2025年10月から放送中のアニメ「青のオーケストラ Season2」。阿久井真が小学館「マンガワン」にて連載中のマンガを原作とする、演奏することをやめた元天才ヴァイオリニスト・青野が出会った高校のオーケストラ部の世界を舞台に繰り広げられる、青春のアンサンブルドラマだ。
岸誠二監督のもと、アニメーション制作を日本アニメーションが手掛けるこのTVアニメは、Season1が2023年4月から10月にかけて放送された。

Season2のオープニングテーマ「アマデウス」を歌うのはGalileo Galilei。これまでに青春時代を象徴するような眩さのある主題歌で作品を彩ってきた彼らが、アンサンブル青春ストーリーとコラボレーションした。11月26日にZepp DiverCity にて行われた "TRITRAL TOUR"でも、アンコールで披露。本曲の魅力ともいえる際立つエモーショナルな鼓動が会場を埋め尽くした。

そんな「アマデウス」の制作時は「中学時代の吹奏楽部の思い出と繋がった」というGalileo Galileiのソングメイカー・尾崎雄貴に話を聞いた。

嫉妬とリスペクトの物語。アニメ「青のオーケストラ」 映画『アマデウス』に見た音の心理
――Galileo Galileiが手がけた初めてのアニメの主題歌「夏空」が2010年でした。あれから15年を経た今、アニメの主題歌を作る際の意識や姿勢はどのように変化してきましたか?

尾崎 当時はまだバンドを始めて『閃光ライオット』という大会に優勝してメジャーデビューをしたばかりで、自分たちがミュージシャンだということや作品へ楽曲を書き下ろすことも、曲を使っていただくことに対しても実感がありませんでした。その後、機会を何度かいただいて経験してきたことによって、作品を深く知った上で楽曲を作る余裕ができました。

――作品とのコラボレーションによって、ご自身の中からオリジナル曲と違うものが引き出されることはありますか?

尾崎 そもそも自分の楽曲の作り方は、内から湧き出るものを書き殴っていくというものではなくて、例えば人生の中で起こった出来事や、見かけた人物のことや友だち、メンバーのことや噂に聞いた人たちのことが「僕にはこう見える」と歌詞や曲にしてきたので、ある意味では常に何かとコラボレーションしている気持ちで楽曲を作っているんです。作品への書き下ろしの場合も曲の生まれる場所や部分はあまり変わらないです。
それはGalileo Galileiの、僕らのいいところでもあるのかなと思いますし、主題歌を作るからと言ってあまり困ることはありません。

――そんなGalileo Galileiがアニメ「青のオーケストラ Season2」のオープニングテーマ「アマデウス」を歌っています。まずは作品の印象を教えてください。

尾崎 お話をいただいてから、発売されているコミックスを全巻入手したのですが、一気に読んで、最新巻を読んだところで今回の曲は「アマデウス」だと浮かびました。『青のオーケストラ』というタイトルから、最初は青春モノや恋愛要素もあるような作品を想像したのですが、登場人物のバックボーンや背負っているものがそれぞれに重たいものが多い作品だと思いました。主人公の青野 一(あおの はじめ)はそもそも才能もあって天才なのですが、他の登場人物たちの主人公に対する嫉妬や気持ちの部分がすごく面白いと感じましたし、自分の好きな映画である『アマデウス』(1984年製作)と僕の中ではリンクしたんです。僕は連想ゲームのように物事を考えながら曲を作るのですが、自分の中にあるものと繋がったこの映画をタイトルにして曲を作ろうと思いながら原作を読んでいました。自分も中学校時代に吹奏楽部だった経験がありますし、バンドを始めたきっかけも吹奏楽部の顧問の先生が休日にギターを教えてくれて、音楽室に通いながらみんなで音を合わせる楽しさを教えてもらったことだったんです。「自分の才能ってなんなんだろう」と思っていたあの頃の自分ともイメージが繋がったのが「青のオーケストラ」でした。

