16インチの小径車NEXT163-S。見ての通りすごくコンパクトだけど電動アシストなので走りはけっこう快適で小回りも効く

自転車も軽ければ軽い方がいい
電動アシストは重いと思われがちだが……

 自転車をチェックするとき、その重量をどのくらいの人が意識しているでしょうか。スポーツ車に乗る人は当然意識してるだろうけど、ちょっと駅までとか、普段は買い物に使うくらいという人だと、たぶんそんなに気にしてない。そこで各ジャンルの代表的な自転車を重さで表にしてみた。


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各ジャンルの代表的なモデル(電動アシストありなし両方)の重さを表にしてみた。アシスト付きの重さがわかるかと思う

 なんと子乗せ自転車として大人気の「Gyutto」は30kgオーバー。チャイルドシートやカゴがついてるのみならず、重い子供や荷物を運べるだけの頑丈さが必要なので、当然フレームも重くなるしタイヤも重く太くなるし、全体に重くなればバッテリーやモーターも強力なのが必要になるのでさらに重くなる。30kgの自転車ってすっごく重い。走ってるときはアシストが頑張るからいいけど、ちょっと駐輪場で細かく動かそうとすると、よっこらしょである。


 同等のジャンルでも電動アシスト付きの方が重い(モーターにバッテリーに制御回路に……と重い部品が多いからね)。これがスポーツ車やミニベロ(小径車。タイヤ径が小さい分、全体の重量も抑えられる)は、より軽量になる。軽ければ軽いほど快適に走れるからね。やりすぎると部品代がとんでもないことになるけど、そういうのは自転車専門サイトに任せるのでここでは追求はしない。


 軽量なe-bikeをあれこれ調べてたら、TRANS MOBILLY(トランスモバイリー)を標榜する自転車に出会ったのだ。なんと、重さが11kg台。これ、アシストなし自転車としても軽いではないか。


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見るからに軽そうだ。電動のユニットもすごくコンパクト

 しかも折りたたみ式である。そうなると、「e-bikeを持って輪行してみたい」と思うよね。目的地まで電車やバスで運ぶのを「輪行」と呼ぶのだけど、うまくすれば長距離移動分を公共交通機関でまかなえるので、より遠くまで行けるのだ。今回の最終目標は輪行である。


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折りたたんで輪行だー!

軽くするためにギリギリまで削った潔い1台

 GICのe-bikeラインナップから今回選んだのは、「
TRANS MOBILLY NEXT163-S」。タイヤサイズによって3種類あるのだが、その中間にある16インチのものをセレクトした。


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左が今回借りた16インチモデル。右が少し大きな20インチモデル。より軽い方ってことで16インチをセレクト

 タイヤは16インチ、変速は3段、重さは約11.9kg。11.9kgってのはすごく軽い。軽い上に本体価格が12万9800円とお手頃だ。普通、軽くしようと思うとその分高価なパーツが必要になって価格は上がるものだが、NEXT163-Sはちょっと違うアプローチ。なんと、ものすごく潔くいろいろと削ってるのだ。


 一番はバッテリー。バッテリーの重さは約600gと超軽量なのだ。一般的なe-bikeの半分以下だ。


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実測で630gだったけど、e-bikeのバッテリーとしては驚異的な軽さ

 潔いのは小さい分容量がぐっと少ないこと。走行距離は公称で約30km。いまや100kmオーバーをうたうe-bikeが多い中で、30kmってのはなかなか思い切ったものだ。走行距離より軽さ。日常の足として使うならマメに充電しようね、あるいは「遠くへ行くのは電車やバス、自動車」に任せようっていう超割り切った仕様なのだ。


 面白いのはバッテリーをハンドルバーに取りつけること。メリットは2つある。ひとつは実に着脱が簡単なこと。腰をかがめなくても簡単に外せるので、乗ったらその日のうちに外して充電しちゃえばいい。マメに充電するのが苦にならない軽さだ。1日で何10kmも走らない限り、大丈夫なのである。もうひとつは、バッテリーにLEDライトがついていること。ハンドルバーにカチャっとつけた状態でボタンを押せばライトが付くのである。バッテリーとライトが一体型なのだ。


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夜、バッテリー内蔵のライトを点灯したところ。かなり明るくてよい

 このバッテリー、扱いは楽なのだが、その分装着時にキーでロックしないので、誰でも着脱できてしまう。盗難の不安は否めないので長時間止めるときはバッテリーを外して持ち歩くのがオススメ。実は側面にUSB Type-A端子があるので、大容量のモバイルバッテリーを持っていくと思えばいいかも。重さも約600gだし。


 次に削ったのがメーター。ほとんどのe-bikeはバッテリー残量やスピード、走行距離などがわかるメーターを装着してる。NEXT163-Sにはそれが「ない」。バッテリー残量は4パターンのLEDライトでチェックするだけ。スピードメーターもなし。


 次に削ったのがアシスト力の調整。スイッチはバッテリーについている電源ボタンひとつだけ。ほとんどのe-bikeについている「アシスト力調整ボタン」がないのだ。アシストのオンオフのみなのである。


 この思い切りっぷりはいい。ハンパなとこがない。細かいところを削った分、よりシンプルで軽くなったのだ。ミニマムe-bikeといっていいレベルである。


 では、バッテリーをフル充電して試走だ。


小さくてシンプルだけど走りは快適!

