本作は、「信頼」によって生み出される特殊な能力を持ったヒーローたちが喝采を浴びる世界の物語。
アニメ!アニメ!ではトップヒーローのひとり(一匹)・トラを演じる山寺宏一にインタビュー。作品の見どころやトラをどんなキャラクターと捉えているのか、そして中国アニメへの印象などについてもお話を聞いた。
[取材・撮影=M.TOKU]
■演じる犬・トラは、親しみやすいキャラクター
――『TO BE HERO X』という作品全体の印象をお聞かせください。
山寺宏一 まず、皆の信頼がヒーローのパワーになったり、信頼によってランキングが決まるという設定が面白いと思いました。同時にその信頼値というのは、今の時代をまさしく反映しているようにも感じて。昔から「●●人気ランキング」みたいなものはいろいろとありましたけど、SNSやネット社会の現代は、さらに多くの人の意見が取り上げられやすくなっていると思います。そういう今の世の中を反映した作品なのかなと感じました。
――2D・3Dの融合も本作の特徴です。
山寺 実際のオンエアを見て、映像のクオリティの高さに驚きました。話数によって映像演出のニュアンスが違うというのも面白いですよね。
――今回演じるトラをどういうキャラクターだと感じていますか?
山寺 一言で言うのはなかなか難しいですが、昭和を感じさせるような、とてもピュアなキャラクターだと思います。トラは元々サーカスでピエロとして扱われていて、だれかとの関わりをそこまで持たないがゆえに、愛に飢えて心を閉ざしている部分があって。それが、シンヤというひとりの少女の応援と信頼によって変わっていき、成長していくんです。
そういう意味では、確かに辛い目にも遭ってはいますが、個人的にはそんなに特別なキャラクターだとは感じていなくて。誰もが「そういうことあるよな」と思わせてくれる、親しみやすいキャラクターだと思います。
――犬のトラを演じるうえで、どのようなアプローチをされましたか?
山寺 これまでもやってきましたし、今もやっているので、まずは「また犬を演じるんだな」と最初に思いました(笑)。トラに関しては、ヒーローになって言語がわかるようになるまでは、モノローグを除いて犬の鳴き声で演じているんです。僕は犬の役をやるとき、鳴き声に関してはできるだけ本物に近づけたくて。
小さい頃から犬のモノマネが好きで、それから声優になったというプロセスがあるので、頑張って犬っぽく聞こえるようにやったつもりです。声の方向性としては、作品のなかで渋い感じと言われる場面があるので、それに則って演じました。
――トラ編で印象に残っているシーンを教えてください。
山寺 ひとりの少女が自分のために頑張っている姿を見て、トラがスーパーヒーローになるんだと決心するシーンが印象に残っていますね。ヒーローに切り替わるあの瞬間は、とくに気持ちを込めて演じたつもりです。トラ編の台本を読んだとき、とても面白く、トラの気持ち一つひとつが腑に落ちました。演じやすく、いい本をいただいたなと思っています。
■中国アニメと日本アニメの違いは?
――本作はまず、現地の役者の方が中国語でアフレコされているかと思います。中国語で演じられている方の表現や声の雰囲気は意識しましたか?
山寺 アニメの吹き替え作品の場合、基本的にはオリジナルで演じられている方の音をものすごく気にしているんです。なので、本作もきっかけや雰囲気をつかむために中国の方がやっているトラを意識しようと思っていましたが、「必ずしも近づけなくていいです」というディレクションがありまして。なので、今回はあくまで参考程度にして、ちゃんと絵にシンクロするように意識しながら、自分なりのトラを表現しました。
――昨今は中国のアニメが日本で放送されることも増えています。山寺さんも何作品かご出演されていますが、中国のアニメのここがすごいと思うところや日本のアニメとの違いを感じる部分はありますか?
山寺 僕が携わってきた部分でいうと、映像のクオリティが高い作品が多いなという印象はあります。とはいえ、作品によってさまざまなテイストがありますし、日本でもいろいろな作品があるわけで。本作は独特の世界観がありますが、以前に関わった映画作品は真正面から取り組むような感動作でした。
――作り手や内容を考える人の数だけ、作品が生まれるといいますか……。
山寺 そうです、そうです。日本だってありとあらゆる作品があって、映像も内容も傾向がぜんぜん違うわけですから。もしかしたら、国によって平均するとこういう雰囲気みたいなものはあるかもしれませんが、それをすることに意味はあまりないのかなって。作品の面白さは、それぞれにありますから。
――最後に、あらためて山寺さんが思うトラ編の見どころを教えてください!
山寺 トラがどうヒーローになっていくのかという過程とあわせて、シンヤーという少女との絆も見どころだと僕は思っています。トラをずっと信頼して応援してくれている彼女の涙ぐましい頑張りがないと、トラはヒーローになれなかったわけですから。演じる釘宮理恵ちゃんの芝居も素晴らしい、本当にピッタリ。元々大好きな仕事仲間ですが、今回一緒に演じられてうれしかったですね。
『TO BE HERO X』はもちろん1話から楽しんでいただきたい作品ですが、トラ編だけ見ても面白いと感じてもらえると思います。トラ編を見たら、きっと1話から見たくなるはず。
作品概要
■キャスト
X:宮野真守
クイーン:花澤香菜
梁龍:内山昂輝
黙殺:中村悠一
リトルジョニー:松岡禎丞
ロリ:佐倉綾音
ラッキーシアン:水瀬いのり
トラ:山寺宏一
魂電:島崎信長(※崎はたつさき)
ナイス:花江夏樹
■スタッフ
原作・監督:Haolin(リ・ハオリン)
オープニングテーマ:「INERTIA」SawanoHiroyuki[nZk]:Rei
エンディングテーマ:「KONTINUUM」SennaRin
メインテーマ:「JEOPARDY」澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO、ケンモチヒデフミ、DAIKI (AWSM.)、睦月周平、深澤秀行、馬瀬みさき、高田龍一(MONACA) (※高ははしごたか)
制作:BeDream
製作:bilibili & BeDream, Aniplex
(C)bilibili/BeDream, Aniplex