――映画『アマデウス』のどのような部分とリンクしたのでしょうか。

尾崎 ギターを教えてくれた吹奏楽部の顧問の先生の音楽の授業で観た映画だったのですが、あの作品は、モーツァルトとサリエリとの関係性や、心理描写としてはサリエリの担う部分が大きいと思っているんですね。当時、モーツァルトの華やかで破天荒な人生やテンション感にみんなは笑っていましたが、僕はサリエリに感情移入していたんです。
例えばGalileo Galileiでもギターの岩井(郁人)くんが一度、僕との才能のぶつかり合いで脱退したことがありましたし、バンド内での衝突の中で嫉妬したり嫉妬されたりすることもあるんですよね。でも嫉妬という感情はリスペクトなんです。「あいつはすごい」と認めているから生まれる感情。それが『青のオーケストラ』では描かれていると思います。「俺、強い」系のマンガでも主人公が才能で無双するわけでもないし、主人公の感情だけを描いているわけでもない。その物語と映画『アマデウス』が繋がりました。

原作の狂気を音に。ストリングスに込めた主人公の焦りとエネルギー
――その一曲である「アマデウス」の制作時にアニメ側からはどんなリクエストがありましたか?

尾崎 「こうして欲しい」というオーダーは特になかったです。ただ、僕としては演奏シーンがOP映像にもあると考えて、ストリングスは入っていないといけないかなとは思ったので、アニメ側のみなさんとの打合せで「弦楽器が入っていた方がいいですよね」と聞いたら「なくても大丈夫です」と言われて拍子抜けしました(笑)。そういう意味でも自由に作らせてもらえた、すごく楽しいコラボレーションでした。それにGalileo Galileiがオープニングテーマを担当する“Season2”からは、個人ではなくオーケストラとして音を合わせることを主軸に、楽曲を書いた人の気持ちや曲に込められた感情を読み解くことにフォーカスされ始める時で。そんなタイミングで自分たちの曲を使ってもらえることを嬉しいなって思いました。


――イントロからストリングスの入るオーケストレーションとGalileo Galileiの音とのコラボレーションが印象的な「アマデウス」ですが、作曲の際に最も意識したのはどんなことでしたか?

尾崎 書き下ろしのコラボレーション曲は、やってみたかったことに挑戦する機会だと考えています。曲が作品の世界観と合ってさえいれば、バンドとしてやってみたいことや新しい挑戦を少しでも盛り込むようにしているんです。今回も曲を書く前から「今まであまりやったことないことに挑戦したい」と思っていたので、ストリングスを入れました。

――新たな挑戦でしたか?

尾崎 これまでにもバンドの音の奥に打ち込みで入れたことも、自分たちでヴァイオリンを買って見様見真似で鳴らした音をサンプリングしてストリングスを使ったこともありますが、それはあくまでも曲の後ろのレイヤーですよね。ストリングスのアイディアから曲を書いて、むしろそれがメインになった曲は作ったことがなかったので、やってみました。

――ストリングは生でレコーディングされたんですよね。

尾崎 はい。バイオリン、ビオラ、チェロの三重奏でお呼びしました。僕らは楽譜が読めないので、打ち込んだ音源をデモで送ってレコーディングに臨みましたが、奏者さんはすごく対応力がありました。現場では僕らがハミングで伝えていたのですが、お三方の中に自然とバンマスが生まれていく様子は、別のバンドとコラボしているような感覚で、見ていてワクワクしました。そのお三方の音出しの時から、「やっぱりソフトウェアで鳴らす音では敵わないな」と思いました。サンプリングでも違う。
実際に聴いた音に対して鳴らしてくれる生の音はソフトウェアでは再現できないと感じて、ハッとしました。

――アレンジ面で心を砕いたのはどんなところですか?

