「鍵」はいつの間にか電子化されてしまい、いまやネットではNFTバブルがどうのというご時世です。しかし納車の醍醐味は、やはり物理的な鍵を受け取ること。
四半世紀ぶりに中古車を買った情報2022、私は四本淑三です。今回の話題の中心と致しますのは、先週納車されたSJ5フォレスターとその第一印象。冬の北海道で生きる必要から、やむを得ず手配したような5年落ち中古車ですが、これが来てみるとまあうれしい楽しい。
なにしろ人生初SUV、人生初スバル、人生初水平対向エンジンでありまして、目にするもの、耳に入る音、すべてが新鮮。
ただ、中古車は新車と違って、一台一台状態が違うもの。受け取った直後からなにかが起こります。過去にも交通量が多く狭い鶴川街道でいきなりエンジンが止まる、真夏の渋滞した地下駐車場のスロープでバッテリーが死んで灼熱地獄に置かれる、その他、様々な経験をいたしました。
もっとも国産のディーラー物件でそんなことはないでしょうが、舐めてはいけません。2017年型のスバル・フォレスターEyeSight2.0i-Lはどんな感じだったのかを、ここに記すものであります。
営業車だった前世とのしがらみを断つ
車両受け取り時の走行距離計は5万3648km。ディーラーの駐車場を出て走り始めますと、まず喧しい。
まるで崖っぷち候補の選挙カーのように「SDカードが入っていません!SDカードが入っていません!」と連呼するドライブレコーダー。アクセルを踏むと「キュウ ハッシンデス アンゼンナ ウンテンヲ ココロガケテ クダサイ」などと抜かしやがるカーナビ。そうした外様ディバイスだけでなく、メーカー標準の車線逸脱警報まで常にピーピー。
ええい、やかましいや! てめえら人間じゃねえ! 叩っ斬ってやるしかありません。
まず、このフォレスターの前世は営業車だったようです。やかましいドライブレコーダーはエルモの「THD-H1100」という業務用通信機で、速度超過や危険運転があれば管理者に通知し、その際に撮影された動画をネット越しに管理者が確認できるというもの。
車両運行管理者にとっては便利なシステムですが、晴れて自由の身となったフォレスターですから、そんなディストピア的運用から解き放ってやらねばなりません。

ぶちっ。
次は急発進がどうのと小舅のようにうるさいカーナビですが、これも三菱の「NR-MZ20」というパイオニアOEMの業務用機でした。私はバックカメラ用のモニターと、Bluetooth対応ハンズフリーフォンとして使うだけなので、このような音声には黙ってもらいます。

ピピピピピ。

それにしても2DINユニットの取り付け位置と角度が絶妙に最悪で、日が差し込むとモニターの画面が見えません。ここはスバルさんにしては抜かりましたな。適当なバイザーを探して上を覆いたいところです。

最後に車線逸脱警報ですが、解除ボタンがなかなか見当たりませんでした。ステアリング右のレーンキープアシストのボタンを長押ししたり、連打したりしても反応なし。なんじゃこれはと背もたれに寄りかかって斜め上を見ると、まだ上にボタンがある。

おっしゃれだなー、スバル。これを押して解除しておけば、エンジンを切っても設定としてキープされるようです。
激安燃料添加剤を試す
車内が静まり返ったところで、次は給油です。納車後のクルマは、家に帰れる程度のガソリンしか入っておりません。
ノンターボのSJ5はレギュラー仕様で、タンク容量は60リッター。セルフスタンドでオートストップが効くまでに飲み込んだガソリンは52リッター。
おっと、その前に儀式があります。中古車にはワコーズのフューエルワンを入れるのが私のルーティンでした。皆様ご存知の通り、ガソリンタンクから燃焼室までを洗浄する添加剤であります。このフォレスターは直噴ではなくインジェクターですから、バルブ清浄効果も期待できるはず。なにしろ水平対向エンジンで、プラグを外して燃焼室内を確認するのも容易ではありません。だから、おまじないとしても入れておきたい。

ところが1本1200円ほどだったフューエルワンも、今は値上がりして2000円ほど。そこで同じポリエーテルアミンが主成分というエーゼット「FCR-062」を試してみました。容量はフューエルワンの200mlに対し、300mlボトル入りで1300円。
問題は300mlボトルの半量を入れるのが難しいこと。次回からスケールかシリンジを使って臨みたいところです。
素晴らしい位置にあるアイドリングストップ解除ボタン

走り出す前に、タイヤの空気圧を調整します。納車直後はエア抜けを考慮し規定圧より多めに入っているのが普通で、今回も前後輪とも250kPaでした。そこで指定空気圧の前輪210kPa、後輪200kPaに調整。かなり跳ね気味だった乗り心地も、これで落ち着いた感じに。
装着されていたタイヤはグッドイヤーの「エフィシェントグリップ RVF02」。ミニバンやSUVなど、背の高いクルマ向けのタイヤで、純正サイズの225/60R17でした。製造番号は「X0622」で今年第6週、2月半ばの製造ですから、ほぼ新品と言えるでしょう。
ではエンジンを始動してギアをドライブへ……入れる前に、まずアイドリングストップを止めたい。中古車でそれなりにバッテリーも弱っているはずですから、セルモーターが回るたびにバッテリーの寿命が削られる気がして私は怖い。いつもの山坂道の途中で休憩する。再始動不能になる。バッテリーが上がって開けていた窓が閉まらない。そこに迫り来るヒグマの親子。私の寿命も縮まりそうです。

そのアイドリングストップ解除ボタンが鎮座するのは、センターコンソールの一番よい場所、ギアセレクター前。ですから右手でキーを回し、左手をギアとパーキングブレーキへ伸ばす前に、このボタンを押すよう習慣づければ良いだけ。スバルさんありがとう。
と言いつつ、きっとすぐに忘れてしまうので、恒常的にオフにする方法を考えなければならないでしょう。バッテリーの電圧が規定値より低ければアイドリングストップも効かないはずですが、うっかり解除ボタンを押し忘れてアイドリングストップの動作確認をしてしまいました。
そして、へえええ、ほおおお、などと感心しながら500kmちょっと走ってきました。好ましいです。とても好ましいです、このクルマ。何がどう好ましいかはまたこんど。