年に一度のお祭りの富士24時間レース
だが非常に厳しいレースに……
2023年のスーパー耐久シリーズ第2戦「NAPAC富士SUPER TEC 24時間レース」が5月26~28日に富士スピードウェイで行なわれ、eSports出身の冨林勇佑選手が乗る41号車「エアバスターWINMAX GR86 EXEDY」は、中盤まで表彰台圏内を争うも、トラブルに悩まされ、ST-4クラス4位で完走となった。
昨年、ST-3クラスで3年連続チャンピオンに輝いた冨林勇佑は石井宏尚とともにST-4クラスにスイッチ。新たに水野 大をチームメンバーに加え、3人体制でGR86を駆り、開幕戦の鈴鹿では2位表彰台で幸先の良いスタートを切った。


開幕戦の鈴鹿から約2ヵ月ものインターバルがあったのだが、その間にさまざまな変更がスーパー耐久シリーズでは起こっていた。当初は、今年もハンコックタイヤが全クラスにワンメイク供給をするはずだったが、同社のタイヤ生産拠点となっている韓国の工場が火災に見舞われ、スーパー耐久へ供給するためのタイヤ生産の目処がたたなくなってしまった。
この緊急事態を受け、日本のブリヂストンが第2戦からタイヤ供給を手伝うこととなった。短期間でST-XクラスからST-3クラスまでのスリックタイヤを用意。ST-4、ST-5クラスに関してはブリヂストンのSタイヤがドライタイヤとして供給されることとなった。ウエットタイヤについては引き続きハンコックのものを使用するという形で、対応がとられたのだった。

特にドライコンディションに関しては開幕戦からタイヤが異なるということもあり、レースウィークが始まってからも、その合わせ込みに苦戦した41号車。そんな中、金曜日の公式予選ではAドライバーの市森がクラス3番手タイムを記録。Bドライバーの冨林も積極的にタイム更新を狙いにいったが、ライバルの先行を許し、クラス4番手となった。2人のタイムを合算した総合結果ではST-4クラス4番手。決して上位のポジションとは言えないが、24時間レースということもあり、逆転は十分に可能なポジションからのスタートとなった。
なかなかペースが上がらない決勝レース
それでも着実に周回し順位を上げていく
27日(土)の決勝日。コロナ禍の制限もほぼ解除され、朝からコースサイドでキャンプを楽しもうと多くのファンが集まり、会場全体も昨年の24時間レース以上の盛り上がりとみせた。


ST-4クラス4番手からスタートした41号車は、冨林がスタートドライバーを担当。1周目からライバルに食らいつこうと、必死に攻めていったが、予選と同様にペース不足に悩まされることになり、その差は徐々に広がっていった。
それでも、クルマとタイヤを労りながら着実に周回を重ねていき、開始2時間30分を過ぎたところでは3番手に浮上。夜になるとトラブルやアクシデントに見舞われる車両も増え、フルコースイエローやセーフティカーも導入されたが、41号車は適宜ドライバー交代をしつつ着々と周回を重ね、トップを目指した。


平穏無事に進んでいたレースだったが
ドラマは深夜に起こった!
そんな中、ST-4クラスでも波乱が起こる。深夜になって日付が変わろうというところで、884号車のGR86がアクシデントによりマシンが炎上し、コース上でストップしてしまった。幸いドライバーは無事だったが、マシンの消火と回収を行なった影響で、セーフティカーが導入された。さらに全体の折り返しを過ぎた日曜日の午前3時30分にはクラストップを独走していた86号車のGR86が、他車からの接触を受けてダンロップコーナー手前のガードレールにクラッシュしてしまった。こちらもドライバーは自力でマシンを脱出し大事には至らなかったが、破損したガードレールを修復するために、約1時間30分にわたってレースが中断されることとなってしまった。



