安全がカネで買えるなら売ってくれ情報2024、私は四本淑三です。本日の話題の中心といたしますのは、前回に続いて自転車用リアビューレーダー。

このデバイスが如何にして後方確認を支援してくれるのかの巻であります。


 私が買ったのはテールライトと一体化したガーミンの「VARIA RTL515」。自動車のACC等でお馴染みのミリ波を使い、後方から接近する車両を補足し、その情報を「ANT+ Bike Radar」規格に対応するサイコンに転送して、画面と音で知らせるというものであります。


 なんて言っている端から「そんなもん要らーん!」と昔ながらの人なら言うでしょう。なぜならレーダーで捕捉できたとしても、最終的には目視確認が必要なのだから。


 かくいう私もリアビューレーダーが標準装備されたキャノンデールのシナプスカーボンが発表された際には、自動車の価格高騰を招いた安全支援システム同様、これでまた自転車の値段が上がったらかなわんと呪いの言葉を吐いたのです。が、しかし。今ではヘルメットと同様、着いていないと不安を覚えるほどのありがたみを感じております。そんな手のひら返しの理由を申し述べて参りましょう。


接近車両はオレンジレッドグリーンの3色で表示

自転車の未来の最後尾が見えるミリ波リアビューレーダー

 まず、どのように動作するかをお話して参りましょう。RTL515をガーミンのサイコン「Edge 540」に接続しますと、画面の上隅にレーダーを模したアイコンが登場。車両を補足すると「ピロリン」というアラート音と同時にオレンジのグラデーションが画面を覆い、車線を模したグレーのラインに丸ポチで後続車を表示します。


自転車の未来の最後尾が見えるミリ波リアビューレーダー

 このグラデーションは急速に接近する車両があればレッド。


自転車の未来の最後尾が見えるミリ波リアビューレーダー

 後続車が停止するか右左折して検知範囲から外れるとグリーンに。色によって状況を知らせてくれるわけであります。


 ちなみにグレーの車線表示は設定により左側にも表示できます。我が国は左側通行なので右に表示しているわけですな。


 以上、乗員が取得できる情報はそれだけ。ですが、この情報が絶大な安心感を生むわけであります。


都市部では役に立たない?

 RTL515が検知するのは相対速度10~160km/hで接近する物体で、解像度はビーム幅40度、140mの検知範囲で8個まで。


 だから車両密度の高い幹線道路や、混雑した都市部のように他の車両との速度差の小さな場面では役に立たないのだろうと思っていました。


自転車の未来の最後尾が見えるミリ波リアビューレーダー

 たとえば40km/hで走行する車両の適切な車間距離は、JAFの資料によれば22m程度とされており、仮にその間隔で車両が並んでいれば、検知範囲に入るのは6~7台。実際には一般道で満足な車間など取れませんから、画面には接近車両を知らせる丸ポチが表示されたまま。


 ですが、ここは「後ろに車両が数珠つなぎ」であること、そして「次の車両が通過するタイミング」や「最後の車両がいつ途切れるか」の目安が分かればいい。レーダーがなければその間も絶えず常に後ろを気にしなければならないので、それは意味のある情報なのであります。


サイクリングの帰り道にありがたみを実感

 もっともレーダーのありがたみを実感するのは、交通量の少ない郊外の道路です。大抵がサイクリングに適した気持ちの良い道路ですが、そんな道路はクルマだってぶっ飛ばしています。


 サイクリングの帰り道というのは不思議なもので、大抵が向かい風です。消耗した体力で必死で風と戦っているというのに、いきなり横をクルマがすっ飛んでゆく。風のおかげでクルマの走行音なんか聞こえません。怖いよー。


 そうしたヘロヘロの自転車が20km/hで走行している場合、60km/hで接近する車両は通過約13秒前、法定速度を超えつつ免停にならない程度の速度でも、通過8秒前までには検知できます。たとえヘロヘロでもペダルは踏めているわけですから、左に寄るなど回避行動は取れるはず。


 ちなみにリアビューレーダーは十分な速度差があってレーダーが拾える状況なら自転車でも検知します。もしプロ並みに速いロードバイクが接近してきても、失礼のないよう避けられるかも知れません。


 総じてリアビューレーダーでありがたいのは、今まで漫然と繰り返していた後方確認の動作が減ること。後ろを見たけど何もなくて空振りだった。逆に後ろを見ようとしたらもうクルマが横にいて焦った。そうした不必要な確認や危険が減ることです。


