いつかは“QE”
以前、アスキーグルメで日本が誇る客船「にっぽん丸」のクルーズを紹介したのが2020年の11月。あれから2年余りが過ぎた今も、日本の客船は“元気に”商業航海を続けています。感染抑制対策のために中断していた、外国船籍客船による日本発着クルーズも2023年3月から再開する見込みです。
その中の1隻が英国船会社の老舗であるキュナードに所属する豪華客船「クイーン・エリザベス」です。クイーン・エリザベスは世界で最も有名な客船の1隻で、現在運航中の船で3代目となります。日本寄港自体は2014年からですが、2017年からは日本発着クルーズを定期的に実施していたので、多くの日本人から親しまれています。
そんなクイーン・エリザベスも感染抑制対策のため、商業航海は17ヵ月の中断を余儀なくされておりました。しかし、2021年8月から英国発着のクルーズを再開。2023年3月からは日本発着クルーズを実施する予定になっています。
今回筆者は幸運なことに、日本就航直前に実施しているオーストラリアクルーズのシドニーからメルボルンに向かう航路に乗船する機会に恵まれました。そんなわけで、「歴史と格式を誇る英国豪華客船の正統派朝昼晩メシ“+α”」を堪能する食い倒れ船旅をご紹介しましょう!




今回の船旅は2022年12月13日18時にシドニーを出港し、翌14日は終日航海、翌々15日の朝にメルボルンに入港します。出港は夕方ですが乗船はお昼から始まります。出港までまだ6時間近く。いきなり暇を持て余す……なぁーんてことをクイーン・エリザベスはさせません。

実を言うと今回乗船する航路は長期クルーズの一部区間だけなので、クイーン・エリザベスはすでに“営業中”なのです。第9デッキ(建物でいうところの9階に相当)の中央から後方にかけた左舷と右舷に分かれて設けられているブッフェスタイルの「Lido Restaurant」や、その後端にある「Lido Bar」で軽食が提供されていました。 乗船手続きでランチを食べそびれていたので助かりました。
客室に荷物を置いてひと息ついた船客たちは、参加必須の避難訓練を終えた後、早速駆けつけてシドニー港の景色を楽しみながら舌鼓。キュナードオリジナルのクラフトビールやベイクドポテト、ピザ、サンドイッチ、ペストリーなどをいただきます。キュナードオリジナルのクラフトビールは、英国の地ビール醸造会社「ダーク・レボリューション」と提携して2019年に開発したもの。スタウトビールの「Cunard Black」、IPAの「Cunard Red」、ピルスナーの「Cunard Gold」が用意されています。





クラフトビールで喉をうるおし、サンドイッチやペストリーで空腹を満たしつつシドニー名物のオペラハウスやハーバーブリッジ、港を行きかうヨットや連絡船の姿を楽しんでいたら時刻は17時。間もなく出港の時間です。出港の時間が近づくと乗客はデッキに集まって「出港パーティー」が始まります。シャンパンをグラスに注いで、同行者たちと航海の無事を祈りながら飲み干したら、すぐにディナーの始まりです!

出港シーンで最も見ごたえのある「ハーバーブリッジを背景にしたクイーン・エリザベス」をカメラに収めたら、メイン・ダイニングに馳せ参じます。

迫力のシーン!迫力の英国晩餐!
ディナーは第2デッキから第3デッキの後部に設けられたレストラン。いや、せっかくの船旅ですからダイニングとしゃれこみましょう。というわけで、メイン・ダイニングの「Britannia Restaurant」に移動。
メニューは前菜から始まってサラダ、スープ、主菜ときてデザート。そして、コーヒーとペストリーで締めくくるコース料理です。前菜は4種類、スープは2種類、主菜は5種類、デザートは5種類のメニューからそれぞれ選びます。料理が供されるWedgwoodのお皿にはキュナードの紋章が金色に輝いていました。






航海初日のディナーで選べた前菜をいくつか紹介しましょう。まずはジビエと鶏肉、豚肉にレーズン、ケイバー、タイムのクラッカーを添えた「Game Poultry and Pork Pie」。

ワイルドマッシュルームのリゾット「Risotto of Mushroom」には、パンチェッタが載っていました。

特別に用意した伝統品種のニンジンをローストした「Roasted Heirloom Carrots」には、生姜とライムがあえてあるとのこと。


初日のディナーで選べたスープの1つ、アスパラガスのブルーテ「Asparagus Veloute」には香草のチャービルがかけられています。ちなみに、ブルーテ(ヴルーテ)とはフランス料理のソースの1つで、小麦粉をバターで炒めたルーをフェメで溶きのばして作るそうです。知らんかったー!

