連載第117回
高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義
[取材・構成: 高浩美]
■ ゲーム『逆転裁判2』のエピソードがベース、成歩堂は弁護士としての”究極の選択”を迫られる
『逆転裁判』が再び舞台化される。今回のタイトルは『逆転裁判2~さらば逆転~』。
主人公の成歩堂龍一役を務めるのは、さまざまな舞台に出演経験のある俳優の渡辺大輔。御剣怜侍役は和田琢磨、綾里真宵役は荻野可鈴と、前作『逆転裁判 ~逆転のスポットライト~』から引き続いての出演だ。また綾里真宵役役は椎名ひかりとのWキャストになる。斎藤栄作が脚本、演出はスーパー・エキサントリッック・シアターのの大関真。
ところで、ゲーム『逆転裁判』が初めて舞台化されたのは2009年、宝塚歌劇団である。タイトルは『逆転裁判 蘇る真実』。当時の宙組のトップスター・蘭寿とむ主演であった。
物語の舞台をアメリカに移し、蘭寿とむ演じるフェニックス・ライト(成歩堂龍一)が難事件を解決する、というものでゲームで使われる楽曲もミュージカルで再現された。しかも宝塚歌劇団史上初のゲームを題材にした作品で、この後、2度舞台化している。
そして2013年には斎藤栄作脚本、大関真の演出、主演の成歩堂龍一に兼崎健太郎を迎え、『逆転裁判~逆転のスポットライト~』が上演された。こちらも好評で再演も行われた。
映画化は2012年、成歩堂龍一役に成宮寛貴、御剣怜侍役は斎藤工、綾里真宵役は桐谷美玲となかなかのキャスティング。監督は三池崇史であった。
今回の舞台の見所は、ゲーム『逆転裁判2』のエピソードがベースになるという。このゲームの第4話のタイトルは『さらば、逆転』。『大江戸戦士トノサマン・丙!』の主役で大スターの王都楼真悟が、ライバル俳優の殺人容疑で逮捕された。その直後、真宵が営利誘拐され、成歩堂は殺し屋を名乗る誘拐犯から王都楼の弁護と無罪判決の要求を依頼される。裁判が進むにつれ、恐ろしい事実が浮かびあがり、成歩堂は弁護士としての”究極の選択”を迫られることになる……というものだ。
『逆転裁判』シリーズで初めてバッドエンドが登場するエピソードとなっているが、舞台は果たして?そして舞台ならではの演出もあるという。どんな展開になるのか、これは舞台上で確認するしかない。
■ 何が正義なのか、弁護士としての役割、悩む成歩堂龍一、人の業も垣間見える、奥が深い作品
前回は舞台版のオリジナルだったが、今回はゲーム原作となる。ゲネプロの前にキャストの挨拶があった。
主演の渡辺大輔は「若干プレッシャーはありますが、映像やセット等にも注目して下さい」と挨拶。
始まりはまず、客席から矢張政志が登場する。手にはカメラ、取材陣のカメラ席に向かって「負けないぞ!」といきなり取材陣をいじる。本番は客席をどういじるのか、チケットを購入しているファンは楽しみだ。
林明寛は矢張政志がすっかり板についている。軽妙なノリで、出てきただけで可笑しい。やたら明るく陽気、さらに身体能力の高い警備員のおばちゃん・馬場カオルとの身体を張ったやり取りで客席はドッとウケること間違いなし。
とにかく『逆転裁判』の登場人物は皆、”濃い”。初参加の王都楼真悟演じる太田基裕は「キャストの方々が濃くて楽しく稽古が出来た」と挨拶で語っていたが、王都楼真悟もとにかく、”濃い”。太田基裕は舞台『弱虫ペダル』の今泉俊輔役や超歌劇『幕末Rock』の高杉晋作役等、キャラクターがはっきりしている役を演じているが、珍しくヒール役、ラストの熱演は迫力があり、ここは必見である。
初参加で成歩堂龍一を演じた渡辺大輔は『天翔ける風に』や『ちぬの誓い』等の演出家・謝珠栄のオリジナルミュージカルの常連で着実に力をつけてきている。今回の成歩堂龍一ぶりは、笑わせるところはしっかり笑わせ、硬派なシーンではしっかり芝居を見せる、といった具合になかなかの芝居巧者。
綾里真宵役の荻野可鈴、挨拶では「前回の時は17歳でしたが、今回の公演では19歳になりました」と語っていた。その間に舞台『K』や『ヴァンパイア騎士』に出演、一回り成長した感があった(椎名ひかりとWキャスト)。
糸鋸圭介役の磯貝龍虎、虎狼死家左右エ門役の富田翔、狩魔冥役の楠世連(藤嵜亜莉沙 とWキャスト)らも健闘、子役ながら存在感抜群の綾里春美役の漆原志優(高野友那とWキャスト)、それぞれ見せ場があって本家のゲームに負けないくらいの弾けっぷりに客席から笑いが起こった。
