ルノー/メガーヌ(310万円)

 2017年秋に登場したルノーのCセグメント・ハッチバック「メガーヌ」が、8月26日にマイナーチェンジしました。普通マイナーチェンジというと、見た目がちょっと変わって、新しい装備が追加される程度の話なのですが、このメガーヌの場合、かなり様相が違うのです。

さっそく紹介しましょう。


日本と本国で違うメガーヌのグレード

マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
ルノー/メガーヌGT

 メガーヌといえば、ルノーの基幹モデルであるのは今さら言うまでもない話。日本でも標準モデルのメガーヌのほか、荷室容積を580リットルへと拡大したステーションワゴンの「スポーツツアラー」、そして走りを重視する「R.S.」や「R.S.トロフィー」などがラインアップされています。ですが、本国にはもっと多くのモデルがあり、標準モデルのほか、ちょっと走りに向けたGTと呼ばれるグレードが用意されていました。で、日本で販売されていた「標準グレード」のメガーヌは、このGTグレードのメガーヌでした。


 GTグレードは、ノーマルに高出力な205馬力を発する1.6リットル直4ターボエンジンに、専用のサスペンションと4コントロールと呼ぶ四輪操舵機構を搭載したモデル。ニュルブルクリンクのタイムアタッカーで知られる「R.S.」グレードほどシリアスではないけれど、普段使いでも積極的に走りを楽しみたい、という落としどころを狙ったクルマといえます。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
ルノー/メガーヌR.S.

 もちろんコレは見事に正解で、ライバルであるシビックやゴルフとは異なる良さがありました。一方で「R.S.」との差別化が難しかったのも事実で「だったら100万円高くなっても、100馬力アップのR.S.を買うよね」という人が多かったのだとか。実際、世界的に見ても日本のR.S.グレードの販売比率は相当高いそうです。


 そこでルノー・ジャポンは、今回のマイナーチェンジに伴い、販売するグレードをGTから標準へとチェンジ。お求めやすい価格にすると共に、よりグレードの差別化を図ったというわけです。


デザインは力強さを前面に押し出したものに

マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
フロントビュー
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
サイドビュー
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
リアビュー
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
力強いデザインへと変更されたフロントマスク

 エクステリアはフロントバンパーとフロントグリルを大幅変更。クロームメッキパーツを多用し、より洗練された力強いデザインへと生まれ変わりました。

メガーヌはハッチバックのインテンス(310万円)とステーションワゴンのスポーツツアラー(330万円)の2車種をラインアップしますが、今回お借りしているのはインテンスになります。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
GTやR.SにはあったBピラーの4コントロールエンブレムがない!

 エクステリアで従来のメガーヌと異なるのは、Bピラーに4コントロールのエンブレムがないこと。4コントロール機構が搭載されていないので当たり前と言えば当たり前ですね。ホイールは新デザインで18インチ。タイヤサイズは225/40R18で、GTグレードと同等です。ちなみにタイヤメーカーはコンチネンタル。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
ボンネットを開けた様子
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
新設計の1.3リットルの直4ターボ

 エンジンはルノー・日産・三菱アライアンスとダイムラーにより共同開発された新設計の1.3リットルの直4ターボ。パワーはGTより約40馬力ダウンの159馬力。でありながら、最大トルクは270N・mでGTよりも10N・mダウンにまで抑えられています。ちなみに今年モデルチェンジしたBセグコンパクトのルーテシアは、1.2リットル直4ターボで、出力はクラストップの131馬力/240Nm。メガーヌの方が大柄な分、排気量も大きく、パワーがあるというわけです。ちなみにどちらも1.5リットル以下なので、毎年発生する自動車税は3万4500円。

ついでに両車ともガソリンはハイオク専用車です。ミッションは電子制御7速AT(7EDC)。デュアルクラッチ式で変速ショックが少なく素早い変速を可能としています。マニュアルモードを用意しているので、意のままの変速が楽しめます。ただし、パドルシフトは用意されていません。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
バックドアを開けたところ
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
後席を倒した様子。フルフラットではなかった

