アウトドアシーンで大活躍するポータブル電源。各社から様々なモデルが登場する中、日産自動車が昨年9月よりポータブル電源「ポータブルバッテリー from LEAF」(17万500円)を発売していることをご存じでしょうか? どのような製品なのかを紹介します。
電気自動車のバッテリーを再利用したポータブル電源
若干割高だが、マイナス20~60度の過酷な環境で利用可能
「ポータブルバッテリー from LEAF」は、日産自動車、JVCケンウッド、フォーアールエナジーが3社で共同開発したポータブル電源。その名のとおり日産のEV「リーフ」の再生バッテリーを利用しているのが特徴で、製造時の二酸化炭素の発生を抑えて、持続可能な脱炭素社会の実現に貢献するという、実にSDGsなプロダクトです。
「SDGs系の商品は高額」が昨今のトレンド。残念ながら「ポータブルバッテリー from LEAF」も、その例に漏れません。というのも、充電池容量633Whに対して、価格は17万500円だから。事実、JVC/KENWOODは、ほぼ同じ充電池容量の商品「BN-RM62-C」を7万9860円で販売しています。

さらに付け加えると、ほぼ同じ充電池容量のモデルよりも一回り大きく、重量にいたっては倍以上。充電池容量1534Whモデルのフラグシップモデル「BN-RB15-C」(28万500円)とほぼ同じ大きさだったりします。いくらSDGs系の商品は高額になりがちとはいえ「重たい上に電力容量が少なくて、中古のバッテリーなのに値段が高いとは……」と、誰もが思うことでしょう。

ですが「動作温度範囲マイナス20~60度」と、過酷な環境に耐えられるのが本機最大のポイント。安価で新品バッテリーを搭載した製品の動作温度はマイナス10~40度と、夏場は高温になりがちな車内の環境に耐えられないのです。

JAFが2007年4月26日に行なったユーザーテストによると、最高気温23.3度の環境下でも車内温度は48.7度にまで上昇したのだとか。つまり一般的なポータブル電源は冬以外、車内に放置できないのです。

「ポータブルバッテリー from LEAF」に使われるバッテリーは、本来はクルマを動かすためのもの。同程度出力の他製品より重たいのも、自動車用として堅牢に作られたためで、それが幅広い動作温度につながっているというわけです。日産によると60度は夏場で直射日光があたらない荷室、マイナス20度は冬場の寒冷地の車内を想定しているとのこと。
もっともクルマのバッテリーなのですから、車載環境で安心安全に使えるのは当然といえば当然の話なのですが、それでもすごいといえばすごい話です。

さらに自己放電が少なく、長期保管が可能というのも美質。満充電した後、しばらく時間を置いて使おうとしたら容量が減っていた、なんてことはありがちです。ですが「ポータブルバッテリー from LEAF」は満充電から1年放置しても84%は残っているのだそう。たとえば普段は非常時の備蓄として倉庫に保管し、いざという時に使えるというわけです。
日産自動車、JVCケンウッド、フォーアールエナジーが3社で共同開発した本製品ですが、それぞれどのような立ち位置なのでしょうか?
まず、日産自動車は本製品の企画立案と自動車開発で培った車載環境での使用を実現するためのノウハウを提供。JVCケンウッドは、カーナビゲーションやドライブレコーダーなどの車載機器やポータブル電源の開発で培った技術と知見を活かし、安全性はもちろん、使用済みバッテリーの再利用に最適化した設計と製品開発。フォーアールエナジーは、電気自動車・リーフの再生バッテリーを取り扱っていることから、使用後でも高い残存性能と安全性を持ち、製造時にCO2の発生がないバッテリーを、ポータブル電源で二次利用するための開発を行なったとのこと。
消費者として気になるのは、再生バッテリーって大丈夫なの? ということ。使われているバッテリーは、回収した電気自動車のバッテリーの中から、ポータブル電源として十分な電力を持ちうる最適なものを選別しているのだとか。さらに、JVC/KENWOODのポータブル電源は保証期間2年であるのに対し、「ポータブルバッテリー from LEAF」は3年保証。自信があるという証左ではないでしょうか。
ちょっと大きいけれど、目立たないデザインがイイ!



本体のサイズはW370×H205×D282mmで、重さは14.4kg。持ちあげるときに、思わず「よいしょ」と声が漏れてしまいます。


ちょっと大きいかなと思ったのですが、助手席または足元に設置できる大きさです。走行中、よほどの急ブレーキを踏まない限り、バッテリーがすっ飛んでいくことはないでしょう。

ポータブル電源の中には、アウトドアを意識した色使いや派手なカラーの製品がありますが、「ポータブルバッテリー from LEAF」はブラックでビジネスライク。ですが天板には模様がありオシャレなところも。キャリングハンドルをたためば天板はフラットになるので、ノートPCを置くのに好適です。
PD60W対応でノートPCにも余裕で給電可能




入出力系統を見ていきましょう。入力は12~25Vの直流で100W。

充電時間はACアダプター使用時で約9.5時間、クルマのアクセサリーソケット使用時で約14時間かかります。実際、空っぽの状態から滋賀の彦根あたりから都内まで6時間走行したところ43%まで充電できました。

出力はAC100Vのアウトレット2つと、4つのUSB(Type-A×2、Type-C×2)、そしてDC100Wまで出力できる12Vアクセサリーソケットが用意されています。それぞれ端子の横には電源ボタンがあり、使う際はボタンを押すと電力が取り出せるようになります。

AC100V出力は合計600W(瞬間最大1200W)。前出の同容量製品BN-RB62-CのAC出力が500Wなので少しだけ上回っています。さらに、HIGH-POWERというボタンを押すと900Wまで対応。さすがにドライヤーやヘアアイロンといった電熱機器は難しいですが、それでも電気毛布(50W)なら約12時間分の電力は取り出せます。春秋の車中泊にピッタリです!


USB端子のうちType-Aは5V1.5A、Type-Cはひとつが5V3A、もうひとつが最大20V3AのPD60W出力に対応しています。
今回、一泊二日の取材で使いましたが、車中に入れっぱなしにしてクルマから離れても大丈夫という安心感は何物にも代えられないなぁと実感。以前、別の取材で夏場にポータブル電源を使った際、炎天下の車内に入れっぱなしするのが怖くなり、別場所に移動させたことがあります。その際、地味に重くて泣きそうになったことを思い出しました。車内に置いたまま、には大きな価値があるのです。

使いながらMIL規格(アメリカ国防総省の調達品質基準)をうたうガジェットを思い出しました。MIL規格のガジェットは割高なものの頑丈です。それゆえ、落としても傷はつくけど中身は平気という安心感があります。こうした部分はスペック表の数字では見えづらいもの。
「ポータブルバッテリー from LEAF」も、安心という数字に表れないところに価値を見出せる人なら、絶対にアリなアイテムといえるでしょう。筆者も商品そのものに大変惹かれています。
ですが、いかんせん17万円という価格にハードルの高さを感じます。
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