プロドリフト競技「D1グランプリ」2024年シーズンの開幕戦・第2戦が5月11~12日の2日間、奥伊吹モーターパーク(岐阜県)で開催されました。昨シーズンのシリーズチャンピオン、ドライバーズチャンピオン、単走チャンピオンと3冠を達成したTeam TOYO TIRES Driftの様子をレポートします。
新体制で連覇を目指して青を灯す
Team TOYO TIRES Drift
今年から「JAF日本ドリフト選手権」としても開催するD1グランプリ。日本選手権に新カテゴリーが追加されるのは、実に43年ぶりのこと! 「2024年日本ドリフト選手権規定」も1月1日に制定されました。とはいえ、具体的に以前と比べて何かが大きく変わるということはないようです。




昨シーズンは3冠を達成したTeam TOYO TIRES Drift。今年はTOYO TIRESがドリフト競技参戦から20年ということもあってか、#66藤野選手と#88川畑選手に加え、#77松山選手がTeam TOYO TIRES Drift-2として新加入!


マシンも長年乗っていたGRスープラから、GRカローラへとチェンジしました。ちなみにエンジンはGRスープラと同じ仕様で、最高出力は1000馬力とのこと!




また、TOYO TIRESは強豪チーム「D-MAX」の横井昌志選手とチーム新加入の田野結希選手に対してタイヤをサポートするほか、今年スポット参戦するニュージーランドの強豪ドライバー、マイケル・ウィデット(マッド・マイク)もサポート。強力な布陣でライバルを迎え撃ちます。
雨の多い奥伊吹。今回も風雨に襲われる


会場となる奥伊吹モーターパーク(岐阜県)は、冬は関西最大級のスキー場「グランスノー奥伊吹」としてにぎわうリゾート施設。D1グランプリの初開催は2020年で、コロナ禍ということもあり無観客で行なわれました。
例年、天候に悩まされることが多いことでも知られ、昨年も強風のため追走トーナメント決勝が中止となり、ファンとの交流会へと変更されています。そして今年も、2日目は時折強い雨が降るコンディションの中で大会が行なわれました。

駐車場にラインを引いた特設コースは例年同様。


藤野選手、川畑選手のマシンは昨年同様GR86。オフシーズンについて両選手に尋ねたところ「何もしていません(笑)」と藤野選手。川畑選手は「エンジンをオーバーホールし、外装を綺麗にしました」とのこと。ですが、今シーズンはリアタイヤを20インチから19インチへとインチダウン。これは「アクセルを踏んだ時のレスポンスを良くしたい」(藤野選手)という狙いがあるようで、「無理を言って作ってもらいました」(川畑選手)とのこと。ちなみにフロント18インチはそのままです。

話題を集めたGRカローラですが、松山選手によると「でき上がってスグから乗りやすくて。やっぱり特有の動きとかクセはちょっとあるので、それは今後慣れたり、セッティングを変えなければいけないところはありますね」と、感触はよさそう。しかし、前日の練習走行でエンジンブロー。土曜日の朝の練習走行開始30分前に組み上がり、難を逃れました。
【開幕戦・単走】藤野・川畑の両名が、まさかの追走進出ならず
土曜日午前中に実施された開幕戦の単走決勝は、山からの涼風が吹くものの好天の中で行なわれました。

藤野選手の1本目。

追い込まれた2本目。車速を108.37km/hと上げての飛び込むものの、全体的にリアが流されているような動き。点数も伸びず97.41。結果18位で追走トーナメント進出ならず………。
川畑選手は走行直前に燃料ポンプが故障。単走を走ることはできずリタイアという結果に……。

注目のGRカローラ、松山選手は1本目、111.98km/hと高い車速から、滑らかさを感じさせる安定したドリフトをみせて97.55。

2本目は攻めた走りで98.53と点数を伸ばし、結果8位で追走トーナメント進出を果たしました。

単走優勝は2本目に100.15点をたたき出した、#99中村直樹選手(TEAM VALINO × N-STYLE)の頭上に輝きました。
【開幕戦・追走】ニューマシンの松山が奮闘

松山選手のベスト16戦の相手は、今シーズンからGR86にチェンジした#31蕎麦切広大選手(SHIBATA RACING TEAM)。ニューマシン対決の1本目は松山選手が先行。綺麗に逃げる松山選手に対し、寄せきれない蕎麦切選手。

入れ替えての2本目。今度は綺麗に逃げる蕎麦切選手に対し、寄せきれない松山選手という構図。ですがゾーン2で詰めたのが功を奏し、蕎麦切選手が99点を出すものの、松山選手は94点と走りのポイントは悪いものの後追いポイント6.7で合計点で辛勝。