尾崎 最初にストリングスのアイディアから作ってみたいと思った時に、Coldplayの「Viva la Vida」みたいに、明らかに始まりで鳴るストリングスのメインテーマが大事だとわかるようにしたいと思っていたので、基本イントロから流れているスタッカート気味のストリングスのフレーズがずっと続いています。サビだろうがBメロだろうが。コード感を固定することにはなりますが、そのコード感が消えないようにバンドの方で展開を作っていこうと思いましたし、メロディもそこに乗せて作りましたし、背骨のようなフレーズと共に作っていくことをみんなで意識しました。リズムもそうですが、ちょっと狂おしい感じや焦りの滲む感覚は、マンガから受け取ったものです。いけるのなら狂気ギリギリまでいくくらいのエネルギーを原作から感じたので、それは表現したいと思いました。それこそ『アマデウス』の映像のティザーを観ながら作っていきましたね。

――作詞をされた際にたどり着いたモチーフと「青のオーケストラ」とのタッグだからこそ生まれた表現について教えてください。

尾崎 自分や他者の才能に対する焦りですね。バンドを結成した頃、恥ずかしいからとボーカルは誰もやりたがらなかったのですが、僕の歌を聴いたみんなが「これは音源を録音しただろう」と言ったんです。その言葉で「もしかして俺は歌えるのかも」と思った。その感じのままメジャーデビューしたのが僕らでした。
今でも自分に才能があるのだろうかということと向き合い続けている自分と「青のオーケストラ」が繋がったので、この曲のモチーフを敢えて言葉にするなら「才能について」だと思っています。

――完成したものがアニメで流れた際の感想をお聞かせください。

尾崎 子供が3人いまして、そのうちの2人が小学生なのですが「パパの歌が流れるよ」と観てくれたんです。息子が「パパがこれ、作ったの?」って言うので「そうだよ」って話をしていたら「このアニメも作ったの?」って聞かれちゃいました(笑)。そのアニメ映像は楽曲とすごく合っていましたね。僕はアニメが好きなので、主題歌を作りながらもOP映像を想像しているのですが、その想像は毎回超えられていきますね。今回はもうちょっとエフェクティブで学園感があるのかと思っていたのですが、すごくオーケストラ感の強い映像になっていたことにゾクッとしましたし、感激しました。楽曲に対してキャラクターのモデリングもしっかりされているのが好きですが、反映されていたことで感動しました。自分たちが作ったストリングスのアイディアを元に映像を構成し、キャラクターが演奏してくれていたんです。アニメの映像としてというよりも、登場キャラクターたちが僕らの曲を演奏してくれていると感じて、本当に感激しました。

ライブと新メンバーで進化を見せるGalileo Galileiの未来
――ライブではどのように表現しようと考えていましたか?

尾崎 背骨になっているストリングスのメインテーマと同時にピアノも鳴っているのですが、ずっと「鍵盤が弾きたい」と言っていた岩井くんがそのピアノを、髪を振り乱しながらアナーキーな感じで演奏している姿を想像しながら作ったので、ライブではそれをやりたいです。かなり大変なフレーズで、ピアノをずっとやっていた人でも弾くのが難しいくらい速いフレーズですが、岩井くんに無我夢中で弾いてもらいたいです。
あとは他の曲とは違ってパーカッションとドラムがロックバンドっぽく入っていないんです。ここは弟の(尾崎)和樹がパーカッションとしてやってくれていて、叩き方も普段と違っています。この演奏に吹奏楽部時代に和樹がティンパニとか叩いていた頃を思い出しました。それがすごく面白いので、ライブではそういった部分を意識して演奏したいです。

――そんなGalileo Galileiは10月にDAIKIさんが加入されました。現体制となっての心境の変化や楽曲制作での変化はありましたか?

