現存する世界最古の自動車メーカー「プジョー」から、ファストバックとクロスオーバーを融合させた、セダンともステーションワゴンともSUVとも違う、新しいスタイルのクルマ「408」が登場しました。ということでドライブ大好きのタレント、新 唯(あらた・ゆい)さんとともにチェックしていきましょう。
◆リュック・ベッソンの映画で一躍有名になった
プジョーの400シリーズといえば、C~Dセグメントのセダン、およびツーリングワゴンがお約束。中でも「406」はリュック・ベッソン製作の映画「TAXi」シリーズで大活躍したことで有名になりました。その後「407」が登場し、こちらも映画で活躍。
ですが2011年、607との統合後継モデル「508」の登場にともない終売。以後10年以上にわたり、400シリーズは登場しませんでした。

その間、クルマのメインストリームはセダンからSUVへと変わり、プジョーも4桁型番でSUVのラインアップを拡充。街中でこれらのSUVを見かけることは珍しくもありません。さらにPHEVモデルをラインアップに加え、プジョーの主力として人気を集めています。


その中で久々の400シリーズが登場するという話を聞いて、誰もが「このご時世にセダンを出すの?」と思ったことでしょう。ですが、出てきたクルマは、SUV車高のファストバック。クーペ型SUVというにはセダンっぽく、だからといって4枚ドアのセダンかというと、それもまた違う……。強いて何か近いクルマは? と頭をめぐらせると、これまたフランス・ルノーのアルカナ。
◆最低地上高は高いけど、全高は低い特異なスタイル



この特異なスタイリングを印象付けているのが、最低地上高は189mmと立派にSUVであるにも関わらず、立体駐車場に困らない1500mmという全高であること。「なんか、セダンなんだけど、そのまま車高だけ上がった感じ? でもそれとも違うような。確かにアルカナもこんな形ですが、こちらの方が全長が長いためかシュッとしている」と観察する唯さん。

そんな彼女がイチバン気に入ったのはフロントマスク。最近流行りつつあるボディーとの一体感を高めたインテグレーテッドグリルデザインに、シャープなヘッドライトデザインに「イイですね。カッコいい!」と賞賛を送られます。どこかSF映画に出てきそうなデザインで、それがボディーラインと相まって「近未来のクルマ」という感を強く受けます。


そのままボンネットを開けてパワートレインをチェックしましょう。用意されるのは1.6L 直4ターボのガソリンエンジン&モーターによるPHEVと、1.2L 直3ターボガソリンエンジンの2種類。輸入車ではディーゼルエンジンの人気が高いですが、世界的に用意されないとのこと。駆動はFFのみで、4WDの設定はなし。
今回は1.2L 直3ターボガソリンエンジンでの試乗となりました。エンジンの最高出力は130PS(96kW)/5500rpm、最大トルクは230Nm/1750rpmで、8速ATを介して1430kgの車重を力強く引っ張っていきます。ちなみにPHEVモデルの車重は1740kgとのこと。
◆天井はやや低いが車内は余裕がある広さ





後ろに回って荷室をチェック。「奥行きが広いですね」というのが唯さんのファーストインプレッション。最低地上高が高く、全高が低いこと、さらにファストバック形状であることから、荷室高はやや低めの印象を受けます。ですが、実際に使うとそうでもないような。容積は536L、リアシートを倒せば1611Lの大容量です。荷室内に12Vのアウトレットが用意されているのも◎。使い勝手は良さそうです。この荷室を見ながら「セダンというより、ステーションワゴンかも」と思った筆者です。






後席は居住性が高くて広々。






このクルマの近未来感を高めるのがコクピットでしょう。プジョーと同じステランティスグループの「DS」みたいな印象を受ける、かなりエッジを立てて水平線を強調させたデザインです。そしてコクピット感がとても強く、実にスポーティー。
◆小径ハンドルと大画面のスクリーンで未来感がスゴイ



ハイテク感を高めるのがPeugeot i-Cockpitと呼ぶ小径ステアリングホイール、ヘッドアップインストルメントパネル、大型タッチスクリーンの3点セット。小径ステアリングホイールの上にメーターが見えることに最初戸惑いますし、運転しても戸惑うのですが、唯さんには「なんかスポーティーですし、何より肩幅に合っているように思います」と好評。そしてインストルメントパネルは速度が浮かび上がるように表示される仕様。これまた最初は驚くわけです。

大型のタッチスクリーンは、機能ごとにアイコンがズラリと並んでスマホライク。そのためダッシュボードにボタンが並ばすスッキリ。プジョーらしいなと思うのは、タッチスクリーンでエアコンをコントロールをするのですが、信号待ちで「ちょっと温度を変えよう」とすると、少しだけ面倒。でも見やすいですし、使いやすいです。









ワイヤレスApple CarPlayに対応するようですが、Andoroid Autoを利用する際は有線接続でなければなりません。スマートフォンの置き場は横向きでQi(ワイヤレス)充電に対応します。使い勝手はどちらも上々。驚いたのは、メーターパネル内にルートが表示されること! しかも、Android Autoに至っては交差点名で表示。こういった表示は純正カーナビでよく見かけますが、スマホナビでは初めてみました。
◆猫足と言うには固いけどスポーティーに走れる

プジョーというと猫足。その言葉どおり、しなやかさを信条とした乗り味をイメージします。ですが、どこか硬さが残る印象です。しかし、この味付けがスポーティーと感じられ、クルマの見た目とぴったりマッチ。

ボディーサイズから最高出力120PSで大丈夫? と思ったのですが、走り始めると結構キビキビで楽しいクルマです。見た目と比べてクルマが軽いので、それが回頭性の良さや元気な走りにつながっている様子。実に元気なブルーライオンという印象を受けます。「もちろんパワーがあればイイのですけれど、十分だと思いますよ」という唯さんの意見に同意です。
驚くのはエンジン音が心地よく、耳障りな音を出さないこと。パドルシフトを駆使して、意図的にエンジンを回してみても「頑張ってるなぁ」という感じが薄く、むしろ「もっと行けます!」と乗り手を煽ってくるような。
じゃあ車内はうるさいのかというと、標準的といったところで不満はありません。運転席と後席に座る唯さんとの間で会話ができない、声を大きめに話さないと聞き取れない、ということはありません。
気になる燃費は、筆者の場合リッター12km程度。
【まとめ】これで500万円以下は結構オトクなのでは!?

そんなプジョー408のガソリンエンジン仕様のお値段は499万円。「もっと高いクルマだと思っていました!」と唯さんが驚くのも無理はありません。それだけカッコよく、コスパがイイのですから。「いいかも」と、唯さんは408をたいそう気に入られた様子。「スタイリングといい、室内の感じといい、1.2Lのエンジンでここまで走れるとか、色々な意味で新しいクルマ、という感じがしますね」というのが彼女の感想でした。
フランス料理には、「今までの伝統的なフランスの高級料理(オートキュイジーヌ)とは異なる新しい料理スタイル」として、ヌーベルキュイジーヌと呼ばれるジョエル・ロブションに代表される、繊細な盛り付けや素材の味を活かす料理スタイルがあります。プジョー408はまさにクルマのヌーベルキュイジーヌ。

それは単にスタイリングだけでなく、BEV時代に迎えるにあたり、単に動力源や駆動形式だけではなく、従来の自動車の“お作法”を打破して“新しいクルマ”を作ろうとする、老舗の意思、気高さを感じさせ「プジョーはこうなる」というステートメントを感じさせたのでした。

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モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添えた。