おなじみの台詞「異議あり!」は、やはり文句なしに”キター!!”と思うところ。どんでん返しや”実は……”的な展開は『逆転裁判』ならでは。何が正義なのか、弁護士としての役割、悩む表現は舞台ならではの陰影のある演技が問われるところ。
裁判所の中央の天秤、ギリシャ神話に登場する正義の女神に由来するが、これは正義を愛する者、裁判に携わる者には常につきまとう。なかなか象徴的だ。映像演出、効果音、背景の絵はゲーム感を醸し出し、舞台効果としても有効な使い方であった。それぞれのキャラクターのバックボーンも垣間見えて、ゲームを知らない観客でも興味がわく。ラストの法廷シーンは見応えあり。
1作目のゲーム発売は2001年。それから次々と新しいシリーズを発表し、今年の2015年の7月には『大逆転裁判-成歩堂龍ノ介の冒険-』と題した新しいゲームも発売される。メディアミックスも盛んな息の長いゲーム『逆転裁判』、キャラクターの存在感が強いので、主軸を変えた物語も創造出来そうだ。
舞台『逆転裁判2~さらば逆転~』
http://gyakutensaiban-stage.com
俳優座劇場
2015年4月29日~5月10日
[キャスト]
成歩堂龍一:渡辺大輔 /御剣怜侍:和田琢磨 /綾里真宵:荻野可鈴・椎名ひかり(Wキャスト)
矢張政志:林明寛/糸鋸圭介:磯貝龍虎/虎狼死家左右エ門:富田翔/狩魔冥:楠世連・藤嵜亜莉沙 (Wキャスト)
華宮霧緒 :石井美絵子/天野由利恵 :小池唯/大場カオル:久下恵美/綾里春美:漆原志優・高野友那(Wキャスト)
藤見野イサオ:加藤良輔/裁判長:外波山文明/王都楼真悟:太田基裕
舞台『逆転裁判2~さらば逆転~』
(C)CAPCOM / ADK Arts
高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義
[取材・構成: 高浩美]
■ ゲーム『逆転裁判2』のエピソードがベース、成歩堂は弁護士としての”究極の選択”を迫られる
『逆転裁判』が再び舞台化される。今回のタイトルは『逆転裁判2~さらば逆転~』。
ゲームの『逆転裁判2』のエピソードをベースにした演出も用意しているそう。
主人公の成歩堂龍一役を務めるのは、さまざまな舞台に出演経験のある俳優の渡辺大輔。御剣怜侍役は和田琢磨、綾里真宵役は荻野可鈴と、前作『逆転裁判 ~逆転のスポットライト~』から引き続いての出演だ。また綾里真宵役役は椎名ひかりとのWキャストになる。斎藤栄作が脚本、演出はスーパー・エキサントリッック・シアターのの大関真。
ところで、ゲーム『逆転裁判』が初めて舞台化されたのは2009年、宝塚歌劇団である。タイトルは『逆転裁判 蘇る真実』。当時の宙組のトップスター・蘭寿とむ主演であった。
物語の舞台をアメリカに移し、蘭寿とむ演じるフェニックス・ライト(成歩堂龍一)が難事件を解決する、というものでゲームで使われる楽曲もミュージカルで再現された。しかも宝塚歌劇団史上初のゲームを題材にした作品で、この後、2度舞台化している。
そして2013年には斎藤栄作脚本、大関真の演出、主演の成歩堂龍一に兼崎健太郎を迎え、『逆転裁判~逆転のスポットライト~』が上演された。こちらも好評で再演も行われた。
映画化は2012年、成歩堂龍一役に成宮寛貴、御剣怜侍役は斎藤工、綾里真宵役は桐谷美玲となかなかのキャスティング。監督は三池崇史であった。
今回の舞台の見所は、ゲーム『逆転裁判2』のエピソードがベースになるという。このゲームの第4話のタイトルは『さらば、逆転』。『大江戸戦士トノサマン・丙!』の主役で大スターの王都楼真悟が、ライバル俳優の殺人容疑で逮捕された。その直後、真宵が営利誘拐され、成歩堂は殺し屋を名乗る誘拐犯から王都楼の弁護と無罪判決の要求を依頼される。裁判が進むにつれ、恐ろしい事実が浮かびあがり、成歩堂は弁護士としての”究極の選択”を迫られることになる……というものだ。
『逆転裁判』シリーズで初めてバッドエンドが登場するエピソードとなっているが、舞台は果たして?そして舞台ならではの演出もあるという。どんな展開になるのか、これは舞台上で確認するしかない。