ライバルが相次いで脱落する波乱の展開となったST-4クラスだが、41号車にもイレギュラーが起きていた。夜間走行のタイミングで何度か接触があり、それに伴うピット作業が重なり、トップとの差が大きく開くことに。レースが再開して日曜日の朝を迎えた時点で、クラス2番手に上がっていた41号車だが、トップとの差は9周に広がっていた。


それでも、逆転の可能性を信じて周回を重ねていたが、ゴールまで残り5時間を切ったところでセンサー系のトラブルが発生してしまい、ピットインを繰り返すことに。これで大幅に順位を落としてしまい、表彰台圏外に脱落してしまう。


メカニックおよび、関係者らが懸命にトラブルシューティングをしたことで、レース終盤はペースを取り戻した41号車。クラス4位で表彰台は逃したが、583周を走り切り、貴重なポイントを獲得した。

またST-3クラスでは、デルタモータースポーツが携わる38号車「ヒグチロジスティクサービスRC350」(近藤説秀/石森聖生/鶴賀 義幸/尾崎俊介/石塚崇宣)が優勝。39号車「エアバスター WINMAX RC350 TWS」(安井和明/伊藤鷹志/眞田拓海/岡田 衛/藤田真哉/藤原能成) が2位に入り、見事ワンツーフィニッシュを飾った。




デルタモータースポーツ 田中延男代表コメント
「38号車と39号車がワンツーを飾れたことは本当にうれしいですが、その反面で41号車に関しては悔しいですね。僕たちの目標は、冨林をST-4クラスのチャンピオンにさせることです。今年もそれを達成するために、次戦でリベンジしないといけません。めちゃくちゃ悔しいですね」

市森友明選手コメント
「今回のレース参戦に関するオファーを受けたのが2~3週間前でした。田中監督と色々話をして乗ることになりました。僕自身としては4年ぶりに富士スピードウェイでレースをしましたが、冨林選手をはじめみなさんに迷惑をかけないように一生懸命がんばりましたが、皆さんのサポートのおかげで乗り切ることができました。本当にドライバーも若いし、監督も情熱を持っている、すごくいいチームだなと思いました。

冨林勇佑選手コメント
「なかなか、そんなに簡単には勝てないですね。序盤からストレートのスピードが伸びなかったのが痛かったです。燃費を稼ぐ走りはしていましたけど、86号車と2周くらいしか変わらなかったです。それで、向こうのペースが圧倒的に違っていたので、何か展開で動きがあればなと思いました。僕たちも夜の走行で接触とかがあってピットに入っている時間がありました。それでも2番手に上がれて、流れが少しきたかなと思いましたけど、終盤はトラブルに悩まされてしまいました。その中でも、トランスミッションやブレーキはトラブルなく最後まで持ってくれました。あとは元々のペースを改善していければと思います」

石井宏尚選手コメント
「いかにも24時間レースという感じで、色々ありました。夜に接触が2回あってトップとの差が離れてしまいましたし、日曜日の朝には市森選手が乗っている時に(エンジンが)吹けない症状が出てしまいました。燃圧センサーが原因だと分かったのですが、交換するにはけっこう時間がかかってしまうので、他の方法で試してみたのですが、結局症状は直らず、部品を交換することになりました。それで勝負権がなくなってしまいましたけど、みんなで頑張って完走することができました。チームもトラブルが出ないようにと頑張ってくれてたので、みんな悔しいと思います。この想いを次戦にぶつけたいですね」

水野 大選手コメント
「コース上のトラブルを避けたかったのですけど、僕が担当していた夜間の走行で、何台かがゴチャゴチャと渋滞していたところで、他車と接触してしまいました。そこから悪い流れが始まってしまって……。自分がきっかけになってしまったところもあった気がするので、責任を感じています。

24時間戦ったレースクイーンたち!
1号車 HELM MOTORSPORTS




18号車 浅野レーシングサービス






21号車 Audi Team Hitotsuyama




22号車 Porsche Team EBI WAIMARAMA




41号車 TRACYSPORTS with DELTA




50&65号車 OVER DRIVE
















52号車 埼玉トヨペット Green Brave




67号車 TEAM YAMATO




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