Honda設立75周年にバタバタが復活!?
本田宗一郎もビックリの「SmaChari(スマチャリ)」
Hondaは、自転車に取り付ける電動アシストユニットと、それに連動するスマートフォンアプリで、様々な自転車を電動アシスト化・コネクテッド化できるサービス「SmaChari(スマチャリ)」を発表。2023年9月にSmaChari搭載自転車「REAL ACTIVE-e」(22万円、予価)を全国33ヵ所のワイズロード(ワイ・インターナショナル)で発売予定であることを明らかにしました。
Hondaが再び電動アシスト付き自転車に参戦か!? と思いますが、そうではありません。
電動アシスト自転車に乗りたいけど
乗れないのはなぜだ?




開発したのは、本田技術研究所ソリューションシステム開発センターの野村真成さん。野村さんによると、日本には自転車が約7000万台あるといい、なかでも10代(若年層)の利用者が高いと語ります。そして、10代の利用は主に自転車通学によるもので、自転車通学をする高校生は全高校生のうちの56%にあたる約180万人、そのうち通学経路に坂道(2km以内で50m以上の高低差)がある学校は、全高校の45%にあたる2316校あるそうです。それゆえ、電動アシスト自転車を欲しいと思う高校生は48%にのぼるのだとか。

ですが、電動アシスト自転車の普及率をみると、他の年代とくらべ、10代と20代の普及率は低いのです。その理由はなぜか? 野村さんは約1年かけてリサーチしました。その結果、電動自転車通学に対する現状の課題として、学生側からは「自分好みの電動自転車がなく、しかも値段が高い」、家族からは「盗まれるんじゃないかと心配」、販売店からは「電動アシスト自転車と普通の自転車の両方の在庫を持つのは難しい」、学校側からは「盗難や事故の対策」といった面でハードルがあることがわかってきたのだそうです。

そこで野村さんは思いました。クルマが進化して、多様化・電動化・コネクテッド化をしていっているのだから、自転車も同じなのではないかと。つまり自転車を電動・コネクテッド化すれば、電動アシスト自転車が普及しやすくなるのではないか、と。

そこで考え出されたのが、既存の自転車に電動化ユニットを取り付け、スマホアプリで制御するシステムです。なぜスマホと電動化ユニットをつなげるのかというと、これがスマホを電動化ユニットのコントローラーと車両の鍵として使うから。
専用の電動化ユニットを
既存の自転車に取り付けるだけ


では、SmaChari搭載自転車「REAL ACTIVE-e」を見ながら、システムを解説しましょう。まず車両そのものは、日本のバイクブランドKohdaabloomの「REAL ACTIVE」という市販車。
これなら販売店は1台の自転車を必要に応じて電動アシスト車に組み替えればよいのですから、在庫低減につながります。また、モーターユニットに対応する車種が増えれば、ユーザーニーズに応えられるというわけです。





バッテリーとモーターの重量は全体で5kg。バッテリーは24V/10Ahで、モーター出力は250W。このスペックは一般的な電動アシスト自転車のスペックを上回るのだそうです。つなみに電動アシストは法規により24km/hまでで、それ以上の速度は人力。フル充電までかかる時間は、約5時間とのこと。
バッテリーユニットにはUSB Type-Aコネクターが設けられており、スマホの充電を可能としています。このモーターとバッテリーはHonda製かとおもいきや、海外製で既に販売しているもので、Honda製ではないとのこと。ですのでHondaのロゴは入りません。Hondaが提供するのは、このスマホアプリと、それに付随するサービスで、車両の販売・メンテナンスは、ワイズロードが担当します。

ワイズロードは全国に33店舗を構える自転車販売専門店としては規模が大きいものの、その多くは首都圏に集中しているのが実情。電動アシスト自転車を必要とするのは、地方の方だと思いますので、その方に向けては? とワイ・インターナショナル広報の青木さんに尋ねたところ、ネット通販は現在検討中とのこと。
さらにHondaの2輪車販売店「Honda Dream(ホンダ ドリーム)」と「Honda Commuter(ホンダ コミューター)」の5500拠点(2017年1月時点)でも販売すれば、一気に販売店舗が増えますし、自動二輪の訴求につながるのでは? すると、それは青木さんも検討しているとのことでした。
ホンダが担当するのはスマホアプリ
AIで街中の状況に合わせてアシストする


話を電動アシスト自転車に戻しましょう。専用アプリをインストールしたスマホ(iOS/Android)とバッテリーホルダー内のコントローラーをBluetoothでペアリングするのみ。スマホはNFC対応モデルが望ましいそうですが、非対応機種でもアプリを立ち上げた状態ならシステムは起動するとのこと。

メイン画面では、速度、距離、カロリーと位置を表示。ほかにはフレンド登録機能があり、位置情報の共有やデジタルキーの共有化ができるとのこと。また、4輪ナビの「ヒヤリハット地点」データを活用して、危険な場所を事前に知らせる機能も有しているそうです。

すごいのはここから。なんと乗り味を好みにカスタマイズできるのですが、そこにAIを用いての学習機能を備えているのだそう。その中には、街中ではアシストを弱めるといった機能もあるようです。さらに停止時からペダルを思いっきり踏み込んだら、予想以上に自転車が勝手に進んで……といった事故を未然に防ぐ、急発進抑制制御機能も有しているそうです。

走行データを管理する機能も用意されていて、毎日のトレーニングやツーリングの記録にも役立てそう。さらに走行ログはExcelでの出力にも対応するそうです。


野村さんによると、既存の自転車本体+新しい技術で、エンドユーザーのニーズに応えた電動アシスト自転車を提供をするのみならず、マイクロモビリティー向けコネクテッドサービスにも対応できるシステムとのこと。たとえば、電動キックボードといったものにも応用できるでしょう。
気になる利用料金ですが、当面は無料とのこと。ですが、サービス拡充によるサブスクリプションも検討しているようでした。また、モーターとバッテリーだけの販売も考えているようで、こちらは15万円。ちなみにバッテリーのみの販売は検討中です。
21世紀に蘇った本田宗一郎イズム
これぞ現代版バタバタだ!


Hondaは「妻の買い物をラクにしたい」という故・本田宗一郎氏の想いから、1948年に自転車に発動機を取り付けたHonda A型(通称:バタバタ)を開発したことに端を発した会社。それから75年。今回登場した電動アシスト自転車は、「学生たちの通学をラクにしたい」という現代版バタバタであり、Hondaの原点回帰でもあり、そしてHondaの次なる大きな一歩を感じました。今から9月の発売を待ちたいと思います。
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