 そしてクルマを運転する立場で見ると、前を走る自転車のタイムリーな後方確認動作は「おっ、あの自転車はこっちを認識しているな」という安心感にもつながるわけであります。


自転車の未来の最後尾が見えるミリ波リアビューレーダー

 心得ておきたいのは、レーダーにも後続車を検知できない状況があること。右カーブは良くても、左カーブ走行中は後続車が的から外れて検出できないことがあります。樹木や建物、崖に塞がれる場合は尚更ですが、そうした状況では目視確認もできないので諦めるしかありません。同様に片側2車線以上の道路で車両の陰になるものも検知できませんし、左折後レーダーから後続が消えて安心していたら、実は後続も左折していて突然レーダーに現れるといったこともあります。

 これまでに明らかな誤検知による危険を感じたことはありませんが、突如猛スピードで接近する車両があって焦っていたら、実は道路と並行して走る電車だったという経験はあります。どんな状況で何を検知し、何を検知できないのかを覚えておくことは、リアビューレーダーと付き合う上で必要なことだと感じています。


手軽に済ませるならスマホもアリ

 クルマを運転する立場としてもリアビューレーダーは広く普及して欲しい装備ですが、何しろお高い。最近はブライトンやマージーンが2万円を切る価格でテールライト一体型の製品を出していますが、対応するサイコンとペアで揃えると、そこそこ軽いホイールの前輪くらいは買えてしまいます。


 そこでサイコンの代わりにスマホを使うのも手です。


自転車の未来の最後尾が見えるミリ波リアビューレーダー

 例えば「Ride with GPS」というアプリ。これは速度表示やナビケーションのようなサイコン機能を持ち、かつリアビュレーダーとのBluetooth接続に対応しています。レーダーをペアリングするとサイコン同様に接近する車両を表示し、音で知らせます。

サイコンより画面が大きく見やすいので、もしアプリの機能に不満がなければこれで全部賄うのもアリです。


自転車の未来の最後尾が見えるミリ波リアビューレーダー

 ガーミンには純正アプリ「Varia」もあります。これは接近する車両をシンプルな画面表示と音、加えてバイブレーションで知らせます。これだけのためにスマホをマウントするのも面倒と言う場合は、パンツのポケットにでも入れておけばいいんであります。車両が接近するとブルっとくるので分かりやすい。


 但しスマホアプリはテールライトを発光モードにしておかないとBluetoothの接続が切れます。安全性から言って真昼間からライトをピカピカさせた方が良いのですが、バッテリーの減りは早い。スマホのアプリにしてもGPSをぶん回すものは電力もそれなりに消耗しますから、モバイルバッテリーで給電することも考えなければなりません。


やはり気になるバッテリー問題

自転車の未来の最後尾が見えるミリ波リアビューレーダー

 で、ちょい乗りの際に私がやっているのが、スマートウォッチとの組み合わせ。もはやガーミンの回し者の誹りを受けてもやむを得ないのですが、最近「Venu 3」を買いまして、なかなか便利に使えております。自転車用なら「Forerunner」だろうという声もあるでしょうが、業務上必須なスマホの着信には応答できるし、ナビケーション機能がないだけで心拍計は内臓しているし、パワーメーターやスマートトレーナーと接続できるし、ライトやレーダーとも接続できるというほぼサイコンのような腕時計。買って良かった。


 これも画面と音とバイブで車両接近を伝えてくるのですが、腕に巻いた状態では画面も見えないし音も聞き取りにくいですから、やはりアラートの主役はバイブです。そしてバッテリーの消費が激しい。だからちょい乗り専用なんですな。


 こうなると安全装備の問題は電力問題でありましょう。何より電動シフト、サイクルコンピュータ、リアビューレーダー、全部電源がバラバラなのが面倒くさい。それぞれにUSBケーブルを接続して充電しなければならないし、それぞれのバッテリー残量を気にしながら走るのも楽しくない。


 先に触れたリアビューレーダーを装備したキャノンデールのシナプスカーボンは、テールライト、ヘッドライト、レーダーをひとつのバッテリーで共有するシステム「SmartSense」の搭載が売りでした。この先、eBikeが主流になってくれば、電源の共有化のような単純な部分から電装系の統合が進むかも知れません。


 となると自動車の車両制御システムをボッシュのESPが握っているように、自転車のそれもどうなるのかは気になるところ。だけど今日はサイクリング日和なのでまたいずれ。

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