我らASCII.jp自動車部が大好きな「5ナンバーサイズのホットハッチ」。ですが、その数は少なくなり寂しい限りです。
アバルトのカスタムショップまでオープン

そもそも、なぜA PITオートバックス東雲がアバルト 595に注目するようになったのでしょう? 同店のカーライフアドバイザーである森田さんにお話を伺いました。

「A PITオートバックス東雲では、毎月第3日曜日の朝にテーマを決めたオフ会“モーニングミーティング”を開催しています。以前、アバルトをテーマに実施したところ、過去最高といってもよいほど多くの方が集まられたんですよ。その時、オーナー様からアバルトの魅力や悩みを伺いました」


それを受けて社内で検討した結果「アバルトに力を入れよう」ということになり、10月1日に店舗内にアバルトのカスタムショップ「La Buono コンシュルジュ TOKYO BAY」をオープンする運びとなったと言います。




さらに店内の他エリアにもアバルト 595の関連パーツが厳選して展示され、ショップ全体としてアバルト 595チューンを推していることが伝わってきます。

「併せてデモカーも作ろうということになりまして、9月頃にアバルト 595の最上位であるコンペティツォーネを導入しました。コンセプトとしては、普段使いとサーキット走行の両方が楽しめるクルマです」。さらに森田さんによると、アバルト 595は都心部でのオーナーが多いそうで、東雲という立地的にも好適な素材なのだとか。


ここで疑問なのが、なぜカスタマイズ車両としてアバルト 595のスタンダード仕様ではなく、最上位のコンペティツォーネを選んだのか、ということ。コンペティツォーネは既にスポーツショックを備えているほか、レコードモンツァマフラーをはじめとしてチューンアップパーツが搭載されている1台。ベーシック仕様と比べて40馬力もアップされた、まさにコンペティツォーネ(競技)という名に恥じぬファクトリーチューニングカーなのです。そんなクルマをイジる人はいるのでしょうか? どうせイジるなら、最も安価なスタンダード仕様なのでは? と思うのですが……。

「いいえ逆です。これはほかの車種でもいえることですが、クルマに手を入れられる方は、最初からスポーツグレードを購入されます。ですから私たちもコンペティツォーネをベース車に選びました。それにスタンダード仕様から、このデモカーと同じ仕様にするより、コンペティツォーネからした方が安上がりだと思います」とのこと。それではA PITオートバックス東雲が手がけたアバルト 595をご紹介しましょう。
デモカーとノーマルの違い

まずエクステリアから。一見、ABARTHと書かれたラジエターカバーとサーキット走行用の牽引フック以外に、ノーマルとの違いを見出すことはできません。


ですが「このラジエターカバーは、EVEデザインの“ロゴインパクト(1万9800円)”を被せてドレスアップしています。そして文字が見えるようにナンバープレートの取り付け位置を、EVEデザイン“ヴァーティカルライザー(8800円)”で上げました」というコダワリっぷり。

さらに「ヘッドライトにフィルム(DYNOshade・ヘッドライト/テールレンズ専用ペイント保護フィルム)を貼っています。ヘッドライトへの飛び石などによる傷や、鳥の糞からの酸性シミ、紫外線などでの劣化から守ってくれます。自己回復機能があるので、万が一フィルムに多少のキズがついても、お湯などで熱を加えると元に戻ります」というから驚き。



天井面を見るとカーボンに換装!? と思いきや「これもヘッドライトと同じメーカーのフィルム(DYNOblack-carbon)です。ここのフィルムは表面がとてもなめらかで光沢があり、しかも自己回復機能までついているのでオススメですよ」とのこと。あとはEVEデザイン“デザインアンテナ SHARK type7(2万5850円)”に変わっています。これは立体駐車場を利用している方にとってはうれしい変更ポイント。というのも、アバルト 595は全高1550mmで高さ制限のある立体駐車場に入ることはできるのですが、バーアンテナがひっかかるのです。シャークフィンならそれが回避できますからね。

リアを見ると、これまた普通。


確かに見比べると……おぉ、確かに違う!「これは元々欧州の細長いナンバーに合わせてあいている穴なんですが、日本仕様は黒いキャップでふさいだだけなんです。ですからボディーカラーと同色にしました。ちなみに、このキャップはEVEデザイン“カラードットキャップ(6380円)”で、店舗で販売していますよ」なのだそう。


「あと、マフラーがHKSのものに変わっています」というので見ると、確かにテールエンドパイプにチタンの焼き色が! って、ノーマルのコンペティツォーネとよく見ないと違いがワカラナイような……。しかも同じ左右4本出しだし。「何を言っているんですか! これの音がイイんですよ」とのこと。こちらについては後ほど。

このように、外観はあまりモディファイされていないA PITオートバックス東雲のアバルト 595。ですが、走りには自信アリ! と森田さんは力説します。

スタンダード仕様のアバルト 595に乗った時の唯さんの評価は、「面白いクルマですけれど……パワーがもっとあればいいなと思います」というもの。それでもベース車となるFIAT 500に比べればパワーはあるわけで、普通に走るには十分すぎるのですが、八方ヶ原で鍛えたMT娘には物足りないご様子。唯さんに試乗をお願いしているのは、単にMT車が運転できるからではありません。ガチでぶん回す御仁だからお願いしているのです!