スープで選べたもう1品、牛肉のスープ「Beef Broth」には大麦と野菜も入っていました。

航海初日ディナーの主菜は5種類から選べます。牛肉のパイヤール「Paillard of Beef」にはポートワインのソースがかけられ、ゆでたチェリートマトとブロッコリーとともに英国のブルーチーズ「スティルトン」を添えたタルトタタン(リンゴのパイ菓子)も一緒でした。

豚肉の主菜はポークフィレのベーコン巻き「Medallions of Pork Fillet」です。シェリーマスタードソースがかけられ、マッシュルームのソテーとグラタン風ポテト、茹でたさやいんげんと玉ねぎが添えられています。
「Medallions」はこれまた聞きなれない言葉ですが、英国では一般的な精肉の“形状”です。脂身を削り取って丸くなった姿をMedallionsと呼んでいます。

魚料理の主菜は、タラのグリルとトマトのオルゾーパスタ「Broiled Cod and Cherry Tomato Orzo Pasta」です。セロリピューレとレモンバターソースで味付けされています。
料理にうとい私は「オルゾーパスタってなに?っていうかパスタ見えないんですけど」となりましたが、オルゾーパスタとは短いパスタのこと。マッシュポテトの上にかかったソースに、お米のようなものが見えると思いますが、これがオルゾーパスタなんだとか。

初日ディナーのデザートは5種類から選べました。こちらの温製チェリークラフティタルト「Warm Cherry Clafoutis Tart」には、バニラアイスクリームが載っていました。早く食べないと溶けるるるる。ラズベリーソースのアクセントがきれいです。

こちらはオーソドックスなバニラチーズケーキ「Vanilla Cheesecake」で、たっぷりのバニラクリームにイチゴをトッピング。ストロベリーソースと相まってこちらも美しいー。

こちらもデザートといえば定番のアイスクリーム「Choice of Ice Creams」で、コーヒーアイスクリームとストロベリーアイスクリームにマンゴーシャーベットを加えた“豪華三点盛り”。

タイタニック号を助けにいった船長のカクテル
英国正統コースディナーを平らげてさすがにお腹がはちきれそうです。ここはひとつ、船内劇場の「Royal Court Theatre」のショーを鑑賞しつつ胃袋の消化を待ちましょう。
Royal Court Theatreは船首部分の第1デッキから第3デッキの3層にわたって設けられた劇場。ステージ奥にはオーケストラピットを備え、劇伴音楽を生演奏で聴かせてくれます。

劇場の第3デッキレベルには、通常シートの左右にバルコニーで仕切りを設けたプライベートボックスがあります。この中の右翼にある15番シートは、命名式でエリザベス2世女王が着座した場所として知られています。
プライベートシートは有料ですが、すべての乗客が予約できるとのこと。キュナードスタッフによると「ステージが最もよく見える場所」だそうです。


この日のショーは20時からと22時からの2ステージ制(どちらも同じ演目)。22時からのステージを観終わるとお腹に余裕ができてきました。こういう時、船旅ではラウンジで1杯が定番です。

重厚な雰囲気を醸し出しているこのラウンジの名称である「Commodore」とは、海軍の階級として知っている人も多いかもしれません……。あ、ASCII.jp読者的には「Commodore 64でしょう!」って反応する人も多いかもしれません。
民間のキュナードでは、顕著な業績を残した歴代船長に提督を意味するCommodoreという称号を与えて讃えています。その称号を冠したバーラウンジであるCommodore Clubでは、歴史に残る活躍をした7人のCommodoreをイメージした特別なカクテルを提供しています。その中から、キュナードがオススメする「Punch Romaine a la Carpathia」(パンチ・ロメーヌ・ア・ラ・カルパチア)をいただきます。