尾崎 「アマデウス」の制作タイミングではまだDAIKIくんの加入の話もあまりしていなかったので、4人で完成させたんです。だから4人のGalileo Galileiとしての最後の一曲になりました。それこそ『青のオーケストラ』では才能の種類やそれぞれ演奏や自分の楽器に懸ける思いは違いますし、自分の立場が脅かされる存在が入ることでそれぞれがひりつきますよね。僕らみたいなロックバンドも同じです。ずっと一緒にいる4人だから、きっとお互いがお互いを必要とし続けるだろうということに甘えが生まれると思うんです。DAIKIくんが入ることでそうではいられなくなる。DAIKIくんに対してリスペクトがあって、認めているからこその嫉妬も生まれると思います。僕がDAIKIくんを入れたい、バンドを5人にしたいと言ったのですが、それはバンドに起爆剤をぶち込みたかったから。その兆候は今、すごく見えていますし、今後のバンドの着火剤になると感じます。この加入によって、バンドが熱く変化していくという確信があります。

――2026年5月に開催される全国ツアーが発表されていますが、2026年はどんな時間にしたいですか?

尾崎 提供曲も含めて、2024年から2025年に掛けて本当にたくさんの楽曲を書いたんです。曲名を言われても、自分の中で曲名と楽曲が一致しないくらい頭の中が混乱するほどいろんな曲を書いたのですが、それは初めてのことだったんです。「確かにこういう曲書いたな」と今年作った曲でも同じ状態になったんです。僕は曲を書いたり、何かを完成させたり、札幌のバンドのレコーディングを自分たちのスタジオでやったりもしていて、ずっと音楽漬けなのですが、それが色濃い一年だったので、2026年も同じ感じだと思っています。忙しいことはいいことだなと思いますし、頑張りたいです。バンドとしても2025年はGalileo Galileiのメンバーとして音楽に集中できた時間だったと思います。2026年はそれが再構築される年になると思うので、楽しみです。僕はバンドがやりたいんです。人前で歌いたいわけでもなくて、バンドがやりたい。2026年は泥臭くバンドをやりたいです。

■Galileo Galilei information
【ライブ有料配信】
公演名:Galileo Galilei『あおにもどる』at東京ガーデンシアター
配信期間:2025年12月27日(土)19:00~2026年1月4日(日)23:59
チケット購入はこちら https://eplus.jp/galileogalilei/st/

【2026年全国ツアー】
Galileo Galilei Tour 2026 "NAKED HERO"
2026年5月10日(日)札幌cubegarden(17:00/17:30)
2026年5月14日(木)大阪BIGCAT(18:00/19:00)
2026年5月17日(日)横浜KT ZeppYokohama(17:00/18:00)
2026年5月19日(火)福岡DRUMBe-1(18:00/18:30)
2026年5月21日(木)広島LIVEVANQUISH(18:00/18:30)
2026年5月23日(土)名古屋NAGOYACLUB QUATTRO(17:00/18:00)
2026年5月26日(火)仙台darwin(18:00/18:30)
【チケット】オールスタンディング(KT Zepp Yokohama公演のみ2階指定席あり)
前売り6,500円(スタンディング)/2階指定席7,000円(KT Zepp Yokohama公演のみ)
※小学生以上有料
https://www.galileogalilei.jp/

アニメ「青のオーケストラ Season2」

【オープニングテーマ】
「アマデウス」
作詞・作曲:尾崎雄貴
編曲:Galileo Galilei
歌:Galileo Galilei

【放送】
NHK Eテレ 毎週日曜午後5:00放送 (再)毎週木曜午後7:20
《2026年年始にまとめて一挙放送》
1/2(金)午後1:00~3:30 第1話~第6話
1/3(土)午後1:00~3:30 第7話~第12話

【スタッフ】
原作:阿久井 真
監督:岸 誠二
シリーズ構成:柿原 優子
キャラクターデザイン:森田 和明
音響監督:飯田 里樹
音楽:はら かなこ 小瀬村 晶
アニメーション制作:日本アニメーション
制作・著作:NHK NHKエンタープライズ 日本アニメーション
(C)阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション
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