4月1日にパシフィコ横浜 国立大ホールにて開催された「HKT48 春のコンサート 2023」。その夜公演では矢吹奈子の卒業コンサートが行われ、数々の卒業生がサプライズ出演したことも話題となった。
満員の観客が埋め尽くした会場におなじみのovertureが流れると、ステージ中央の大型スクリーンには矢吹がこれまで歩んできた約10年間を振り返る映像が映し出され、ファンはさっそく感涙モードに引き込まれる。
加入時に12歳の小学生だった彼女の愛らしい表情に始まり、時には重圧に悩みながらアイドルとして走り続けた姿に会場からは精一杯の歓声が。この日はマスク着用のうえで声出しが解禁され、ファンは10年間見守ってきた矢吹に精一杯の声援を送っていた。
1曲目はグループの最新曲であり矢吹の卒業シングルでもある「君はもっとできる」をメンバー全員で披露。矢吹はひとり、ステージ上段で歌唱だ。するとラストのサビでは矢吹の背中に、34.37メートルにもおよぶ大きな天使の翼が登場。その数字はデビューからこの日までの3437日にちなんだものであり、「未来への翼」というコンサートタイトルにも重なる演出だった。
続けては全員参加で「ビーサンはなぜなくなるのか?」「突然Do love me!」「ウインクは3回」と、矢吹センター曲を立て続けに披露。ここで最初のMCとなり、卒業ライブが開幕した心境を訊かれた矢吹は「本当にこの日が来ちゃったんだ…という気持ちです」と複雑な感情を吐露しつつも、「今日は一人一人の顔を見て、覚えて帰りたいなと思います!」とラストステージに懸ける意気込みを力強く口にした。
ここからは各チームや期ごとに分かれてのユニットパートに突入。まずは元NMB48・渡辺美優紀のソロ曲「わるきー」をアレンジした「やぶきー」に始まり、ももいろクローバーZの「行くぜっ!怪盗少女」など、これまでのライブで矢吹が歌い上げてきた楽曲の数々に、矢吹を推し続けてきたファンからは驚きと歓声があがっていた。
4期生とドラフト生を従えて「Seventeen」、梁瀬鈴雅のピアノ演奏による「月と水鏡」のソロ歌唱と続き、同期の田中美久とはグループ加入当初から歌い続けてきた「生意気リップス」を披露。
ほかにも6期生やチームKIV、チームHとのコラボが進んだこのコーナーでは、曲ごとに早着がえで衣装を替えていくことに。矢吹がそれぞれの曲に懸ける思いに加えて、韓国での活動を通して更に磨き上げられたプロ意識も垣間見えたのではないだろうか。
大型スクリーンに映し出された「お世話になった人」をテーマにしたトークビデオでは、田中に加えて同期の栗原紗英と山下エミリーの名前をあげた矢吹。二人は矢吹が韓国で活動しているあいだも良き相談相手として支えてくれていた。
ビデオ終了後には、栗原と山下と共に「思い出のほとんど」(AKB48)を歌唱。盟友と言われた前田敦子と高橋みなみのデュエット曲であり、3人の関係性を込めるには最適の選曲だったことだろう。そして田中とは「友達でいられるなら」をデュエット。涙で歌えなくなりそうになるも、声を震わせて歌い切った。
約10年間にわたって苦楽を分かち合い、時には周りから比べられる関係だった矢吹と田中。歌唱中には「友達でいられるならこんなに苦しくはなかっただろう♪」との箇所で“なこみく”の往時を思い出しては、二人のラストパフォーマンスに涙を流すファンの姿も多く見受けられた。
そんな感動シーンのあとには大きなサプライズが待っていた。卒業生の兒玉遥、指原莉乃、田島芽瑠、朝長美桜、村重杏奈がまさかのステージ登場を果たし、会場からは大きなどよめきが起こっていたほどだ。