ベスト8戦の相手は中村直樹選手。松山選手後追いの1本目。V8エンジンの中村選手に加速で置いていかれたものの、コーナーで詰める松山選手。中村選手98点に対し、松山選手は96点に後追いポイント9。

入れ替えて松山選手先行の2本目。最初の加速からピタリとつけられ、追走ポイント12.3を獲られてしまいます。さらに松山選手と同じ98点の走りをされ、松山選手は敗退。6位で終わりました。

開幕戦の追走トーナメントを優勝したのは中村選手。単走を含め、圧倒的な強さを見せつけました。
【コースサイドの様子】チケットは両日完売!
ドリフト人気の高さを知る
前売り券の段階でチケットが完売した本大会。多くのファンが今シーズンの開幕を心待ちにしていた証左といえそうです。





開幕戦の単走と追走の間には、Team TOYO TIRES Driftの選手たちの前には列ができ、1人1人にサインや記念撮影に応じ、人気の高さを改めて感じました。マシンをコースアウトする際は、ドアを少し開けて手を振る姿も。

TOYO TIRESブースの前ではステージイベントも開催。単走結果の報告のほか、追走への決意、そしてジャンケンでのプレゼント大会なども行なわれていました。




新しい応援グッズも追加。昨シーズン人気を集めたマシンのデフォルメイラストのTシャツは、松山選手のGRカローラを加えたGR 3Brothersへとチェンジ。そしてトミカが新登場。各大会50個(土曜日50個、日曜日50個)の限定販売で、開場早々に売り切れていたようでした。

コロナ禍以後、久しく行なわれなかったギャルオンステージも復活。



今年チームを応援するTeam TOYO TIRES Drift GALSは、白石さんと早咲さんの2名。白石さんは昨年からの継続、早咲さんは昨年スーパー耐久で活躍されていた方です。早くもチームに溶け込んでいらっしゃいました。
【第2戦・単走】途中から激しい降雨
藤野選手まさかの2回走行に
土曜日の夜、激しい風雨が吹いたものの明け方には収まり、路面は乾き始めた状態。ですが、時折霧雨のような雨が降る中で単走決勝が開始しました。

抽選の結果、藤野選手はAグループからの出走。1本目は105.51km/hからの振り出しで、丁寧な走りをみせて97.9点を獲得。

そして点数を伸ばしたい2本目。ですが小雨が降り始め、路面はセミウェットに。それゆえ81.17km/hと遅いトップスピードで第1コーナーへ侵入。それゆえ角度も弱く92.3点に留まります。

Aグループ終了した辺りから雨が本降りに。

Bグループの松山選手の1本目。濡れた路面の中、慎重な走りで92.4を記録。この時点でグループ内で3番手をつけます。

松山選手の2本目。雨は少し止み路面はセミウェットに。ここで角度のついたドリフトをみせて点数は94.8とアップ。Bグループ1位となります。

路面は再びヘビーウェットになり係数は7へ。Dグループから出走となった川畑選手の1本目は、安定感のある走りで92.4。グループ2位につけます。

さらに雨は強くなっての2本目。川畑選手は滑りやすい路面にも関わらず77.26km/hと果敢に攻めて1コーナーへ侵入。ミスはないものの、点数は上がりきらず92.4と同じ点数で2位通過。

競技中、Aグループとほかのグループでは路面状況が違い過ぎると競技委員が判断。藤野選手の点数は消え、再度走ることに。

ここで藤野選手は93.51、93.39を出してAグループを3位で通過。総合成績で藤野選手が7位、川畑選手が11位で、追走トーナメント決勝進出を果たしました。

優勝したのは松山選手。全車がイコールコンディションではありませんでしたが、見事GRカローラの初陣を飾ることができました。
【第2戦・追走】藤野選手7位、松井選手9位
川畑選手12位で終える
午後になると、雨は時折激しく振り、路面は水が浮いている状況。Aグループを再審査したこともあり、単走と追走の間は30分間しかインターバルがない状況でした。

単走1位、松山選手の対戦相手は#10三好隼人(Team MJ-STYLE VALINO)。松山選手先行の1本目、松山選手の危なげのない92点の走りに対し、三好選手は88点の走りに。さらに詰め切れずに追走ポイントは3点にゾーンアウト減点5の86点。