■ 何が正義なのか、弁護士としての役割、悩む成歩堂龍一、人の業も垣間見える、奥が深い作品
前回は舞台版のオリジナルだったが、今回はゲーム原作となる。ゲネプロの前にキャストの挨拶があった。
主演の渡辺大輔は「若干プレッシャーはありますが、映像やセット等にも注目して下さい」と挨拶。
前回も御剣怜侍役で好評だった和田琢磨は「舞台でしか出せない『逆転裁判2』になっています」と語った。
始まりはまず、客席から矢張政志が登場する。手にはカメラ、取材陣のカメラ席に向かって「負けないぞ!」といきなり取材陣をいじる。本番は客席をどういじるのか、チケットを購入しているファンは楽しみだ。
林明寛は矢張政志がすっかり板についている。軽妙なノリで、出てきただけで可笑しい。やたら明るく陽気、さらに身体能力の高い警備員のおばちゃん・馬場カオルとの身体を張ったやり取りで客席はドッとウケること間違いなし。
とにかく『逆転裁判』の登場人物は皆、”濃い”。初参加の王都楼真悟演じる太田基裕は「キャストの方々が濃くて楽しく稽古が出来た」と挨拶で語っていたが、王都楼真悟もとにかく、”濃い”。太田基裕は舞台『弱虫ペダル』の今泉俊輔役や超歌劇『幕末Rock』の高杉晋作役等、キャラクターがはっきりしている役を演じているが、珍しくヒール役、ラストの熱演は迫力があり、ここは必見である。
初参加で成歩堂龍一を演じた渡辺大輔は『天翔ける風に』や『ちぬの誓い』等の演出家・謝珠栄のオリジナルミュージカルの常連で着実に力をつけてきている。今回の成歩堂龍一ぶりは、笑わせるところはしっかり笑わせ、硬派なシーンではしっかり芝居を見せる、といった具合になかなかの芝居巧者。
ファンを裏切らないルックスで『逆転裁判』の世界観をしっかりと魅せていた。
綾里真宵役の荻野可鈴、挨拶では「前回の時は17歳でしたが、今回の公演では19歳になりました」と語っていた。その間に舞台『K』や『ヴァンパイア騎士』に出演、一回り成長した感があった(椎名ひかりとWキャスト)。
糸鋸圭介役の磯貝龍虎、虎狼死家左右エ門役の富田翔、狩魔冥役の楠世連(藤嵜亜莉沙 とWキャスト)らも健闘、子役ながら存在感抜群の綾里春美役の漆原志優(高野友那とWキャスト)、それぞれ見せ場があって本家のゲームに負けないくらいの弾けっぷりに客席から笑いが起こった。
おなじみの台詞「異議あり!」は、やはり文句なしに”キター!!”と思うところ。どんでん返しや”実は……”的な展開は『逆転裁判』ならでは。何が正義なのか、弁護士としての役割、悩む表現は舞台ならではの陰影のある演技が問われるところ。
裁判所の中央の天秤、ギリシャ神話に登場する正義の女神に由来するが、これは正義を愛する者、裁判に携わる者には常につきまとう。なかなか象徴的だ。映像演出、効果音、背景の絵はゲーム感を醸し出し、舞台効果としても有効な使い方であった。それぞれのキャラクターのバックボーンも垣間見えて、ゲームを知らない観客でも興味がわく。ラストの法廷シーンは見応えあり。
正義とは?を問いかけるだけでなく、人の業のようなものも垣間見える。ゲーム原作、と侮ってはいけない。奥が深い作品である。
1作目のゲーム発売は2001年。それから次々と新しいシリーズを発表し、今年の2015年の7月には『大逆転裁判-成歩堂龍ノ介の冒険-』と題した新しいゲームも発売される。メディアミックスも盛んな息の長いゲーム『逆転裁判』、キャラクターの存在感が強いので、主軸を変えた物語も創造出来そうだ。
舞台『逆転裁判2~さらば逆転~』
http://gyakutensaiban-stage.com
俳優座劇場
2015年4月29日~5月10日
[キャスト]
成歩堂龍一:渡辺大輔 /御剣怜侍:和田琢磨 /綾里真宵:荻野可鈴・椎名ひかり(Wキャスト)
矢張政志:林明寛/糸鋸圭介:磯貝龍虎/虎狼死家左右エ門:富田翔/狩魔冥:楠世連・藤嵜亜莉沙 (Wキャスト)
華宮霧緒 :石井美絵子/天野由利恵 :小池唯/大場カオル:久下恵美/綾里春美:漆原志優・高野友那(Wキャスト)
藤見野イサオ:加藤良輔/裁判長:外波山文明/王都楼真悟:太田基裕
舞台『逆転裁判2~さらば逆転~』
(C)CAPCOM / ADK Arts
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