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小さいけど電動アシスト付きとは思えないミニマルさがカッコいい

 乗る前にサドルとハンドルの高さを調整。ハンドルバーの高さを調整できるので、よりスポーティーに走りたい人は低くするといい。


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目盛を振ってあるので高さ調節しやすい。0から12まで。0より高くしてはダメ

 変速は外装3段。中国のL-TWOO社の製品だ。


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見慣れない名前だが中国のブランド。3段ってとこが絶妙だ。リムが赤いのもなかなかかっこいい

  サドルはちょっと柔らかめの街乗り仕様。小さなサドルバッグは標準装備で、バッテリーカバー(雨の時などにかぶせる)やキャップ(バッテリーを外したときに端子を保護する)などがはいってる。実はバッテリーがぴったり入るサイズなので予備を入れておくのにもいい。


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柔らかめのサドルとサドルバッグ。実はバッテリーがぴったり入るサイズ

 電源を入れてこぎ始める。モーターは前輪のハブに入っている前輪駆動式だ。


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前輪のハブにモーターが入っている

走りは快適だが急勾配の坂は苦手

 走りは予想以上に軽快。アシストは強すぎず弱すぎず、平地やちょっとした坂ならすごく気持ちよく走れるし、ある程度スピードが出て、アシスト力が弱くなっても走りが軽い。車重が軽いってのは正義だ。しかも、全体にコンパクトなので、駅や店の駐輪場での小回りも効くから街乗りには最高である。


 ただ、急坂激坂は苦手。アシスト力自体は街乗り仕様であんまり強くないようで。急な坂や長い坂だとスポーツ車系のe-bikeにくらべるとつらい。これはいつもの急坂を上ったときに実感した。


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例によっていつもの激坂に挑戦


 ちょっとした傾斜なら快適にすいすい進むのだが、20%近くあるような急坂だと、前輪駆動も相まってか前輪が浮きそうになり、アシストのパワーが地面にしっかり伝わってないようでもあり、街乗り仕様のアシストなのだなあと思わせてくれるのである。上り坂の時は、前に体重をかけるよう意識するのがいいかも。


いよいよ輪行に挑戦!
公共交通機関と自転車で移動するのはエコ!

 では、輪行に挑戦してみよう。自転車を折りたたんで輪行バッグに入れるのだ。最寄り駅までNEXT163-Sで走ったら、人の邪魔にならないところで折りたたむ。最初にバッテリーを外して手持ちのバッグへ。


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駅前のひろばにて。最初にバッテリー(兼ライト)を外す
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レバーを下ろして前方に引き抜くべし

 次はハンドルを倒す。ハンドルの位置が低いままだと折りたたんだときにあれこれブツかるので、長く伸ばすのがコツ。


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丸いところを持ち上げてロックを外し、レバーを倒す
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ハンドル部分が簡単に折れ曲がる

 続いてシートポストをゆるめてサドルを一番下まで落とす。


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シートポストのレバーを起こしてストンとサドルを落とす

 終わったら最後にフレームの折りたたみ。カバーを外し、レバーを引くと折りたたまれる。このとき、ペダルの位置が大事。左側のペダルが前を向くようにしておくと、折りたたんだときにほかと干渉しづらいのだ。


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ロックを外し、このレバーをぐいっと挽くと折りたたまれる

 そして無事小さくなりました、と。


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ここまで小さくなりました

 今回はベーシックな構成で借りたけど、輪行をするならペダルも輪行向きのものにした方がいい。折りたためるペダルか、着脱式ペダル(ペダルを外してバッグにいれて持ち歩く)かの二択。個人的には着脱式の方がコンパクトになって好きだけど、まあそこはお好みで。最後に輪行バッグにいれて完成。純正のバッグもあるけど、今回は私物の汎用輪行バッグを使った。


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無事、バッグにおさめて完了。あとはこれを抱えて改札を抜けるのだ

 輪行時のルールはバッグから自転車の一部がはみでないこと(サドルがはみでてるとかはアウト)。マナーとしては混雑時は避け、車内では端っこの空いてる車両に持ち込むこと。そしてベルトを肩にかけてよっこらしょとかついで改札を通り、駅のホームへ。


 なお、東京の場合は人が多いうえに乗換時に自転車をかついで歩くのが大変というのがあり、ラッシュ時は避けること。できれば都心部の通過は避けたいところだ。今回は、多摩センターまで輪行。