ということで、40馬力アップのアバルト 595 コンペティツォーネに触れた唯さんは「全然違う! コッチでしょ!」と笑顔。「パワーがあるって楽しいですね! それに排気音が全然違いますね」と、レコードモンツァマフラーの排気音に大満足! その一方で「これ、乗り心地が硬すぎません? というか、シートも硬すぎる」と違和感を覚えたようです。

さらに唯さん的に不満だったのが、お借りしたクルマがATだったこと。「このAT、ギクシャクするんですけれど、大丈夫なんですか?」というわけです。これはいわゆるDCTではなく、シングルクラッチだから。

こうして戻ってきたところで、森田さんにコンペティツォーネ評をご報告。「そうなんですよ。ですのでサスペンションを街乗りでもサーキットでも楽しめるように、HKSの車高調に変えて、セッティングをバッチリ出しています」


併せてホイールはTWSの鍛造にして軽量化。これで足回りはバッチリと森田さん。ちなみに普段はADVANのA052を履いているとのことですが、「今回はガチ比較するということで純正採用のミシュランに履き替えています」とのこと。



「もちろんエンジン回りにも手を入れています。



排気系はHKSに変更。標準のレコードモンツァマフラーと違い、低回転時は静か、上は最高に音がイイんです!」と力説される森田さん。「そして水温がある程度上がってきたら、3,000回転以上でバルブが開くようになっています」とのこと。

「あとCPUも変更していますね。ブーストとかアクセルのツキとかを細かくマップを作りこみました」なのだとか。その結果「最終仕様を測ってはいませんが、200馬力オーバーは出ていますね」というから驚き。「筑波サーキットのTC2000だと、コンペティツォーネが1分10秒台ですが、このクルマは1分6秒台に入っています。もう少し煮詰めれば5秒後半は見えてきそうですね。ですが、その先はタービン交換とかしないと無理でしょう」とのこと。実際220馬力より上を目指すにはタービン交換が必須だそうで、森田さんもデモカーのタービン交換を考えているそうです。


ちなみに室内は至って普通。ロールゲージはおろか、シートすら変えていません。「実際、筑波を走った時はシートを変更しましたが、その程度ですね」とのこと。あとはステアリングボスを入れてハンドルの位置がドライバー側に寄せたくらいです。

気になるお値段ですが、部品代だけで150万円前後。これに工賃やらアライメント費用などが加わりますので、ざっくり200万円といったところでしょうか。アバルト 595 コンペティツォーネが約400万円のクルマですので、デモカー総額は600万円前後となります。「600万円のアバルト……」と言葉を失ってしまう唯さん。はたして600万円の価値はあるのか? 実走です!
街乗りで大人しく
踏めば走りは圧倒的に違う!

「全然違う! 乗り心地は絶対にコッチがイイ」というのが唯さんの第一声。確かに硬いのですが、コンペティツォーネで感じた「ガチガチ」「ポンポン跳ねる」という感覚はかなり抑えられています。これなら街乗りでもできそう。「あと、さっきはエンジンの回転数が低い時から凄い音がしていましたけれど、こっちはそうでもないですね。だから街乗りでも気兼ねなく乗れそうですね」と唯さん。森田さんイチ推しのHKSのマフラーの音も、高回転で官能的な響き。「凄い! この音イイ!」と大絶賛です。「レコードモンツァマフラーも凄い音でしたけれど、あちらが低音に重きをおいているのに対して、HKSは上に抜ける音がしますね」とのこと。

なによりMT車ということで「やっぱりコッチですよ!」と、エンジンをブン回しはじめる唯さん。「確かにパワーとレスポンスが段違いです。普段乗りでここまで必要なのかというと疑問ですけれど、レスポンスの良さは絶対にこっちですよね。とにかく楽しい!」というわけで、眠そうだった目はパッチリ開いて、ブンブンパーティー。

スタンダード仕様、そしてコンペティツォーネの両方を乗っていながら「何をもってアバルトらしい」と表現するのは正直難しいのですが、「アバルト=楽しい」とするのなら、A PITオートバックス東雲チューンのアバルト 595は、ちゃんとアバルトらしさを残した1台と断言できます。「日常的な使い勝手の中に、気持ちよさをプラス。それでいてサーキットで速いってイイですね」とブンブンパーティー開催中の唯さんはニコニコしながら語ります。「不満や物足りなさは全然ありませんね。イイじゃないですか!」と唯さん大絶賛。その笑顔に嘘偽りナシでした。ただ「ステアリングボスを入れている都合、ウインカー等の操作がやりづらかったですね。不満はその程度ですよホント」とのこと。

そんなA PITオートバックス東雲チューンのアバルト 595。A PITオートバックス東雲以外でも、この仕様にすることは可能なのでしょうか。カーライフアドバイザーの森田さんは「基本的にウチのみです。ですが、近くのオートバックスでご相談いただければと思います。できること、できないことがありますので」とのこと。興味がある方は、ぜひオートバックスに尋ねてみてはいかがでしょう。

最後に「あと、これはいまだ商品化していないのですが」と給油口を開けると……青いビスが目に飛び込んできました。青が好きな唯さんは「なにこれ、カワイイ!」と興味津々。「アバルトの給油口まわりのネジはさびやすいですよ。チタンボルトを作ってみました」なのだとか。まだ値段は決まっていないそうですが、販売する予定があるみたいです。
このA PIT オートバックス東雲のアバルト 595デモカーは、2022年1月14~16日まで幕張メッセで開催予定の東京オートサロン2022のオートバックスブースで展示される予定です。ホットハッチ好きの方は是非チェックしてみてはいかがでしょう? ホント、このクルマ楽しいですよ!
■関連サイト
モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

栃木県出身10月5日生まれ。2020年に小林唯叶としてモデルデビュー。2020年シーズンのSUPER GT「マッハ車検GAL」をはじめ、SUPER FORMULA、スーパー耐久シリーズのレースクイーンとして活躍。2021年4月の芸能事務所プラチナム・プロダクションへの移籍に伴い新唯に改名。現在ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技の勉強中。