劇場版『チェンソーマン』レぜ篇が絶賛公開中。アニメ!アニメ!では、話題作が盛り上がっているときに“あえて”見ないという天邪鬼な編集部員が、ミリしらでTVアニメ『チェンソーマン』をイッキ見。
筆者紹介:凪山 20代
近況:「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025」で久々にUNISON SQUARE GARDENの音楽を浴びてから再燃してずっと聴いている。「桜のあと」は神曲。『夜桜四重奏 ~ヨザクラカルテット~』久々に観ようかな~
■『チェンソーマン』の人気具合を知る
ある土曜日。劇場に到着するとロビーやコンセッションはかなりの混雑具合で、鑑賞のお供に必須のポップコーンは普段よりも提供まで時間がかかっている印象だった。
ちょうど同時間帯に隣のスクリーンでは『鬼滅の刃 無限城編』が上映するようだったが、やはり公開直後ということもあってか、コンセッションにいたほとんどの人は私と同じく『チェンソーマン』に吸い込まれていった。
シアターの中に入ると最前列まで見事に満席。見渡すと老若男女さまざまだったが、とくに多かったのは10~30代の男性だろうか。着席すると、隣の席から中国語の会話が聞こえてきたのには『チェンソーマン』のファン層の広さや日本のアニメ作品の海外人気をあらためて感じさせられた。
※以下の本文にて、本テーマの特性上、作品未視聴の方にとっては“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意下さい。
■アキくんの活躍を見に来た…はずだった
鑑賞後、場内が明るくなった第一声は「鬱だ……」だった。一人鑑賞だったので、声には出さず心の中でだが……この辛さを分かち合えるように友人と見に行くべきだった。
一緒に逃げようと言いカフェでレゼを待つデンジ、一度立ち去るもののデンジが待つカフェへと足が向かうレゼ。結局2人は最後に言葉を交わすことすらできないまま、デンジはレゼに振られたと誤解したまま、もう二度と会えなくなってしまった。レゼが路地裏の奥からデンジの待つカフェの明かりを見つめるように横たわっているのがあまりにも辛くて、いい映画だったのに、もう一度見たいのに、あのシーンが辛すぎてもう見たくないと思ってしまう。
傷心のデンジをパワーの空気の読めない明るさがにぎやかしてくれたラストシーンに救われたような気が一瞬したのだが、デンジが口から出した一輪の花に笑ってくれたレゼと、大きな花束に噛り付くデンジにドン引きして喚くパワーが対比されているのだと数秒後に気付いてから具合が悪い。そんなのあまりにも性格が悪くないでしょうか、惨いじゃないですか。
そしてアニメーション作品としては、アニメ版から大幅にパワーアップしていたのに感動した。アニメ版のしっとりとした雰囲気も個人的には好きだったというのは以前書いた通りだが、この劇場版を見ると「なるほど、原作ファンが期待していたのはこれか」ととても納得させられた。とにかく迫力がすごくて、特にバトルシーンの演出は、構図も音響も「もう無茶苦茶だよ!」と言いたくなるほど。圧巻の爽快感と疾走感、だからこそ漂う絶望感に手に汗握った。
日常パートも、アニメ版と比較すると、よりポップな印象が強まっていた。ただ同時に、アニメ版で私の好みだった落ち着いてリアリティのある生ぬるい質感の表現も、必要な場面でしっかりと活かされていたように思う。後半の”転”に向けて徐々に不穏になっていく空気や、違和感が背筋を撫でていくような生々しいほどの薄気味の悪さは強烈に印象に残っている。
あとはやっぱり、とにかく主題歌がいい。
『チェンソーマン』アニメ版を観る前から、劇場版の主題歌が米津玄師×宇多田ヒカルだとは知っていて、いち音楽ファンとして夢のようなタッグをとても楽しみにしていた。その時には曲だけ聞ければいいと思っていたけれど、今となると、この歌詞をしっかりと理解できる状態で聞くことができて本当によかった……!
絶望感に浸りながら劇場で初めて聴いた「JANE DOE」は、これまで鑑賞してきた数あるアニメ作品の中でもトップに躍り出るほどいい音楽体験だったと思う。
映像体験としては最高の劇場版だったが、ストーリーの後味はあまりにも辛い。早く救われたいし、現時点最推しのアキくんと天使の悪魔のこれからも気になるし、とにもかくにも原作マンガを読み始めようと思う。
いつ皆は救われるの?と原作ファンの友人に聞くと微妙な顔をされたのだが……一旦その違和感には気付かなかったことにしたい。
【◯日で全部見る“ミリしら”な編集部員たち】
「作品について1ミリも知らない…“ミリしら”な人間が、とあるきっかけで、その作品を一気見してみる」という体当たり企画。
昨今、世に出るアニメ作品の数は増加の一途をたどる。TVで、配信で、映画館で、円盤で、と視聴媒体も多様化。かなり昔の作品も改めて視聴できるようになってきた。楽しめる作品が増えるのは有り難い反面、きっかけを逸して未視聴なままの話題作があるのも事実。
そして今回、新作でのアキの活躍を見届けるため劇場に足を運ぶことに……果たしてその感想は?
