さまざまな自動車試乗取材を通じて、静かでトルクフルな電気自動車(BEV)に心惹かれているアイドルの寺坂ユミさん(ASCII.jp自動車部ゆみちぃ部長)。なかでもコンパクトな軽自動車である日産サクラに興味を抱かれているとか。
その一方で「調べてみると、クルマのグレードやオプションだけでなく、充電設備とか充電カードとか、補助金がどれだけ出るのかとか、わからないことがいっぱいなんですよね……」と困り顔。そんなゆみちぃの悩みを解決すべく、実際に販売店を訪ねて見積もりを取ってもらいながら、色々とお話を聞きました。なお、本稿はあくまでも日産東京販売の場合であり、ほかの販売店では金額などが異なりますことをご承知おきください。あくまでもEV購入の一例だと思ってもらえればと。
まずはサクラのオプションを選択する

今回お邪魔したのは、山手通り沿いにある「日産東京販売 新車のひろば目黒店」。電車の場合、東急目黒線・不動前駅から徒歩2分程度の好立地にあります。

自動車ディーラーにお邪魔するのは初めての寺坂さん。さっそく、明るく綺麗な店内に足を踏み入れると「AURAは以前、取材で乗りましたよね! おぉ、新しいセレナじゃないですか」と展示車を見ながら興味津々の取材陣。彼女と取材スタッフの年齢差もあり、傍から見ると“首からカメラを下げた父と娘がクルマ選びをしている”ように映ったことでしょう。
「どうぞこちらへ」と商談席に招かれる寺坂さん。「めっちゃ緊張してきました」と落ち着かない雰囲気です。コーヒーを飲みながら、心を静めます。

しばらくすると、カーライフアドバイザーの大橋さんが登場。「はじめまして」というあいさつとともに商談開始、いやお話を聞かせてもらいましょう。


サクラは「X」(254万8700円)と「G」(304万400円)という2つのグレードがあります。クルマとしての動力性能は同じですが、内装や選べる外装色、装備品が異なります、という説明が始まった瞬間、「安い方で」と寺坂さんは即答。

続いてクルマにオプションをつけます。Gグレードはオプション全部載せになるので、機能面ではプロパイロットパーキング(5万5000円)を付けるか否か程度。Xグレードは自分で必要とするオプションを追加できるため、車両金額が安く設定されています。ですので、必要なオプションを選択していきます。
筆者的に驚いたのは、ナビ単体を購入することができず、ステアリングスイッチとスピーカーがセットになっているので、結構いいお値段になっていること。そして、Xグレードにはプロパイロットがついていないこと。
ナビとプロパイロットをつけようとすると、アダプティブLEDヘッドライトとインテリジェント アラウンドビューモニターなども一緒についてくるので、44万4500円という価格になります。XグレードとGグレードの差額は約54万円なので、これらのオプションを付けた場合の差額は10万円。
逆に街乗りメインだからプロパイロットは不要なら、オプションをモリモリにしても37万7300円で、お買い得感が出てきます。日産のこの価格設定、やるなぁと思いながら、今回はプロパイロットに後ろ髪をひかれつつも、街乗りメインのXグレードで話を進めます。

次に充電ケーブルが別売だということ。というのも、大抵の電気自動車には標準でついてくるから。これはメーカーとしての考えの違いなのでしょう。ちなみにサクラの充電ケーブルは200V用15m(6万3190円)と同3m(5万6100円)、さらに100V用7.5m(5万8960円)が用意されます。車両価格を抑える分、必要な長さと電圧のケーブルを自分で選んでください、ということですね。

あとは車検や法令点検などなどの点検が安くなる、「NISSAN EVあんしんプラス」というメンテナンスパックに加入するかどうかです。一見「高いなぁ」と思うのですが、なんやかんやで入った方がオトクになるので「入ります!」と寺坂さんは即決。


そうこうして見積書ができ上がり。
◆EVならではの補助金が魅力
「けっこういきましたね。でも補助金が出るんですよね?」。おまたせいたしました。東京都品川区の場合の補助金例をご紹介しましょう。
まず国から55万円が支給されます。続いて東京都からも自動車メーカー別の上乗せ補助も含めて55万円。あわせて110万円! 「すごい! 220万円になっちゃった! ガソリンの軽自動車と変わらないじゃないですか」と、寺坂さんは声をあげます。さらに自治体によっては、たとえば葛飾区の場合は25万円、江戸川区の場合は10万円の補助が受けられます。

「ちなみに品川区はどうなんですか?」と尋ねる寺坂さんに、大橋さんの答えは「0円なんです」と少し残念そう。
◆注意! 補助金が出るのは購入後
「ともあれ、この見積りの金額から補助金分を引いた220万円くらいをお支払いすればいいのですね」というと、これが違う様子。カーライフアドバイザーの大橋さんは「補助金は購入してから支給されるので、328万390円を先にお支払いいただいて、後日110万円が戻ってくる、というイメージになります」というではありませんか。
「え? 最初から引いてくれないんですか?」と寺坂さん。220万円のローンを組むのと、328万390円のローンを組むのでは、金利もあって毎月の支払い金額が大きくことなります。実際、見積書の右下にあるローンプランの金額は、シッカリ328万390円で計算されていました。
「ASCII.jpのサクラの記事で“補助金を使えば約200万円で手に入る”って書いてあるじゃないですか!」と、怒りの矛先を取材陣に向ける寺坂さん。「文章をよく読んでください。“実質”200万円、と書いてあるじゃないですか」とスタッフは反論。