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目的地に到着

 そのまま多摩丘陵を越えて、小田急線の鶴川駅まで走ってみることにした。到着したら自転車を出し、折りたたみ状態から復元し、バッテリーをセット。さらに、ハンドルバーにスマホマウントをつけて地図を表示(手持ちのマウントを使ってるが、本来ならもっとコンパクトなものがいい)。


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最後にスマホホルダーを装着してスマホをセットして地図&GPSログアプリを起動である

 そして出発だ。多摩センター駅から南下し、一本杉公園沿いの道を通って多摩丘陵を越える。走りはじめると多摩丘陵に向かって緩くて長い上り坂……なんだがけっこうしんどい。アシストがあっても長いと疲れるという当たり前の話。やがて丘陵を越えるといい感じの古い道である。


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輪行してきたなーと実感する風景に出会うと、つい止まって写真を撮ってしまう

 そして小野路へ向かって南下。多摩ニュータウンの整然として明るくて広い道路を抜けると、急に里山の丘陵地帯に変貌するところが面白い。広大なニュータウンと開発されてない里山の両方を一度に楽しめるのだ。小野路を南下すると古民家を利用した「小野路宿里山交流館」があってひと休みできるのだが、今回はそちらへは行かず、途中で東へ折れて布田道へ。


 路面が悪く、短いけど急な坂で前輪が空回りしそうになる。さすがに舗装路専用と思った方がいいかも。でも来ちゃったのだからしょうがない。何しろこんな地層剥き出しの「関屋の切り通し」なのだ。


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歴史ある切り通しである。ここはフォトジェニックなので自転車と一緒に写真を撮りたかったのだ

 ここに来たかったのである。どの駅からも遠くて自転車が一番いいのだ。ちなみにここは東京都。幕末の頃、新選組の近藤 勇らが小野路の名主小島家の道場へ出稽古に使った道として有名だ。この切り通しを抜けてしばらく走ると視界が開け、多摩丘陵特有の谷戸が現れる。


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多摩丘陵ならではの谷戸風景も自転車が似合う

 どの駅からも、遠い丘陵地帯ならではの自然と農地と起伏を楽しめるエリアなのだ。車も少ないしね。やがて都道18号(現鎌倉街道)に出るので南下。途中で狭い道を左に入ると旧道が残っている。現街道は川沿いにあるが、旧道は川を避けてちょっと高いところを通っていたのだ。


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旧道は自転車で走るのに最高である。車もほぼこないし眺めもいい。なんどかロードバイクの人とすれ違った

 こんな風に旧道をうまく辿ると、自然の中を気持ちよく走ることができる。そしてそろそろバッテリーがやばくなってきたかな、と思いきや、先に音を上げたのはiPhoneの方だった。この先は上り坂がないので自転車のバッテリーが切れても走れるが、iPhoneのバッテリーが切れたら大変困る。


 というわけで、バッグからケーブルを取り出す。このバッテリー、前述したように側面のUSB Type-A端子を使えばモバイルバッテリーとして使えるから、このようにiPhoneにつないでやれば給電しながら走れるのだ。すばらしいね。急速充電は無理だけど(出力は5Vの1Aのようだ)


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ヤバくなったらスマホに給電しながら走れるのだ。これも良さのひとつ

 そうこうしているうちに駅に到着。バッテリーを外してiPhoneをつないだままバッグに入れ(そのまま大容量モバイルバッテリー!)、自転車を折りたたみ、輪行バッグに入れ、よっこらしょとかついでエレベーターでホームへ向かったのだった。


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今回走ったルート。駅から駅へ、丘陵地帯を越えてみた。(地図はiOS用アプリ「スーパー地形」を加工)

バッテリーの持ちを上回る機動力が魅力!

 最後にバッテリーの持ちの話。上り坂をどのくらい走るかなど状況によって大きく異なるけれども、20kmを超えたあたりで、4段階あるLEDが最後のひとつになった。土地の起伏やストップ&ゴーの頻度にもよるけど、20~30kmくらいかなという感じだ。


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容量は少ないけど薄くてコンパクトなバッテリー。この上にスマホを貼り付けて走りたくなる

 一般的な電動アシスト自転車に比べると持ちは悪いけど、その分軽いし、もともとロングライド向きのスポーツ車じゃないので、マメにフル充電すれば困らないかと。あるいは予備バッテリーを持ってもいい。モバイルバッテリーとしても使えるしね。


 あまりに潔く削れるところを削ったミニマムe-bikeだけど、その分軽くて取り回しも楽なので、日常の足として、気が向いたら輪行していろんなとこを走る使い方が似合う。峠越えは向かないけど、そうじゃなくても自転車があればより快適に楽しめる場所ってあるからね。たとえば京都や鎌倉は自転車があるとすごく楽しめるし、駅から遠いエリアでもバスを使わず自走できちゃう。自転車があると観光地も「点」ではなく「線」で楽しめるので何倍もその土地を味わえるのも良い点だ。


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 そういう意味で、機能を割り切って軽さを追求したe-bikeもアリだよなと、今回TRANS MOBILLYの「NEXT163-S」に乗って思った。


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