入れ替えての2本目。ですがここで松山選手のドライブシャフトが折れてドリフトができずに途中で終了。松山選手は9位で終えることになりました。

続いて藤野選手と中村選手の対戦。藤野選手先行の1本目は、藤野選手92点の走りに対して、中村選手は終始ピッタリとつけた追走をみせて、90点の走りに後追いポイント14と12ポイントの差がつけられてしまいます。

追い込まれた2本目。先行する中村選手はミスが目立ち90点の走りに対して7ポイントの失速とゾーンはずしの減点があり83点。藤野選手は走行の点数よりも常に中村選手の後ろをつける走りに切り替えて、84点の走りに対して12.3ポイントの96.3点。合計ポイントわずか1.3ポイント差で藤野選手が勝ち上がりました。

川畑選手のベスト16戦は、過去に何度も名バトルがあった#87 齋藤太吾選手(FAT FIVE RACING)。川畑選手後追いの1本目は、斎藤選手93点の走りに対し、川畑選手91点の走りに加え、12の後追いポイントを稼ぐものの、パイロン倒しの減点2で101点。

川畑選手先行の2本目。川畑選手は92点の走りをみせるものの、ゾーンアウトなどで7ポイント減点の85点。斎藤選手はパイロン倒しの2点減点はあるものの、90点の走りに12.3ポイントの後追いポイントを獲得し100.3点。逆転を許して川畑選手の12位が確定しました。

藤野選手ベスト8戦の相手は、今シーズンからD-MAXに加入した#80田野結希選手。藤野選手後追いの1本目、他の選手は93点の走りを披露。藤野選手は後追いポイントを稼ぐ走りで89点の走りに後追いポイント10.7の99.7点。

6.7点差で迎えた2本目。藤野選手は92点の走りをみせ、田野選手はついてこれず後追いポイント7.7であるものの、再び93点の走りをみせて100.7。藤野選手は2ポイント差で敗退し、7位で追走を終えました。

優勝は#18 日比野哲也選手(SHIBATA RACING TEAM)。11年ぶりの優勝ということで、少し照れながらも、雨という難しいコンディションを制したベテランにファンから暖かい拍手が沸き起こりました。
【次戦へ】「単走再走は、めちゃめちゃイヤでした」(藤野)
「流れを変えたい」(川畑)

大会を終えて、藤野選手、川畑選手、松井選手に話を伺いました。
藤野選手「リアを19インチ化してホイールの重さだったりとか、アクセルを踏んだ時のレスポンスが全然よくなりました。コースが苦手とかではなく、開幕戦は自分の責任です(笑)」
「(2日目の単走が再走と聞いた時は?)あれはめちゃめちゃイヤでしたね。中村選手との対戦は、最初から本気で行かないと、本気で行っても勝てるかどうかわからなかったので。それでも楽しみながら頑張りました」
「田野選手とは初めてだったんですが、中村選手よりクルマが速かったという印象でした。立ち上がり、ちょっと遅れてしまいましたし。次の筑波は、今回1戦落としているので、落とさないようにしたいです」
川畑選手「タイヤサイズに関しては、前からできれば19インチを使いたいと思っていました。今シーズンから対応できるタイヤができたので、間に合わせてもらいました」
「開幕戦の燃料計トラブルは……。翌日は雨になって、足回りのセッティング変更は色々対応できる範囲でやってみました。追走は楽しく走ろうと思ったんですけれど、ちょっと緊張が抜けない部分もあって、本来のできるはずの走りをまったく出すことができなかったですね。本来なら後追いの位置をもっと綺麗に持っていきたかったんですけど、それがちょっとできなかったです」
「次の筑波は、最近ちょっと不調が続いているので、何かをきっかけに取り返したいですね。クルマの対策と運転の仕方、両方見直して取り組みたいと思います」

松山選手「今年のクルマは、できた直後から思ったより乗りやすくて。ちょっとスピードが遅いかなとは思っていたんですけど、昨日初めてほかの車と走ってそれほど思ったほど置いて行かれることもなく、すごくいい状態かなと。特有の動きとかクセはあるので、慣れていったりセッティングを変えていかないとですが、初戦としては上デキでした」
「乗りやすいので、安定した走りはできると思ってて。ただ車がだいぶマイルドなので、車速の低いコースだと、そこはキビキビ動かないといけないので苦戦しています。雨の時はドライとは真逆で、難しい車になっていて。自分が抑えて走れば、ある意味キビキビ動くので、そこが良い点になったのかなと思います」
いよいよ始まった、D1グランプリ2024年シーズン。次戦は筑波サーキットで6月29~30日の2日間、行なわれます。Team TOYO TIRES Driftの活躍に期待しましょう!

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