このカクテルは名前にもある「Carpathia」(カルパチア)の船長を務めた、アーサー・ロストロン氏をイメージしています。ロストロン氏はCarpathia船長だった1912年、客船タイタニック沈没事故で最初に現場に到着して、たった1隻で救助活動を行い700名以上を救出しました。
Punch Romaine a la Carpathiaは、タイタニックのメニューに記載されていたカクテル「Punch Romaine」(クラッシュド・アイス、シャンパン、白ワイン、シロップ、オレンジジュース、レモンジュース、ホワイト・ラム、オレンジピールで作るカクテル)がベースです。
そこに、オリジナルでアドヴォカート(欧風卵酒みたいなもの)を加えた、甘みがはっきりしたクリーム系のデザートカクテルでした。キュナードの公式レシピによると、アドヴォカート、リモンチェッロ(レモンのリキュール)、クリームシェリー、ライムジュース、マーロウが挙がっています。
ロストロン氏の偉業を振り返りつつ、カクテルと飲み干すとすでに日付が変わっていました。タスマニア海を南下するクイーン・エリザベスが揺れているのは、酔いのせいだけではないようです。今夜はこのあたりで寝ることにしましょう……。ぐぅぅぅぅ。
サマセット・モームはかく語りき
船旅の朝は早い!

夜明け前の海原もですが、正直言ってそれ以上に楽しみにしていたもの。それは早朝から饗される料理の数々です。ブッフェダイニングのLido Restaurantでは、すでに6時半から冷製料理をはじめとする軽食の提供が始まっています。ええ、もちろんお腹は空いていますとも。
南半球のオーストラリアは初夏のはずなんですが、季節外れの寒波がやってきていたらしいです。早朝の海原では、日本から着込んできた防寒具がなかったら厳しい寒さでした。
そんな冷えた身体をコーヒーで温めつつ、オレンジジュースにアップルジュース、グランベリージュースをカラフルに並べて、トーストにハム、サーモン、チーズの「軽食」をいただきます。コンチネンタルスタイルブレックファスト? いやいやこれは朝食にあらず!


オレンジマーマレードの高めの糖分とコーヒーの温かさで生き返ったところで、Lido Restaurantでは7時30分から朝食の提供が始まります。ブッフェスタイルなので、食べたいメニューを自分で好きなだけ取り放題です。もちろん、残さず平らげます。

8時からはメイン・ダイニングのBritannia Restaurantで朝食が始まります。ええ、こちらももちろんいただきます。筆者的にはここまでは“前菜”ですから。なお、Lido Restaurantの朝食もBritannia Restaurantの朝食も、それだけで十分満足できるボリュームです。筆者が食べ過ぎなだけなので、食が普通の方はマネしないほうがよろしいかと存じます……。
こちらはテーブルについて、メニューから注文して給仕を受けるスタイルです。朝食はオープンしている時間内(船内新聞に掲載。今回の航海では8時から9時半まで)であればいつでも入れます。
なお、ディナーは2部制で利用できる時刻が船から指定されますが、キュナードでは「オープンダイニング」という制度を設けており、時間を変更したいなどリクエストがある場合は申し出ることで自由な時間に対応してもらえます。
様々なメニューの中から選んだ朝食は、まさに「キュナードの客船で朝食をいただくならこれでしょう!」と言わんばかりの熱!(というか圧!)を感じさせる「Cunard's Get Up and Go Signature Plate」です。

朝はあまり食欲がない人でも大丈夫なコンチネンタルスタイルとは真逆の、ボリュームたっぷりイングリッシュブレックファストな1皿です。そこには卵料理(料理方法はスクランブルかフライを選択)、イングリッシュベーコン、カンバーランドソーセージ(太くて長いソーセージ)、ハッシュブラウン(ハッシュポテトに似ています)、グリルトマト、マッシュルームソテー、Bury black puddingがモリモリっと載っています。
Bury black puddingは血を固めたソーセージで、わざわざ銘柄指定で記載してあるように、英国で最も有名なブラックプティングメーカーの製品を使用しているそうです。
よ、よ、よ、よぉーし、食べるぞおおおおぉぉぉぉ! ……た、た、た、た、食べたぞおおおおおぉぉぉぉ! ボリューム満点! そして、おいしい! モームさん、あなたの“名言”に従って朝食を3度とりました! え、「違う、そうじゃない」って?※
※編集注:イギリスの小説家、サマセット・モームの名言に「To eat well in England, you should have a breakfast three times a day」(意訳:イギリスでおいしいご飯を食べようと思ったら3食とも朝食にするしかないね)というものがあるそうです。
英国のランチといったらこれでしょう!
船の上というか、海の上というのは不思議なもので、朝食を3度食べてもお昼時になると時間通りにお腹がすきます(編集注:長浜さんが特異体質である可能性もあります)。さあ、楽しいランチの時間です。メイン・ダイニングのBritannia Restaurantでもランチを提供していますが、今日はLido Restaurantのランチブッフェでいただきます。
英国正統派のブッフェレストランですからランチも洋式オンリー……と思いきや、欧州でも和食への関心が高まっているようで、クイーン・エリザベスのブッフェでも和食を提供しています。うーん、お肉が好きなんだけれどお寿司も捨てがたい。どっちを選ぼう……、あ、ここブッフェだった。わっはっはっは。両方ともいただきまーす。