まずは矢吹、兒玉、田島、朝長の4人で「2018年の橋」を歌唱。曲中では田島が矢吹の頭を撫でる場面もあり、先輩からの愛を受けながら成長してきたことが伝わってきた。指原とのデュエットで披露したのは「君の名は希望」(乃木坂46)。2019年に行われた指原の卒業コンサートでも披露された曲だ。
その当時、韓国で活動していた矢吹は卒コンに参加できず、映像での出演のみ。自らの卒コンでやっと果たせた念願の共演にて矢吹は、思い出の楽曲を噛み締めるような表情で歌いあげていた。
歌唱後には「さしこちゃんの卒業コンサートで歌うことができなかった『君の名は希望』を今回、私の卒業コンサートで歌わせていただきました」と涙ながらに語ると、指原は「奈子のおかげで久しぶりにステージで歌うことができてとっても嬉しかったです」と感謝の言葉を口に。「みなさん、卒業しても奈子ちゃんのこと、よろしくお願いします!」と呼びかける姿は、卒業から4年が経った今でも指原が精神的なリーダーであることを示していた。
さらに先輩たちとは矢吹のソロ曲「いじわるチュー」を一緒に披露。胸に「NAKO」と白く染め抜かれたセーターと白いスカートをまとい、ポンポンを手に矢吹を応援する先輩たちの姿が鮮烈だ。
その真ん中で高らかにソロ曲を歌い上げる姿はまるで、先輩と後輩の立場が逆転したかのよう。指原ら先輩たちとしても後輩の矢吹をサポートする立場をエンジョイしていたに違いない。
本編クライマックスでは「早送りカレンダー」や「桜、みんなで食べた」など、矢吹ファンの思い入れが強いであろう曲が続く。
HKT48としてステージに立てる残り少ない時間を全力で楽しんでいる矢吹。そのキラキラとした笑顔が眩しかった。
本編終了後には、オーディション時の12歳から現在までのアイドル人生、約10年間をたどる映像を公開。長くて短かった10年間にファンが様々な想いを胸に抱くなか、いよいよアンコールへと突入だ。
まずは「ここにいたこと」を矢吹が一人でしっとりと歌いあげ、そこから卒業スピーチへ。スタッフやメンバー、家族、応援してくれてきたファンに対する感謝の気持ちを涙をこらえながら丁寧に口にした。
スピーチ後はあらためて卒業曲の「君はもっとできる」を全員で再度披露。続く「メロンジュース」で会場のボルテージは最高潮に。そして最後は、矢吹の「よ!」という掛け声がお決まりとなっている「12秒」を晴れ晴れとした顔で披露し、ラストを締めた。
パフォーマンス後は「あらためて、本当にこんなに素敵な景色を見させてくれてありがとうございました!」と力強く挨拶。客席から「奈子ちゃん」コールが巻き起こるなか、笑顔でステージを去っていった。全編を通して矢吹から周囲への感謝と、ファンやメンバーからの矢吹への愛で会場が満たされた卒業コンサートとなっていた。
【矢吹奈子卒業コンサート セットリスト】
M00 overture (HKT48 ver.)
M01 君はもっとできる
M02 ビーサンはなぜなくなるのか?
M03 突然 Do love me!
M04 ウインクは3回
M05 やぶきー
M06 行くぜっ!怪盗少女
M07 Seventeen
M08 月と水鏡
M09 生意気リップス
M10 Make noise
M11 夏の前
M12 アイドルの王者
M13 センチメンタルトレイン
M14 思い出のほとんど
M15 友達でいられるなら
M16 2018年の橋
M17 君の名は希望
M18 いじわるチュー
M19 大人列車
M20 意志
M21 早送りカレンダー
M22 最高かよ
M23 桜、みんなで食べた
EN1 ここにいたこと
EN2 君はもっとできる
EN3 メロンジュース
EN4 12秒
(取材:遠藤葵、小栗あおい)