マツダ

 新車を買ってもいいのかな情報2023、私は四本淑三です。今回の話題の中心といたしますのは、マイナーチェンジしたロードスター。


 皆様ご承知の通り、10月6日にロードスターおよびロードスターRFのマイナーチェンジが公式に発表されまして、発売は2024年1月中旬の予定。すでに予約の受付は始まっており、もうハンコ捺して納車を待つだけという方も大勢いらっしゃるでしょう。


 おそらくこれが最期のマイナーチェンジで、次のフルモデルチェンジは未定ながら何らかの形でモーターやバッテリーが絡むという話ですから、その通りに進めば純内燃機関搭載のロードスター最終版ということになるのでしょう。


 全体的に20~30万円ほど値上がりしていますが、昨今の情勢ではやむを得ません。これからロードスターに乗ってみようという方には最良の選択です。いま買っておけば、しばらく現行車種として乗っていられる上に、その後も非電動ロードスターの完成形としてずーっと楽しめるわけであります。


 一方、ロードスターRFに5年乗ってきた私としては、今回のマイナーチェンジでもっとも気になるのは、消滅した最軽量グレード「990S」の中古販売価格であります。えっ、マイナーチェンジ後のモデルには興味ないのかって? うーん、うーむ……。そこは後ほど説明いたしましょう。


 今回のマイナーチェンジの主たるところは電装、灯火、安全装備というエレキ関係の更新。1.5リッターエンジンの出力向上も謳われておりますが、諸元表には重量その他も含めて「未定」の文字があるだけで、細かいスペックはさっぱり分かっておりません。


マツコネを全グレードに適用し画面を大型化

マツダ改良型ロードスター 旧RFオーナーが気になるところ

 細かい数字を見なくても良いと思えるのは「マツコネのモニターが8.8インチに大型化」したこと。これまで非装着だったグレード「NR-A」や「S」に標準装備されるのも歓迎したいところです。

というのもロードスターにバックカメラはあった方が安全で、マツコネはそのモニターとして使えるからであります。ご購入の際にはオプションでバックカメラの追加をご検討ください。


 特にRFはルーフの開閉状態に関わらず、でっかいリアピラーのおかげでバックする際の後方視界はよろしくありません。一応「後退時検知機能」も追加されましたが、その検知能力は100%信頼できるものではないはずです。


 もう一つマツコネ絡みで個人的に一番気に入っているのは、前世紀の亡霊のようなCD/DVDプレイヤーの設定が無くなったこと。必要がなくてもRFには付いてきてしまい、レスオプションもないのには閉口いたしました。


マツダ改良型ロードスター 旧RFオーナーが気になるところ

 あとはコネクテッド機能が付きました。救援が呼べるやつ。なくてもいいけど、あった方がいい装備でしょう。


新モード「DSC-TRACK」とデファレンシャルギアの更新

 次は乗ってみるまで分からないけれど非常に興味深いものが2つ。


 姿勢制御のプログラムが更新され、「DSC-TRACK」という新モードが追加されました。ロードスターのDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)はボッシュのビークルダイナミクスコントロール2.0が基盤と聞いておりますが、これを利用して不安定な挙動の発生を予測するとブレーキを効かせ、クラッシュを防ぐものということです。もっともサーキット走行用のモードで、公道を大人しく走っている限り関係なさそうなモードですが、これまでは限界付近になるとすぐ介入するので、サーキットを走る人には嫌われがちな機能でした。

今回は果たしてどうでしょう。実際のレースを通じて開発され、意図的なスライド走行にも対応するということです。


マツダ改良型ロードスター 旧RFオーナーが気になるところ

 電気が絡まないトラクション制御としては、LSD(リミテッド・スリップ・デフ)が「アシンメトリックLSD」へ更新されています。「加速・減速時のデファレンシャルギヤの差動制限力を変化させることでクルマの旋回挙動を安定させる」となかなか分かりにくいですが、加速時にはLSD効果を弱めて軽快なハンドリングを、減速時にはLSD効果を強くして荷重が抜けて不安定になるリアの挙動を安定させるのが狙い。この負荷がかかる方向で差動制限を切り替える仕組みはカムリングによるもので、無負荷ならオープンデフに近い状態になるはず。ならば機械式LSDとのいいとこ取りのようにも思え、実際にどのような乗り味になるのか気になるところ。


 これに合わせてパワーステアリングのアシスト制御も更新したそうで、相変わらず狭いところを突いてくる開発チームであります。


レーダークルーズコントロールの搭載

マツダ改良型ロードスター 旧RFオーナーが気になるところ

 今回のマイナーチェンジの一番のウリはレーダークルーズコントロール、マツダが呼ぶところの「MRCC」の搭載でしょう。ロードスターはノーズが低いためセンターにミリ波レーダーのディバイスを載せられず、先行車の追尾ができない。だから今までは車速固定式のクルーズコントロールしか載っていませんでした。


