パナソニックグループは、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」に出展し、Mobile Living Roomと呼ぶスケルトン型の未来のクルマを展示した。
Mobile Living Roomは、「100年にわたって、くらしに寄り添ってきたパナソニックが考えた将来のモビリティの姿であり、2035年のくらしのクルマを提案した」と位置づけている。

パナソニックグループブースで、実際にMobile Living Roomに乗って、体験をしてみた。
スケルトンの“未来のクルマ”
設定は、先に触れたように2035年10月のある日。シェアハウスに住む3人の若者たちが流星群を見に行くというところから話は始まる。カーシェアサービスで最新のクルマを予約。全体が透明のリビングルームのような四角いクルマで出かけることになった。
クルマに近づくと、顔認証で予約した人を特定し、ドアが自動的に開く。参加者は、クルマに乗ることができる。クルマのなかには、横を向いた椅子などが設置されており、360度の景色が楽しめる開放的な空間で移動が可能だ。
椅子に座ると自動運転でクルマが出発することになる。クルマのなかでは、パートナーAIの「アイちゃん」がフロントガラスに登場し、移動をサポートしてくれる。
街中を移動中には、交差点で子供が飛び出してきそうなことを通知。子供から「ありがとう」の意味を込めたハートマークがプレゼントされ、フロントガラスにそれが表示される。
幹線道路や高速道路を走りはじめると、時間に余裕があるので「のんびりモード」で走行。電力消費を抑えて、CO2排出量の削減につなげたり、道を譲られたクルマからハートマークが贈られたりといったように、クルマ同士のコミュニケーションが可能だ。
目的地近くのカフェのメニューを窓に表示して、そこから予約。目的のカフェに着くと、配膳ロボットが注文したケーキを運んでくれる。ケーキがおいしくて笑顔になると、車内の照明が笑顔を認識してオレンジ色に変わる。また、目の前に見える風力発電から車に電力をチャージしてくれるという。
カフェのマスターがオンラインで車内とつなぎ、お勧めのスポットを紹介。目的の時間に間に合うように、お急ぎモードで移動すると、周りのクルマが道を譲り、自分のクルマが自動的に相手にハートマークを贈ってくれる。
目的地に着くと、別の場所から流星群を見ている友人からメールが届き、それらの内容を窓に表示して、体験を共有できるという仕組みだ。
パナソニックグループでは、「人の視点でクルマを見つめなおし、笑顔が循環するくらしを提案した」とし、「車内を移動空間として捉えず、楽しい体験や好きなことができる環境にすることで、『移動時間』を『じぶん時間』に変えることができる。また、クルマと街が連携することで、『クルマの安心』から『街の安心』へと進化させることもできる。さらに、走行可能距離を心配したり、電気代を気にしたりせずに、環境に貢献することで『意識高いエコ』から『意識しないエコ』を実現できる」としている。










パナソニックブースでは、Mobile Living Roomのほかにも、「笑顔が循環するくらしへ。」をテーマに、パナソニックグループが思い描く将来のくらしを表現。モビリティが、家や街、人をつなぎ、移動によって、誰かを笑顔にする社会の実現に向けた取り組みを紹介した。
「100年にわたって、人のくらしに寄り添ってきたパナソニックが、モビリティやエネルギーに関わるノウハウを活用し、地球環境との調和を考え、人々が安心して、もっと快適に移動できる未来のくらしを実現することを提案した」(パナソニック オペレーショナルエクセレンス スペース&メディアコミュニケーションセンター スポンサーシップ・イベント推進室 展示・イベント課の伊藤寛人課長)という。
ちなみに、パナソニックグループ全体として、単独ブースを設けるのは、前身となる東京モーターショーを含めて今回が初めてとなった。
では、Mobile Living Room以外のパナソニックグループブースの展示を見てみよう。
同ブースでは、ITS(高度道路交通システム)搭載サイクルモビリティ(B2X)の体験のほか、パナソニクッグループ各社が持つEV普及に貢献する車載デバイスソリューションを一堂に展示した「Automotive Devices & Solutions」、EVやPHVに搭載されているバッテリーに蓄積した電力を家庭で使用する「Vehicle to Home」を展示した。
自転車と自動車が通信し、出会い頭事故を回避
B2Xでは、実証実験を行っているITSを活用し、自転車と自動車との車車間通信を通じて、見通しの悪い交差点での出会い頭事故を回避することができるデモストレーションを行った。
スクリーンに投影された街中を、自転車を漕ぎながら進むと、見通しの悪い場所から車が飛び出してくるシーンを再現。ITS通信が無い場合には事故に遭遇してしまうが、ITS通信があると、自転車にも、相手の自動車にも事前に危険を告知し、事故を回避できるという。
自転車のハンドル部には、小型のディスプレイが搭載されており、そこにスピードが表示されるほか、次の交差点でクルマが飛び出す可能性があるため、自動車が接近していることを警告したり、相手から「お先にどうぞ」というメッセージが送られ、それに対して、サンキューボタンを押せば、相手のクルマに「ありがとう」のメッセージを届けたりといったことが可能になる。
「事故を未然に防ぎ、行きたい場所に、安全に、自由に移動できる社会の実現とともに、リアルの形で『いいね』を送ることができる。コミュニケーションを通じて、笑顔を循環する社会を実現できる」としている。






パナソニックの製品は車載でも活用されている
Automotive Devices & Solutionsは、パナソニックオートモーティブやパナソニックインダストリー、パナソニックエナジーの3つの事業会社が持つ車載向けの60製品を展示した。
クルマを模した展示に、パナソニックグループの技術や製品がどこに搭載され、環境課題の解決や、快適な車室の実現、安心安全の実現に貢献しているかとった様子を紹介。




パナソニックの蓄電システム「eneplat」
「Vehicle to Home」では、パナソニックの蓄電システム「eneplat」を展示。16面マルチモニターを使って、EVとの新たな関係を提案してみせた。
「脱炭素社会に向けて、家とクルマの関係が大きく変わると同時に、再生可能エネルギーを最大限に生かすための取り組みが求められている。これまでは、太陽光で発電し、余った電気は売電することがお得だったが、売電価格が下がり、自分で使用する自家消費の方がお得になる。蓄電システムに加えて、EVも蓄電池として利用することでエネルギーを最大限活用する提案ができる」とする。
パナソニックならでは特徴となる蓄電池とEVへの同時充放電を行い、太陽光発電した電気をより有効活用できるという。ここでは、AIを活用したマネジメントシステムが稼働し、日射量の予報をもとに蓄電池を柔軟に制御。HEMSであるAiSEG2と、eneplatとの連携による「AI ソーラーチャージPlus」を通じて、最大自家消費率90%を実現できるという。
また、最大6kWの高出力放電により、EVにもスピーディーな充電が可能になるほか、非常時に停電した際にもeneplatの蓄電池やEVを利用することで、最大4日間は普通に生活ができる電気を確保できるという。
さらに、EV充電のシェアリングサービス「everiwa」を通じて、EV向けに電気を提供したい人と、EVに充電をしたい人をアプリでマッチングし、公共施設などに展開している充電設備を利用して、充電サービスを提供。地域全体の充電インフラの整備にもつながるという。




一方、パナソニックグループでは、主催者プログラムである「Tokyo Future Tour」にも出展。自動搬送ロボット「ハコボ」にカプセルトイを搭載し、イベントオフィシャルグッズの移動販売を行った。