いやー、食べた食べた。ステーキもお寿司もおいしかったです。シャリも日本でいただくお寿司と遜色ないですね。
Lido Restaurantのランチブッフェは11時30分から14時30分までと早めに始まります。ここまでお付き合いいただいた賢明なる読者諸氏は、「ああ、もうわかりました。これからBritannia Restaurantのランチを食べに行くんですね」なんて思われるかもしれません。
しかし、惜しい! お察しの通り、これから“ランチをはしご”しますが、向かう先はBritannia Restaurantではありません。第2デッキ右舷前方にあるラウンジの「Golden Lion」で、ランチの時間に提供しているPub Lunchをいただくのであります。


イギリス旅行のガイドブックでは、必ずと言っていいほど「パブでランチ」をオススメしています。クイーン・エリザベスのラウンジには英国のパブを再現したラウンジとしてGolden Lionがあって、そこでパブランチメニューを提供しています。
白身魚のフライとフライドポテトをふんだんに盛り付けた、「イギリスの居酒屋いやパブのメニューといったらこれ!」と日本でも定番のフィッシュアンドチップスは当然。クイーン・エリザベスに乗船した人から高い人気のチキンマサラカレーも気になるところ。
しかし、今回は「パブといったら働くおっさんたちの憩いの場でしょうー」ということで、なにげにパブメニューの定番かつ“味の指標”にもなるハンバーガーを頼んでみました。



クイーン・エリザベスで本場の“ヌン活”
英国のお昼ご飯といえばパブのランチ。ならば英国のおやつタイムといったら……、そう! アフタヌーンティーですね。日本でも「ヌン活」といった言葉があるように多くの人が関心を寄せている文化ですが、本場英国の歴史と格式を誇る客船でいただくアフタヌーンティーとは、どのような世界なのでしょう。
時刻は14時30分、Golden Lionでパブランチの提供が終了し。そのわずか30分後の15時から第2デッキ中央部にある「Queens Room」でアフタヌーンティーの提供が始まります。

アフタヌーンティーと聞くと、「食べ物がどっさり積まれたお皿のタワー」をイメージしてしまう庶民な筆者です。しかし、クイーン・エリザベスが提供する英国正統派アフタヌーンティーでは、フィンガーサンドイッチ、ペストリー、次いでスコーンと、順を追ってトレーで運ばれてお皿にサーブされる、たっぷり時間をかけて提供されるコース料理と同じような感覚で楽しめました。





クイーン・エリザベスのアフタヌーンティーは、15時ごろから16時ごろまで。おやつにはちょうどいい時間ですね。いただいたボリュームはとても「おやつ」には収まらないものでしたが、夕食までゆっくり消化しましょう。と思いきや、17時半にはもうディナーが始まるのです。
タキシードとドレスが集うガラ・ディナー
ちなみに、今回の航海では2日目の夕方からドレスコードとして「Gala Evening Attire」が指定されています。Cunardが用意した日本語版ディリープログラムでは「男性はタキシード、ディナージャケット、スーツにネクタイ。女性はイブニング又はカクテルドレス、お着物などの正装」と説明されています。
うおおおお! 自分の結婚式以外で着ることはないと思っていたタキシードですよ。小心者の私はダークスーツにしてしまいましたが、男性船客のほとんどはタキシードに身を包んでいます。うーん、せっかくの機会だから着てみたかったなー。でも持っていないし。という場合でも船内のレンタルサービスも利用できます。
そんなタキシードやドレスを身にまとった文字通りの紳士淑女たちが、それぞれのダイニングに集まってガラ・ディナーが始まります。ガラ・ディナーも4種類の前菜、スープは2種類、主菜は5種類、デザートは5種類のメニューからそれぞれ1つを選びます。
前菜で提供されたPulled Beef Risottoは、煮込んで柔らかくなった塩漬け牛肉をほぐしたものとウズラのポーチドエッグをそれぞれ揚げたものに、ホースラディッシュと粒マスタードのソースをつけていただきます。