 うちのRFもその古臭いクルコン付きで、最初のうちは面白かったのですが、クラッチを踏んでギアを落とす度にレジュームをかけなければならず、面倒で使わなくなりました。レーダー追尾式で車速を自動制御してくれても、手動変速なら適用速度の範囲も狭くて似たようなものになると思うのですが、果たして。


 あ、もちろん自動変速機付きは全車速追従機能付きです。


新色の追加とホイールのデザイン

マツダ改良型ロードスター 旧RFオーナーが気になるところ

 あとは見た目に関するところ。灯火類がすべてLED化されたそうです。というリリースを読んでうちのRFがフルLEDではなかったことを初めて知った私でございます。


マツダ改良型ロードスター 旧RFオーナーが気になるところ

 そしてホイールのデザインがカッコ良くなっていること。特にRFのホイールはなかなか良いので、中古で出回るようになったら欲しいかもしれません。


 内装では「S Leather Package」のシートにスエード調のレガーヌが採用されて、ファブリックシートの質感の向上に一役買っています。そして「S Leather Package V Selection」では、NA型でお馴染みVスペシャルを想わせるタンの内装が復活! パンチングホール付きのナッパレザーシートも高級感があって気持ち良さそうです。夏は熱いと思いますが、そこは我慢します私なら。


今回のラインナップで私が買うとしたら

 RFに5年乗ってきた身としては、もし買うなら幌一択。車重の軽さ、重心位置の低さからくる運動性能の違いは、比べてみるとかなりの差があります。RFにも良さはたくさんあるのですが、隣の幌は青く見えると申しますか、たまに友達の幌に乗ると「こういうのでいいんだよ」という気持ちになって、かなり羨ましい。


 そしてトランスミッションは手動変速で。


マツダ改良型ロードスター 旧RFオーナーが気になるところ

 色は新色の「エアログレーメタリック」がカッコ良さそうです。屋外駐車でも水垢は目立たなそうだし。

でも広島本社のマツダを象徴するソウルレッドと迷うところ。


 グレードは「S」。このグレードにMRSSの設定はありませんが、手動変速なのであっても使わなくなりそう。そして何より軽いこと。先に申し上げました通り、車重その他のスペックは公式には発表されておりませんので不明ですが、他には付いているLSDがないので、おそらく一番軽いはずです。


 でもLSDがないと困るじゃん。という話ですが、なくても初代のNA型はなんとかなっていましたし、軽快な回頭性を優先するなら必ずしもオープンデフは悪いものではありません。


 そこで気になるのが、前回のマイナーチェンジで追加されたKPS(キネティック・ポスチャー・コントロール)のような制御が、今回刷新された車体姿勢制御に盛り込まれているのかどうか。旋回中のLSDに近い効果を生むので、ここは気になるところ。早く乗ってみたいものであります。


ロードスターは永遠かも知れない

 バイヤーズガイド的には、現代的なスペックが盛り込まれた欠点のない仕様と申し上げて差し支えないのですが、そもそもオープンルーフで二座のスポーツカーというのは不便で偏った趣味の乗り物であります。なんでもできて便利なスマートフォンと同じ文脈では語れません。


 そうした不便を承知の偏った現オーナーの観点からすると、買い直すほどではないかなと言うのが正直なところ。買い替えるにしても、年が明けたら中古車も視野に入れて考えようかなという気持ちです。でも、いいマイナーチェンジで良かったと感じています。


 この辺のユーザー心理というのは、マツダのブランド価値を示すものでもありましょう。買い直す必要を見出せないというのは、これまでのロードスター体験に満足しているから。そして、これが市場に適応し続けるために必要なマイナーチェンジであり、これからも永きに渡りこのクルマが存続し続けるだろう確信を得て、また満足しているからはずです。大衆性をまといつつも、不便で偏ったコアな部分の追求は相変わらずで、ロードスターにはまだまだ伸び代がありそう。


 ユーザーにそう感じさせている限り、ロードスターはクルマとしても、市場を流通する商品としても価値を落とすことがない。思えば中古相場を支えられずに新車販売の足を引っ張られていた昭和のマツダ地獄。それを脱するために立ち上げられたブランドの一つがユーノスで、その旗艦車種がNA型でした。今やロータリーエンジンを超えるマツダのアイコンとして、その目的を立派に達成したわけであります。


 だからこれから買う新規オーナーには「最新のロードスターこそ最良のロードスター」というどこかからパクってきたような標語を自信を持ってお届けしたい。

買って損なし。でも990Sの相場は気になるぞ。


 そんな揺れ動く気持ちと共に、また今度!

編集部おすすめ