2022年のSUPER GT 第6戦が9月17~18日に行なわれ、冨林勇佑/平木玲次が駆る5号車「マッハ車検AIRバスター MC86 マッハ号」は、GT300クラス21位となった。
今大会の舞台は、東北・宮城県にあるスポーツランドSUGO。

しかし、第3戦鈴鹿で2位表彰台を獲得した5号車は、45kgのサクセスウェイトを背負っており、決して楽な戦いはできない状況。それでも、第4戦富士、第5戦鈴鹿と歯車が噛み合わなかったレースが続いていたこともあり、この東北の地で上位入賞を目指した。
予選は奮わず、まさかの車検不合格
だが、土曜日の公式練習では思うようにタイムを伸ばせず。GT300クラス全27台中、25位という結果に終わった。さらに公式練習の終盤からFCYテストでは、小さなトラブルが発生。なかなか調子の良いところを発揮できないとあって、冨林、平木ともに元気がない様子だったが、コロナ禍で制限が続いていたイベント関係もシーズン中盤に入って復活し、ピットビューイングではソーシャルディスタンスをとった形で多くのファンと触れ合い、少なからずパワーをもらっている様子だった。
そんな中で迎えた公式予選。Q1は今回も冨林が担当した。GT300クラスは全体を2組に分けて予選Q1を行なう。その組み分けは前戦までのランキング順で決められるのだが、5号車が今回入ることになったA組には、ランキング首位の56号車日産GT-Rをはじめ、昨年王者の61号車スバルBRZ、52号車トヨタGRスープラGTに65号車メルセデスAMG GT3など、このクラスで強豪と言われるチーム・マシンが揃っていた。


「今回のA組はかなり激戦区なんですよね……」と冨林も大会前は不安そうな表情を見せていたが、逆にプレッシャーを感じることなく伸び伸びとやれると決意を固めてマシンに乗り込み、ピットを後にした。
しっかりとタイヤを温めて計測3周目でアタックを開始。
残り時間を考えると、この1周がラストチャンスとなったが、自己ベストタイムを更新して最終コーナーを駆け上がり、フィニッシュラインを通過。1分19秒111をマークした。しかし、Q2進出ラインとなる8番手には、わずか0.1秒届かずQ1敗退となった。
「逆に、あの(コースオフした)ラップで行き過ぎてしまったからこそ、次の周は置きに行かずに思い切った走りはしようと思っていました。Q2には通れなかったのは残念ですし、申し訳ないんですけど、他のJAF-GT車両のヨコハマタイヤ勢よりはタイムは早かったですし、総合で18番手からなら、まだチャンスはあると思っています」と冨林は、前向きな表情を見せていた。
しかし、日が暮れようとした頃、まさかの通知が届く。5号車の再車検不合格の通知だ。

マザーシャシーは、規定(2022GTAブルテンNo.48-T)により燃料タンクの容量が110リットル以下と定められている。だが、Q1終了後に再車検を受けた結果、タンク容量が規定より1リットル多かったため、予選タイムがすべて抹消されることとなったのだ。これにより、5号車は18番手スタートだったはずが一転して、最後列からのスタートを強いられた。
レース前にはマシントラブルも!
雨に翻弄された決勝レース
迎えた日曜の決勝レース。前日のタイム抹消というショックは完全に消えてはいなかったが、気を取り直して、20分間のウォームアップに臨み、決勝用のセッティング確認を行なう予定だった。
まずマシンに乗り込んだのは、決勝でスタートスティントを務める平木だったが、ウォームアップ2周目に入ってペースを上げようとしたところで、突然トラブルが起きた。アクセル全開で最終コーナーを走行している最中に、いきなり車両の電源がすべて落ちるトラブルが発生。コックピットのディスプレーをはじめ、各電気系統も全部停止。パワステの機能も突然失われ、コントロール不能になりかけたが、平木が必死でマシンを制御し、なんとかクラッシュは回避された。

マシンはすぐにピットに戻され、チーム総動員で原因究明を開始。なんとかエンジンが再始動し、スターティンググリッドについた。それでも、2人のドライバーの不安を隠しきれない様子。「なんとかレースを完走して、次戦につなげたい」その想いで、決勝レースに挑んだ。

そして迎えた決勝レース。朝の段階では青空が広がっていたが、スタート時刻を迎えるころには、どんよりと黒い雲が上空を覆っていた。


最後尾からスタートした5号車。
4周目にレースが再開され、5号車は引き続き上位を目指したが、10周目を過ぎたあたりから雨が降り始め、あっという間に路面はウエットコンディションとなった。この状況を見て、各マシンが続々とピットインしウエットタイヤに交換。5号車も18周目を終えたところでピットインし、ウエットタイヤに交換した。
しかし、ウエット路面となると、5号車の良さをなかなか発揮できず苦戦。雨脚も落ち着いて、ウエットタイヤの消耗が進んだ25周目に再びピットインし、冨林に交代するとともに新しいウエットタイヤに交換した。


ここからは完全に我慢の展開となるのだが、冨林は粘り強く走行。レース終盤には雨が止んで路面が乾き始めたのをみて、スリックタイヤに交換。目まぐるしく天候が変わる難しいレースとなったが、冨林は目立ったミスをせずに、最後まで走り抜き、GT300クラス21位でチェッカーを受けた。
冨林選手「色々ありましたけど、ひとまず完走できて良かったです。ただ、僕たちとしては雨が降ってくると苦しいところがありました。

平木選手「ウォームアップのトラブルがちゃんと直っているかわからなくて、不安な中でのスタートでしたけど、症状としては何も起こらずにレースを進められました。ただ、序盤からすごく雨が降ってきましたが、今回僕たちが持ってきていたタイヤがソフト目のものだったので、あまり早くタイヤを換えてしまうと、途中から苦しくなるだろうを予想しました。なんとかスリックタイヤで粘ろうとしましたが、グリップ感がなくてストレートでもスピンしそうになるくらいでした。その後、ウエットタイヤに交換しましたが、予想通り途中から苦しくなりました。(雨などで)グリップが低い中でのレースというのが、すごい厳しいものがあるので、上位陣と同じように速く走ることができませんでした。次はチームの地元戦になるので、頭を切り替えて、ここ2~3戦のペース不足をなんとか改善して、また上位で戦えるようにチームと一緒に頑張りたいです」

なお、GT300のトップ争いは天候に翻弄されて各チームとも大混乱となったが、その中でレース前半に光る走りを見せたのが、7号車のBMW M4 GT3。ニュルブルクリンク24時間レースなど、世界屈指の過酷な耐久レースで培った経験が存分に活かされ、雨の中をスリックタイヤで激走し、一時はトップを快走した。


しかし、目まぐるしく変わる天候に7号車もピット回数が増えることになり、最終的に表彰台圏外へ交代。代わってトップに立った2号車 GR86 GTは、レース中盤はウエットタイヤで粘り強く走り続けたことが功を奏し、2位以下に1周以上の差をつけて、今期初優勝を飾った。



雨にも負けないレースクイーンたち








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