Prosciutto de Parmaは文字通り、パルマで作られたプロシュート(皮をつけたまま塩漬けにした豚もも肉を燻製にした生ハム)に、イチジクと熟成したバルサミコシロップのソースがかけられています。お皿にはイタリアでよく食されている、フェンネルビスケットも添えてありました。

Roasted Peppersはゆでて輪切りにした白カブをお皿に敷いて、その上にローストしたパプリカと赤キャベツを細切りにしたものを盛り付け。そして、コリアンダーを散らしてからピーナッツドレッシングを振りかけています。

スープはDuck Consomme。クリーンなスープで、シイタケのスライスがふんだんに添えられていました。

メインディッシュで用意されているメニューの1つがPoached Fillets of Lemon Sole。切り身を蒸し焼きにしたカレイにゆでた小エビ、アスパラガスとほうれん草を添えて、パセリとトリュフのソースでいただきます。

Hasselback Courgetteはズッキーニに細かい切れ目を入れて焼き上げる、スウェーデン由来の家庭料理です。これにバタービーンズとゴマのピューレ、ナッツのグラノーラを添えています。

Spring Lamb Rumpはラムのランプ肉の煮込みに、ポテトの裏ごしとベーコン、レタスを添えたもの。Spring Lambとは、春先に生まれて芽吹き始めた栄養価の高い牧草で育った子羊の肉を指します。ちょうど南半球では年末から春先にかけて出荷される、地元産の旬の食材を使った特別なメニューといえるでしょう。

Chicken Escalopeは鶏肉の薄切り肉を叩いて、さらに薄く伸ばしてフライにしたもの。これにセロリのピューレとからし菜を添えて、レモンのビネグレットを振りかけて味付けしていました。





クイーン・ヴィクトリアのジンは地中海の香りがした
さあ、食べた食べた。今宵もいい晩メシでした。今夜の“食後の1杯”はどこで楽しみましょうか。クイーン・エリザベスの船内では、正装した紳士淑女たちがQueens Roomでダンスパーティーに興じています。夕方のアフタヌーン・ティーを楽しんだQueens Roomは、本場英国のボールルームの内装にマッチしていて、舞踏会の会場としても利用されています。たぶんそちらが本来の利用目的かもしれません。
英国社交界の雰囲気を体験できる機会とあって、クイーン・エリザベスの航海では人気の高い催しですが、静かに過ごしたい筆者は、第3デッキにあるラウンジ「Midships Bar」に向かいます。ここではCunardオリジナルのジンを提供しているのです。

これらのジンはクイーン・エリザベスの運航会社であるキュナードと、英国エジンバラにあるサマーホール蒸溜所の協業で製造しています。なんでもサマーホール蒸溜所の共同創設者である、マーカス・ピッカリング氏の大叔父がキュナードで船長を務めていたという縁からとのこと。
現在キュナードが所有している3隻の客船、「クイーン・エリザベス」に「クイーン・ヴィクトリア」、「クイーン・メリー2」のそれぞれをイメージしたクラフトジンがあります。そして、それらをベースにしたオリジナルカクテルが楽しめます。
「クイーン・ヴィクトリア - 地中海の味わい」のジンをベースにしたカクテルは、ブラッドオレンジやレモンマートル、オリーブの葉など地中海を思わせるボタニカルに、トニックウォーターとドライアップル、オレンジ、タイムを組み合わせています。

いやー、今宵も呑んだ呑んだ酔った酔った。おやすみなさいー……。
最後の朝!フルブレックファストに挑む!!
船旅の朝は早い!!
現地時間の6時には目的地のメルボルン港がもう目の前です。昨晩からの荒天が残っていて、天候は雨まじりのくもり。そして、南半球はもうすぐ夏のはずなのに今日も寒い!