 ラゲッジはCセグハッチとしては標準的な473リットル。必要あれば簡単にリアシートを倒すと1367リットルまで容積を稼ぐことができます。フルフラットにはならないのは残念ですが、ホームページを見る限りスポーツツアラーはフルフラットになる模様。ちなみにスポーツツアラーのフルフラット時の容積は1695リットルと、ちょっとしたSUVは裸足で逃げ出しそう。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
運転席側シート
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
運転席側シートの様子
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
ドリンクホルダーは前後に稼働可
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
アームレストを開けたところ
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室内の様子
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ステアリングホイール
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ペダルまわり
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
照明やメーターパネルがカスタマイズ可能
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
インテリアパネルの照明を青に変更
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
インテリアパネルの照明を赤に変更
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
インテリアパネルの照明を緑に変更

 インテリアはモデルチェンジ前を踏襲している様子。ダッシュボード中央のセンターコンソールまわりが少し変更されている程度です。

7型のデジタルインストゥルメントパネルは、ナビゲーションのほか、運転モードやインテリア照明のカスタマイズが可能。シート素材はファブリック。ランバーサポートもしっかりしており、さすがフランス車といった座り心地のよさです。室内に華美な装飾はないのも美質で、そこら辺もフランス車らしいと感じました。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
Apple CarPlayで、ASCII.jp自動車ゆみちぃ部長の音楽を再生した様子
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
スマホトレイにiPhone 8をおいたところ
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
USBポートは2ポート用意する

 もちろん、Apple CarPlayやAndroid AUTOに対応しており、車両とUSB接続するだけで起動します。前作に比べて完成度が上がったようでサクサク動作、ストレスフリーの使い勝手に仕上げられています。USBポートは2ポート用意され、その近くにはスマホ置き場も用意。ただトレーサイズが小さめなので、イマドキの大画面スマホをケーブル接続した状態で置くと、つっかえてしまうかもしれません。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
ナビゲーションを動作させたところ
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
入力画面

 スマホナビ以外にも、通常のナビ画面が出ます。個人的にはこちらの方がGoogleマップよりも見やすく運転しやすかったです。入力時に迷いはなかったのですが、パーキングブレーキがかかっている状態でないと入力できない仕様で、たとえば交差点の信号待ちで入力するといった時には、ちょっと煩雑かもと思いました。この「パーキングブレーキがかかっている時のみナビ操作できる」というクルマは、昨年あたりから増えてきたように感じます。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
後席ドアを開けた様子
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
後席ドアのシート
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
エアコンの送風ダクトとUSBポート

 後席に目を向けると、快適性はそのままに、新たにUSBポートが2つ装備されました。独り身でも、後席にUSBポートがあると「前席はスマホ、後席でタブレットを充電」という使い分けができるのでうれしかったりします。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
シフトレバー、サイドブレーキまわり

 機能面では、電子パーキングブレーキにチェンジしたのも見逃せないところ。ルノーはこの春から日本に導入しているルーテシアから電子パーキングブレーキを採用しはじめ、今回のメガーヌで2作目になります。シフトレバーをPに入れると自動的にパーキングブレーキが入るほか、オートブレーキホールド機構が使えるようになるので、利便性が上がっています。このあたりからして、「より多くの人に、気軽に楽しくルノーの走りを楽しんでほしい」という意図を感じます。


走りの気持ちよさは受け継がれている

マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
メガーヌ

 それではステアリングを握ってみることに。現行のメガーヌは、GTのほかR.S.、R.S.トロフィー、R.S.カップ仕様と色々と試乗しており、激辛のR.S.トロフィーなどと比べ、メガーヌGTは「走っていて丁度よい楽しいクルマ」だと記憶しています。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
走行モードを切り替えている様子
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
設定を変更したところ

 4種類ある運転モードのうち、標準状態の「My SENCE」であることを確認。「グレードダウンでしょ?」という気持ちがないわけではなかったのですが、いざ乗り出すと「これ、楽しいじゃないか!」と笑顔に。走行モードはディスプレーを使って行います。トップのメニュー画面もしくはシフトレバー近くの「ルノー・マルチセンス」ボタンを押して、走行モード画面を呼び出すのですが、他車がボタン一つで切り替わるのに、いちいち画面をタップするのは面倒といえば面倒。さらに言えば、Apple CarPlayではすぐにメニュー画面に切り替わるのに、カーナビが動いている時は、いったんホーム画面に切り替えなければならず。