筆者紹介:凪山 20代
近況:「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025」で久々にUNISON SQUARE GARDENの音楽を浴びてから再燃してずっと聴いている。「桜のあと」は神曲。『夜桜四重奏 ~ヨザクラカルテット~』久々に観ようかな~
■『チェンソーマン』の人気具合を知る
ある土曜日。劇場に到着するとロビーやコンセッションはかなりの混雑具合で、鑑賞のお供に必須のポップコーンは普段よりも提供まで時間がかかっている印象だった。
ちょうど同時間帯に隣のスクリーンでは『鬼滅の刃 無限城編』が上映するようだったが、やはり公開直後ということもあってか、コンセッションにいたほとんどの人は私と同じく『チェンソーマン』に吸い込まれていった。
シアターの中に入ると最前列まで見事に満席。見渡すと老若男女さまざまだったが、とくに多かったのは10~30代の男性だろうか。着席すると、隣の席から中国語の会話が聞こえてきたのには『チェンソーマン』のファン層の広さや日本のアニメ作品の海外人気をあらためて感じさせられた。
※以下の本文にて、本テーマの特性上、作品未視聴の方にとっては“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意下さい。
■アキくんの活躍を見に来た…はずだった
鑑賞後、場内が明るくなった第一声は「鬱だ……」だった。一人鑑賞だったので、声には出さず心の中でだが……この辛さを分かち合えるように友人と見に行くべきだった。
一緒に逃げようと言いカフェでレゼを待つデンジ、一度立ち去るもののデンジが待つカフェへと足が向かうレゼ。結局2人は最後に言葉を交わすことすらできないまま、デンジはレゼに振られたと誤解したまま、もう二度と会えなくなってしまった。レゼが路地裏の奥からデンジの待つカフェの明かりを見つめるように横たわっているのがあまりにも辛くて、いい映画だったのに、もう一度見たいのに、あのシーンが辛すぎてもう見たくないと思ってしまう。
傷心のデンジをパワーの空気の読めない明るさがにぎやかしてくれたラストシーンに救われたような気が一瞬したのだが、デンジが口から出した一輪の花に笑ってくれたレゼと、大きな花束に噛り付くデンジにドン引きして喚くパワーが対比されているのだと数秒後に気付いてから具合が悪い。そんなのあまりにも性格が悪くないでしょうか、惨いじゃないですか。
そしてアニメーション作品としては、アニメ版から大幅にパワーアップしていたのに感動した。アニメ版のしっとりとした雰囲気も個人的には好きだったというのは以前書いた通りだが、この劇場版を見ると「なるほど、原作ファンが期待していたのはこれか」ととても納得させられた。とにかく迫力がすごくて、特にバトルシーンの演出は、構図も音響も「もう無茶苦茶だよ!」と言いたくなるほど。圧巻の爽快感と疾走感、だからこそ漂う絶望感に手に汗握った。
日常パートも、アニメ版と比較すると、よりポップな印象が強まっていた。ただ同時に、アニメ版で私の好みだった落ち着いてリアリティのある生ぬるい質感の表現も、必要な場面でしっかりと活かされていたように思う。後半の”転”に向けて徐々に不穏になっていく空気や、違和感が背筋を撫でていくような生々しいほどの薄気味の悪さは強烈に印象に残っている。
アニメ的なコミカルな演出と映画のようなリアルさが混じる演出の両立によって、デンジの感情とストーリーの先行きを演出するコントラストが強化されているようだった。
あとはやっぱり、とにかく主題歌がいい。
『チェンソーマン』アニメ版を観る前から、劇場版の主題歌が米津玄師×宇多田ヒカルだとは知っていて、いち音楽ファンとして夢のようなタッグをとても楽しみにしていた。その時には曲だけ聞ければいいと思っていたけれど、今となると、この歌詞をしっかりと理解できる状態で聞くことができて本当によかった……!
絶望感に浸りながら劇場で初めて聴いた「JANE DOE」は、これまで鑑賞してきた数あるアニメ作品の中でもトップに躍り出るほどいい音楽体験だったと思う。
映像体験としては最高の劇場版だったが、ストーリーの後味はあまりにも辛い。早く救われたいし、現時点最推しのアキくんと天使の悪魔のこれからも気になるし、とにもかくにも原作マンガを読み始めようと思う。
いつ皆は救われるの?と原作ファンの友人に聞くと微妙な顔をされたのだが……一旦その違和感には気付かなかったことにしたい。
【◯日で全部見る“ミリしら”な編集部員たち】
「作品について1ミリも知らない…“ミリしら”な人間が、とあるきっかけで、その作品を一気見してみる」という体当たり企画。
昨今、世に出るアニメ作品の数は増加の一途をたどる。TVで、配信で、映画館で、円盤で、と視聴媒体も多様化。かなり昔の作品も改めて視聴できるようになってきた。楽しめる作品が増えるのは有り難い反面、きっかけを逸して未視聴なままの話題作があるのも事実。
そんな話題作・名作を改めて視聴するというのは、腰が重いもの…そこで!我々編集部員が実際に「一気見」を実行。その経過をお届けします。“ミリしら”な人間が沼っていく過程もわかるかも…!? 気になる作品があれば「同じスケジュールで一緒に見る」もよし。記事を読んで「見た気になる」もよし。編集部員たちと一緒に、アニメ作品を楽しんでほしい。
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