人生に迷ったとき、元気がほしいとき、あるいはただ日常を忘れて泣きたくなるとき――そのような瞬間にそっと寄り添う存在がアニメである。アニメには人生のヒントや生きる力が詰まっている。

本コラム『アニメ大先生』は、「人生で大切なことはすべてアニメが教えてくれる」をテーマに、アニメを通じて得られる学びや気づきを綴る連載である。

連載第23回となる今回は、八木美佐子アナウンサー(18回目)とともに、新たな世界線で幕を開けた『スティール・ボール・ラン』の魅力に迫る。
待望のアニメ配信スタートに胸を高鳴らせる八木アナの高揚感から始まり、シリーズの系譜を受け継ぎながらも刷新された物語、そしてその中に息づく”ジョジョの血”を、音の演出という切り口から丁寧に紐解いていく内容である。

【関連写真】ジョジョ立ちで撮影する八木さんの写真をチェック!

★『スティール・ボール・ラン』音に宿る「ジョジョの血」を探す

ついに……! ついにこの日がやってきました。2026年3月19日。アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』第7部『スティール・ボール・ラン』が、Netflixにて世界独占先行配信をスタートしました。

第6部『ストーンオーシャン』が完結してから数年。ずっとキリンのように首を長くして待ち続けていた私は、土煙を巻き上げながら駆ける馬たちの姿を見た瞬間、胸が熱くなりました。(本当は馬にかけたかったのですが、首はどうしてもキリンで、ウマくいきませんでした……。)

物語の舞台は19世紀末のアメリカ。総距離約4,000マイルの北米大陸横断騎馬レース「スティール・ボール・ラン」が幕を開けます。半身不随となり失意の底にいた元天才騎手ジョニィ・ジョースターは、謎の男ジャイロ・ツェペリが見せた”回転”の奇跡に希望を見出し、過酷なレースへと身を投じます。


長く続くシリーズには、『ガンダム』や『プリキュア』のように作り手の世代交代で世界観を刷新するものもあれば、『ルパン三世』のように作品ごとに色合いを変えながら愛され続けるものもあります。その中で『ジョジョの奇妙な冒険』は、舞台も時代もジャンルも大胆に変えながら、第6部まではジョースター家の血統を物語の軸に据え、作品全体としては「人間讃歌」という背骨を貫いてきました。だからこそ、ここまで変幻自在でありながら、どこまでもジョジョなのだと思います。最大の驚きは、これほど劇的な変化の数々が、原作者・荒木飛呂彦先生という一人の作家の手によって、止まることなく更新され続けていることかもしれません。

本作は単なる新章ではなく、一度築かれた巨大な系譜を、新しい世界線でどう鳴らし直すかに挑んだ作品でもあります。登場人物や時代設定も刷新されているため、初めて触れる方でも独立した作品として楽しめるのが特徴です。
しかし、長くシリーズを追ってきたファンほど、作品の端々に宿る”ジョジョの血”に思わず反応してしまうギミックが、1st STAGE(第1話)からこれでもかと詰め込まれています。

ジョジョと言えば、逆転の場面で流れる「処刑用BGM」は欠かせません。今回の『スティール・ボール・ラン』でも、音楽は菅野祐悟さんが担当しています。以前、音響監督の岩浪美和さんに伺った際、第6部『ストーンオーシャン』の処刑用BGMに第3部を思わせる要素があるのは、意図的なものだと教えていただきました。
ジョジョは物語だけでなく、音の中にもシリーズの記憶が受け継がれています。そのことを強く実感した、印象深い出来事でした。


だからこそ、『スティール・ボール・ラン』でも音の細部が気になってしまいます。
例えば、ジャイロの鉄球が回転する際のエフェクト音には、私にはどこか波紋を思わせる響きがあり、思わずニヤリとしてしまいました。
アニメならではの派手な演出で描かれる鉄球の回転の躍動感は本当にかっこよく、用途はまだ見つかっていませんが、不意に自分も欲しくなってしまったほどです。
また、ディエゴが加速して一気に抜き去る場面では、”ザ・ワールド”を思わせるように聴こえる効果音が響き、製作陣の歴代シリーズに対する深い愛情が伝わってきます。
そして、第7部の処刑用BGMもまた圧巻でした。西部の荒野を思わせる乾いた響きの中に、歴代シリーズの音の記憶を呼び起こす気配が滲んでいます。新しさの中に、歴代シリーズから受け継がれてきた黄金の精神が、たしかに脈打っていました。

『スティール・ボール・ラン』の魅力は、レースの興奮だけでなく、失意の中にいたジョニィがもう一度前へ進もうとする、その意志にあるのだと思います。正直に申し上げれば、私は失敗をかなり引きずってしまう方です。オンエアされた番組でトップスを前後逆に着ていたこともあれば、つい最近も靴を脱ぐスタジオだったにもかかわらず、”ミャクミャク靴下”でニュースを読むことになって、ひどく気まずい思いをしました。仕事で思うようにいかず、立ち止まりたくなる日もあります。だからこそ、ジョニィがもう一度前へ進もうとする姿に、私は強く励まされるのだと思います。
私も日々の失敗にめげず、せめて服の前後くらいはしっかり確認しながら、前へ進んでいきたいです。

第1部から第6部まで続いてきたジョジョらしさを、本作がこれからどう受け継いでいくのか。そして、その世界をどんな音が彩っていくのかも楽しみです。
『スティール・ボール・ラン』は、新しい風を巻き起こしながらも、私たちの魂に刻まれた「ジョジョの系譜」を熱く呼び覚まし、「最高にハイ」にさせてくれるアニメです。
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