走行モードは、ステアリングの操舵フィールなどが細かく設定でき、自分好みのクルマにカスタマイズできます。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
メガーヌ

 R.S.は言うまでもなく、GTほど引き締まった足ではありませんが、一般的な日本車よりは遥かにスポーティー。ちょっとした段差でも突き上げてきますが、では嫌な衝撃かというとそうではなく。この適度な足が街乗りを楽しいものにさせてくれます。


 鈍なハンドリングではないのも高ポイント。切れ込みの良さはさすがルノーといったところです。一方、GTやR.S.ほど「切れ込む」わけではありませんから、扱いやすいかなとも。いわゆる「シャーシが勝っているクルマ」で、GTやR.S.ほどではないにせよ、コーナーも想像を超えるほど速く旋回できますし、楽しめるのは◎。


 さらにイイのが「適度なパワー感」。街乗りでパワー不足を感じないのは、トルクフルだから。街乗りで車線をリードできるどころか、きっと乗った人は誰もが「ホントにこれで標準グレードなのか?」と疑うこと間違いナシ。でありながら「街中で踏める」のが、R.S.とは大きく異なるところ。

逆に言えばR.S.グレードはパワーがありすぎて街中では踏めないのです。


 踏んで楽しさを覚えるのは、CVTではなくDCTだから。ある程度回転数が上がってからシフトチェンジする、CVTでは味わえぬ楽しい感覚。さらに面白いのが、1800回転あたりから、わずかですがタービン音と思われる甲高い音が聞こえてくるところ。この1.3リットルエンジンはメカニカルな音も排気音も静かで、標準仕様車としては正しい選択であるものの、走りが好きな人としては音的に物足りなさを感じる部分でもあるので、タービン音を聴かせるという演出は新しく、それでいて楽しさを覚えました。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
メガーヌ

 SPORTに変更すると、シフトタイミングやアクセルのツキ、そしてステアリングの操舵フィールが変わる様子。ちょっと演出が変わる程度なのですが、誰でもどこでも「SPORTモードで走ってみようかな」と思わせる塩梅がとても上手。R.S.になるとステージを選ぶので、ルノーはターゲットユーザーの気持ちをよく理解しているなぁと感心した次第。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
高速道路をアダプティブクルーズコントロールで走行している様子
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
高速巡行中のメーターパネル
マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい
クルーズコントロールボタン

 高速道路では、さすがに追い越しなどの中間加速で「もう少しパワーがあれば」と思わなくもないですが、必要にして十分。運転支援系に目をやると、ストップ&ゴー機能付きのアダプティブクルーズコントロールを新採用。車間距離は4段階で調整でき、最も狭い設定での車間は約2秒と標準的。残念ながら車線監視機能付きステアリングコントロールは搭載されていないのですが、車線逸脱警報は搭載されているので、疲労軽減には大きな効果を発揮することは間違いなさそう。


【まとめ】普段使いにピッタリだけど
走りもいけちゃうカジュアルモデル

マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい

 確かにメガーヌR.S.はワインディングやC1では確実に楽しく、クルマ好きのドーパミンがドバドバ噴出すること間違いナシなのですが、一般道では苦行に感じるところも。今回のメガーヌは、どこでもどこまでも楽しめる「普段使いにピッタリ」のクルマに仕上げられています。カーライフをシリアスに楽しみたい方はメガーヌR.S.を、カジュアルに楽しみたい方は標準仕様のメガーヌを、というルノー・ジャポンの戦略は実に明快であるとともに、「基本的に同じ車種」で叶えてしまったルノーの懐の深さに驚いた次第。R.S.を持っていたら普段使いは標準仕様が欲しくなるでしょうし、標準仕様に乗っていたらR.S.が欲しくなっちゃうこと間違いナシという、実に罪作りなラインアップです。


マイチェン後のルノー「メガーヌ」は普段使い寄りだが走りも楽しい

 さすが、人生を積極的に楽しむ国民の手による自分たちのためのクルマ。人生を楽しみたい人にメガーヌはピッタリの選択といえるでしょう。


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