[取材・構成:川俣綾加]
『楽園追放 - Expelled from Paradise -』
11月15日劇場上映
http://rakuen-tsuiho.com/
■ 大人の女性が16歳の女の子の姿のアンジエラ
―アニメ!アニメ!(以下、AA)
役作りについても教えてください。キャラクターの声の外殻を作る時、どうイメージを膨らませたのでしょうか。
―釘宮理恵さん(以下、釘宮)
とらえどころが無さすぎてあまり自分で決め込まずにいたのですが、現場で水島監督に「全然違う!」と言われ、「もっと大人に、もっと厳しく、もっとプロフェッショナルに!」と調整を加えました。大人の女性が16歳の女の子の姿で、という設定だったので自分でも作りあぐねていたんです。一度テストをやって意見をいただいて、そこから舵を切って作っていきました。
―三木眞一郎さん(以下、三木)
結局必要なのは中身なので、なんとなくの雰囲気でやってしまうと絶対に「そうじゃない」となるんです。アニキなキャラクターだと思ってアニキっぽくすると、それは「アニキ風」にしかならない。だからそこは頑張らなくていいんです。そうわかっているけど、どうしても頑張ってしまったり。
―釘宮
絵に合わせてしまったり。
―三木
「もう三木は40歳越えてるんだろ」という話になって、じゃあこのままの自分でディンゴと向き合えばいいんじゃないか、と思いました。中身がきちんとしていれば、出てくるものはきっとくるはず。
あとは、その役の履歴書だけちゃんとわかっていることが大事。セリフをよんでいった時、きちんと掘り下げていけば、そのセリフや行動の手間に存在する理由がわかってくるのでそれを自分の中で履歴書にする。……って、言うのは簡単なんですけどね。(笑)
―AA
印象に残っているシーンを教えてください。
―釘宮
映像としては終盤の、アンジェラが空高く飛び上がって、地上を見下ろした時の風景の広がりです。アンジェラというキャラクターについては、風邪を引いて寝込んだ時の「がんばらなかったことは無いわよ、いつだって」というセリフです。それまで彼女に対して少し隔たりを感じていたのですが、そのセリフを読んだ時に彼女のことを理解できた気がして、とてもポイントになった部分です。
―三木
アンジェラは、いつも何かに頼ってるんですよね。ディンゴは自分で狙いを定めて引き金を引くけれど、アンジェラは照準を合わせるのすらオートでメカ頼り。地上に降り立った時にサンドワームの大群に追いかけられた時がまさにそうで、最初から明らかに違う。
―釘宮
自分が努力をしてるつもりで全部バックボーンに頼っているんです。
―三木
だから「がんばらなかったことは無い」と本音を吐露した時、彼女自身もそのことに気づいたんだと思います。
―釘宮
もちろん努力していなかったわけではなくて、最後の最後では自力じゃなかっただけという見方もできるし、視点の置き方によって心情の違いが見えてきます。
■ 一回見て終わりだともったいないと思います
―AA
後半に入ってアンジェラがあんなにも「重たい」と言っていた肉体をフルに使うシーンがあって、そこから考えるとものすごい変化ですよね。
―釘宮
アンジェラが自分の足で駆け回っているシーンは、ディンゴのなすがままというか(笑)、あのやりとりはすごく好きです。自分で努力しながら、肉体を駆使して息を切らしながら走って、そこから見える景色を共有しているシーンはすごく意味がある気がしています。
―AA
自分の力で駆けた、努力した、そこで得た気持ち良さはディーヴァの世界しか経験していなかったらわからないことで、アンジェラにとっても物語にとっても重要なシーンだと思います。
―三木
向こう(ディーヴァ)では快楽を頭でわかっているんですよね。でも腹を満たすとか、身近にある喜びに対しては興味が無い。
―釘宮
あの世界の中で努力をしても、富士山登頂のような達成感は存在しないかもしれません。その明確な差が最後につながっていくので、一つ一つのシーンやセリフが視点を変えて行くと色んな意味があって、それをこうして話していてもすごく楽しいです。
―三木
一晩中話せるよね! 特に、文化や生活が全く異なる人たちの奇妙に映る光景を眺めてるみたいな所も面白いですよ。フロンティア・セッターは感情という引き出しに情報を詰め込んでいくし、アンジェラは感情があるのにそれに振り回されないようにしようとしていて、ディンゴは血と肉をもって感情というものをすごく大事にしていく生身の人間。
―釘宮
私たちから見てもまだまだ秘められているものがあるので、一回見て終わりだともったいないと思います。
―AA
最後に、読者にメッセージをお願いします。
―釘宮
ゼロ号試写を終えて、11月15日に公開される頃には何度もバージョンアップを経て、素晴らしい作品に仕上がった状態でみなさんにお届けできると思います。
物語はドンドン進んでいって気がついたらもう終盤みたいなテンポの良さがあるんですが、一つ一つじっくり何度も噛み締めて楽しんでいただけたなら、これ以上無い幸せだと思います。何度でも劇場に足を運んでください!
―三木
今日はゼロ号でしたが、これから色んな手が加わって、もしかしたら僕たちも知らない作品になってるかも!?(笑) なんてことは無いと思いますが、何しろオリジナル作品で原作が無いので、一体どんな作品なのか心待ちにしていただければと思います。待っていただいた分、絶対にがっかりさせない作品になっています。見ていただいた後に少しでも心が動くものがあれば、参加させていただいた者としてはそれ以上無い喜びです。
ご覧になった方は、感想を他の人にも伝えていただけると! 自分にとっての楽園を探すのに役立つのではないかと思います。ぜひ、よろしくお願いします。
―AA
今日は、ありがとうございました!