ちなみに日産東京の場合、「P.O.P」という同社独自の販売商品リース契約という形にすれば、補助金を差し引いた額でのローンを組むことができるとのこと。ですが、リース契約ということで、いくつか制約あるのですが、そもそも本稿のテーマから逸れるのとディーラーによって仕組みも異なるので、割愛させていただきます。支払い方法はほかにも残価設定型クレジットであったり、サブスクとかいろいろあるのですが。
とりあえず「電気自動車の補助金は、購入後に出るため、一括払いで購入する場合は車両価格分のお金は用意しなければならない」ということを頭に入れておきましょう。
◆電気自動車の充電器設置にいくらかかる?
電気自動車に関わる問題のひとつが、充電にまつわる部分です。クルマの充電は、車庫に入れている時に充電する「基礎充電」と、移動中にPAやSAなど長距離移動中の経路で行なう急速充電の「経路充電」の2つに分けられます。

まず、サクラが必要とする充電時間について。カタログによると基礎充電で約8時間、急速充電で40分でほぼ満充電になるとのこと。

自宅に車庫がある場合は、基礎充電のため電気工事をした方が望ましいです。「その工事は、どなたに頼めばよいのですか?」と寺坂さん。これについては「ご自身で近くの電気店で工事を依頼するか、ディーラーが提携している電気工事業者をご紹介いたします」とのこと。ちなみに工事金額は、家の設備にもよるそうですが、「10万4500円」からだそうです。
経路充電をするには充電カードを契約する必要があります。充電カードには大きくわけて、自動車メーカーを問わない「e-Mobility Powerカード(事業主体イーモビリティパワー)」「おでかけCard(事業主体JTB)」と、各自動車メーカーが発行するモノの2種類があります。

「e-Mobility Powerカード」の場合、発行手数料が1980円。これに月額4180円、急速充電が27.5円/分、普通充電が3.85円/分になります。一般的に急速充電は1回30分ですので825円。出先の宿泊先で通常充電を8時間(フル充電)した場合、1848円となります。

次に日産ゼロ・エミッションサポートプログラム3(ZESP3)という充電カードの場合。加入には新車・中古車問わず、日産車を所有していることが条件となります。料金体系は4つで、従量課金のシンプル(月1100円)と、無料利用分を含めるプレミアム100(月4400円)、プレミアム200(月6600円)、プレミアム400(月1万1000円)があります。
プレミアム100の場合、月4400円で急速充電が44円/分(1320円/30分)、普通充電が3.3円/分(1584円/8時間)。ですが急速充電100分、普通充電600分が無料な上に、余ったら翌月に繰り越しできます。なので、日産ゼロ・エミッションサポートプログラム3の方が、e-Mobility Powerカードに比べてオトクという印象。
表を見ながら寺坂さんが「スマホの料金プランみたいですね」とボヤくように、料金プランはちょっと複雑。ですので、契約前に念のため日産自動車の専用サイトにあるシミュレーションを使って、自分にあったプランを探した方がよいでしょう。もちろん料金プランは途中で変更できます(料金シミュレーションサイト)。
支払い方法ですが、e-Mobility Powerカードはクレジットカード払いのほか法人向けに請求書払いができるのに対し、日産ゼロ・エミッションサポートプログラム3はクレジットカード払いのみ。毎月クレジットカードが上限に張り付いている筆者的には、銀行引き落としとか請求書払いにしてもらった方が助かるんだけどなぁと思ったり。そもそもの生活態度を改めろって話ですが……。

「自宅に車庫があれば、絶対に電気自動車にしたいです」と、サクラを前にして気持ちを固めた寺坂さん。「ガソリン車と違って、電気自動車は充電まわりのことも決めないといけなくて、初めての人にはハードルが高いと思っていました。とりあえず、わからなかったらディーラーさんにお任せすれば、ほぼすべて解決するんですね」と胸をなでおろした様子。
「あと費用感がわかったのは大きな収穫ですね。驚いたのは、補助金の話です。ホント、最初から補助金の分を引いてくれれば、ローン会社に払うお金が減るし、購入のハードルも低くなるのに」と、制度の面で不満を抱かれた様子。さらに「補助金が自治体次第だということがよくわかりました。引っ越しをする時はよく調べないとですね」
寺坂さん的には、電気自動車所有の費用感がわかって一安心のよう。「車両のローンに毎月の充電カード代、そして自動車保険料に月極の駐車場代。さらに高速道路利用料にコインパーキング代……。うっ、頭が……」と現実を知った模様。
「毎月の支払を減らすには、車両を一括払いで購入するしかないのですね。貯金しないと!」と、サクラのカタログを見ながら、アイドルは倹約生活することを心に誓ったのでした。

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