船は目的港につきましたが、下船まではまだ時間があります。冷え切った身体を朝食で温めましょう。今日は最初からBritannia Restaurantに向かいます。なぜなら、昨日の朝食で心残りがあったから。「ええっ!あれだけ食べて何が足りないのですか!」、とお思いの読者諸氏もおられるかもしれません。それはごもっともな質問です。
しかし、昨日の朝、Cunard's Get Up and Go Signature Plateをわっしわっしと食べている筆者の隣のテーブルで、おいしそうなフルーツの盛り合わせを食しているご婦人がいらっしゃったんですね。これがまあとってもおいしそうでして……。そういえば、フルブレックファストってシリアルやフルーツや生ジュースが付きものじゃないですか。
ゆえに、「よぉーし、今日こそ英国が誇る“フル”ブレックファストに挑戦してみよううううぅぅぅ。」、となったわけです。そして、英国の朝食といったらKipperこと塩漬けニシンの燻製ですが、こちらも食べ損ねていたことを思い出したのです。しかし、昨日の朝食メニューにはあったのに今朝はない。ならば今日もモリモリなCunard's Get Up and Go Signature Plateに挑みましょう!
フルブレックファストのスタートは新鮮なChilled Juiceから。私は定番のオレンジジュースにしましたが、グレープフルーツ、グランベリー、アップル、プルーン、パイナップルなどの果物系だけではなく、トマトにV8野菜ジュース、さらには日替わりのスムージーまで選べます。

メニューに「Fresh from On Board Bakery」とあるように、船ではそれぞれ自前でパンを焼いて提供しています。焼きたてなので船のパンはおいしい、という定説が船旅フリークの間には浸透しております。デニッシュペストリーからクロワッサン、ベーグル、バナナブレッドと多彩なパンを用意しています。

続いて、シリアルは温製または冷製、オートミールかCream Of Wheat(それぞれドライフルーツ、シード、蜂蜜を添えられます)、ミューズリーが選べます。銘柄もAlpenやWeetabixと、英国で親しまれているメーカーが指定できます。

フルーツコンポートは見た目にきれいな「Compote of Poached Fruits」を選びました。このほかにフルーツサラダ、スライスフルーツ、フルーツヨーグルト、プレーンヨーグルトを用意しています。

2度目のCunard's Get Up and Go Signature Plate。オムレットもパンケーキも興味あるんですけれどねえ……、と食べ終わってからメニューをよーく見たら、サイドオーダーを組み合わせれば、すべての料理でCunard's Get Up and Go Signature Plateと同等の内容になることがわかりました。

私はクイーン・エリザベスを最後の最後まで食べつくしたぞうぅぅぅぅ。 こうしてはちきれんばかりのお腹をさすりながら船をあとにしたのでした。
航空チケットを船代にすれば日本発着クルーズも夢じゃない
そして、こんな食道楽クルーズを見せつけられ、「そんな手の届かない別世界の話を見せられても聞かされても腹が膨らむというよりは腹が立つんですけれど」とお怒りのみなさん、ちょっとお待ちを。
豪華客船のクルーズ、と聞いただけで「むちゃくちゃ高額で富裕層限定の話」、とイメージしてしまうのはやむを得ないところ。しかし、実は客室と航路を選べば意外とお手頃価格でクイーン・エリザベスの船旅ができてしまうのです。
例えば、キュナードの公式Webページからリンクしてある、日本からオンライン予約が可能なWebサイト「iCruise」にアクセスしてみてください。クイーン・エリザベスで利用できる最短の2泊クルーズを探してみると、2024年のシドニー-メルボルンクルーズで4万円から。3泊でも2024年のメルボルン-シドニーのバーニー寄港クルーズで6万5000円からになります。
「そんなこと言っても、お料理はお高いんでしょうー?」と思ったそこのあなた。何を隠そう、客船のお食事代は「船賃に含まれている」のです! ゆえに、お船でいただいたお食事代はすべて「無料」です(ただし、飲み物と一部の特別メニューは有料)。
先ほど紹介した2泊クルーズなら、4万円で英国の歴史と格式を誇る最上級のホテル(=船)に宿泊して、そのレストランで朝昼晩+αの食事を楽しめるのです。おおおおおおおおおお。
「でも、まずシドニーに行かなくちゃだから、その航空券チケットが高そう……」と思われる方もいらっしゃりことでしょう。たしかに、2023年1月時点における羽田とシドニーの往復航空チケット代は“格安”なものでも、20万円前後ほどかかります。
しかし、その金額を丸々“船代”に使えるとしたら、クイーン・エリザベスの日本発着クルーズのほうが安かったりします。例えば、2023年4月の横浜発着10日間クルーズなら22万5000円からです。
というわけで、クイーン・エリザベスで洋上の英国を腹いっぱい堪能するのも、イマドキの旅行として十分あり得る選択肢ではないかと思うのでありました。
■関連サイト