勇敢で正義感の強い性格で、自分で考えて一歩を踏み出して行動を起こします。悪者をやっつけるというシンプルなストーリーは、小さいお子さんが観ても楽しめますし、最後に待ち受けている展開含めて、大人が観ても楽しめる作品になっています。

――「クリームパンの赤ちゃん1」など、実際にキャラクターの絵を観た印象を教えてください。

花澤 ふっくらとしていて、モチモチな感じがすごくかわいくて。映像で観ると立体感がすごくあって、店主が愛情を込めて作ったことが伝わる、フォルムとかわいらしさがあるなと思います。クリームパンの赤ちゃんは1から4までいるのですが、同じクリームパンの赤ちゃんでも見た目や性格が少しずつ違って、その違いを「ミ」と「リ」のセリフで表現しなければいけないので、きっと私以外のキャストの皆さんもご苦労されたと思います。収録はバラバラで、大空直美さんが声を担当した「クリームパンの赤ちゃん4」は、「すこし間抜けで、不運なところがある」という性格で、いつもメソメソして天然な感じなのですが、それが大空さんの声で見事に表現されていて「すごい!」と思いました。

――声優以外にも豪華なキャスト陣が参加されています。

花澤 「ドーナツの赤ちゃん」役の田辺さんとは、お仕事で対談をさせていただいたご縁で交流があるのですが、「いつかアニメで共演できたらいいね」と話していて、それがこんなにも早く叶って嬉しいです。個人的には、「猫」役のコウメ太夫さんが気になりますね(笑)。猫の絵がコウメさんそっくりで、コウメさんをイメージして作ったとしか思えないです。

――花澤さんが担当した「クリームパンの赤ちゃん1」は、市川晴華監督からはどんなディレクションがあったか、役作りやアフレコについて教えてください。


花澤 きっと監督の中でのクリームパンの赤ちゃん1~4のキャラ分けもあったでしょうし、クリームパンの赤ちゃん1は「友だち思いで勇敢」という性格もあったので、性別は無いけれど中性的な感じと言うか、私が思っていたよりも低く太めの声で役作りをしました。アフレコは「自由にやってください」と言っていただく場合も多いのですが、今作は監督の中で「このセリフはこう」とイメージがとてもハッキリあったので、そこに摺り合わせて行く作業が多かったのですが、監督が求める最高の「ミ!」を出したいと思って逆に燃えました(笑)。例えば「イテッ!」というセリフがあって、思わず人間っぽく言ってしまったら、監督から「動物の鳴き声のように言ってほしい」と言われました。感情は「痛い」けど、聞こえ方としては「痛い」と言っているように聞こえないようにしてほしいと。監督からのディレクションはとてもやりやすく、アゲアゲのテンションで「それめっちゃかわいかったです!」と、言っていただいた時は嬉しかったです。

――クリームパンの赤ちゃんという役は、意外と言うとアレですけど、とても複雑で考え抜かれて役作りが行われていたのですね。

花澤 考えなきゃいけないし、反射神経も必要でした。お話自体もテンポ良く進んで行くし、クリームパンの赤ちゃん1はパンの中でも結構しゃべる方なんです。だからアフレコも、普通にアニメーションを観ながら声を当てるところもあったのですが、そのシーンに一球入魂できるようにと、敢えて映像を観ないで録る時もありました。

(C)CHOCOLATE

◆パンが食べたくなってもらえたら最高◆

――クリームパンの赤ちゃん1の、お気に入りのシーンはありますか?

花澤 クリームパンの赤ちゃんが、泥棒にどうやって反撃するか考えるシーンです。顔がどアップになるんですけど、ボ~っと考える描写がすごく好きで、そこだけずっと観ていたいくらいかわいいです。声もボ~ッとした感じの声を当てているので、そこも含めて楽しんでほしいです。


――市川監督がとあるインタビューで、『不思議の国のアリス』に出てくるヤングオイスターのお話を例に挙げ、自分たちが食べられてしまうことに気づかずワクワクする、牡蠣の赤ちゃんたちの「無自覚」さにキュンとすると答えていたのですが、花澤さんは「パンの赤ちゃん」のかわいさについてどんな考えですか?

花澤 「無自覚」ということを聞いて、「なるほど!」と思いました。パン屋さんに行くと、実際にパンたちが無自覚に私を刺激して来ます。「食べて!」って(笑)。

――花澤さんご自身、どういうものにかわいさや魅力を感じますか?

花澤 いろんな瞬間に「かわいいな」と思ってしまう方で、それこそパンを見ると無条件でかわいいって思うし、どんなに歯が折れそうなほど堅いパンをかじっている瞬間でも、「こいつめ~」って思いながら嬉しくなります。逆にあまりかわいいことをアピールされると引いちゃうところがあるので、そういう意味では市川監督がおっしゃったと言う「無自覚」にはとても共感します。かわいさとは、見た目だけではなく、シチュエーションや表情、リアクションによって感じることもあります。

――では、花澤さんが考えるパン屋さんの魅力は?

花澤 パン屋さんは一軒ごとのストーリーを感じます。本作のパン屋さんも、店主が営む個人経営の小さなパン屋さんで、実はパン屋さんの店主も私が兼ね役で担当させてもらっているのですが、学生時代にパン屋さんでアルバイトをしていた時はレジ打ちばかりで、パンを作る工房に入ることに憧れていたので、役でそれを叶えることができたことも嬉しかったです。今もパンを作っているところを観るのが好きで、ベーカリーカフェに行くと工房がよく見える席を陣取りますし、テイクアウトの時もレジの脇から奥の工房に「ありがとう」って、いつも小さく一礼しています。

――パン屋さんへのリスペクトがすごいです。

花澤 だって朝早くからの仕事だし単価もそんなに上げられない。今は小麦も高いのに。
頑張ってくださっていると思うと、頭が下がる思いです。今もどこかでパン屋さんがパンの赤ちゃんを生み出していると思うと、「ありがとう」という気持ちでいっぱいです。

――パンはとても親近感あふれるモチーフですよね。

花澤 「パン」と付くものは何でも手に取ってしまって、愛用のポーチもパン関係のグッズです。『パンの赤ちゃん』はこのままキャラクターグッズになりそうでワクワクします。クリームパンの赤ちゃんはプニプニ素材のキーホルダーがいいなとか、パンの匂いがしたらいいなとか、UFOキャッチャーの景品であったらやっちゃうなとか、いろいろな思いを馳せています。

――では最後に、どんな人に『パンの赤ちゃん』を楽しんでほしいですか?

花澤 小さい子が夢中になって観てくれたら嬉しいですし、これを観てパンが食べたくなってもらえたら最高です。パン好きの方なら、きっとすでにどこかでパンの赤ちゃんの情報を仕入れて「観よう」と思ってくれていると思いますが、そのパンの赤ちゃんを日々生み出している全国のパン屋さんの方にも、パンの赤ちゃんたちがこんなにも元気に活躍しているところをぜひ観に来ていただきたいです!

取材・文/榑林史章
(C)CHOCOLATE
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