フランスの大手自動車パーツサプライヤー「ヴァレオ」がメディア向けの技術説明会を実施しました。これはアメリカ・ラスベガスで開催された「CES2025」に展示したヴァレオの最新技術の内容を改めて日本メディアに紹介するもので、次世代の量産車に採用されるであろう、最先端の技術ばかりです。
「CES2025」の会場の道路を挟んだ向かいにあるレストランを借り切ったヴァレオのデモ・スペース

今回、紹介されたのは「ソフトウェア/ADAS」「インテリア」「電動化」「ライティング」という4部門に関するものでした。
進化を加速させるソフトウェア/ADAS
「ソフトウェア/ADAS」に関する新技術としてで、6つの展示内容が説明されました。クルマの知能化が叫ばれている今、最も重視されている部門です。その6つの内容は「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)との提携」「ヴァレオSDVエコシステム」「ヴァレオ・スマート・サーフティ360とナビゲーション・オン・パイロットの組み合わせ」「統合インフォテイメントとADASシステム」「ヴァレオAssist」「ヴァレオ・レーサー」です。

「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)との提携」は、CES2025開幕と同じ1月6日に発表されたもので、自動車用ソフトウェア開発にAWSとヴァレオが協力するというものです。そして「ヴァレオSDVエコシステム」は、自動車用ソフトウェア開発のためにヴァレオが用意するソリューションです。AIを活用した開発、バーチャルでの検証、クルマに搭載しての検証という3つのステージに対応します。クルマを模した環境では、ヴァレオ独自のOSも用意されています。

「ヴァレオ・スマート・セーフティ360とナビゲーション・オン・パイロットの組み合わせ」は、ADAS(先進運転支援システム)のカメラ用に大きなひとつのECUを搭載し、そのひとつのECUでほかのセンサー類の制御もまかなうのがヴァレオ・スマート・セーフティ360です。これにHERE社の提供するナビゲーション・オン・パイロット機能を組み合わせることで、レベル2+の自動運転機能を実現します。ローコストで効率的なことが特徴となります。

「統合インフォテイメントとADASシステム」は、ADAS機能とカーナビなどのIVI(イン・ビークル・インフォテイメント)機能を組み合わせ、ひとつのSoC(集約半導体)プラットフォームで動かすというもの。制御系を集約しようという、現在の大きなトレンドに沿ったものとなります。

そして「ヴァレオAssist」は、緊急時サポートなどの対応にAIがサポートするというシステムです。そして最後の「ヴァレオ・レーサー」は、車内エンターテインメントの提案として、AR方式でゲームをするというものでした。


新しい体験を生み出すインテリアの技術
「インテリア」関連の技術として紹介されたのは「ヴァレオ・セーフ・インサイト」「ヴァレオ・パノビジョン」の2つでした。「ヴァレオ・セーフ・インサイト」は、ドライバーの吸気センサーシステムと、車両の不正防止メカニズムを統合することで、飲酒運転を未然に防ぐというものです。

「ヴァレオ・パノビジョン」は、フロントガラスとダッシュボードの間にディスプレイを備えるという新しい提案です。ドライバーが画面を見るときの視線移動が最小で済むため、安全性が高まります。

さらなる電動化を推進させる新技術が誕生
「電動化」で紹介されたのは5種類のモーター系と3種のサーマル系の新技術でした。モーター系は「スマートeDrive3-in-1」「800V向け高性能ブラシレス巻線界磁型同期モーター(EESM)」「永久磁石重希土類フリー同期モーター(PMSM)」「車載充電器/DCDCコンバーターGen2.7(7kW)」「車載充電器/DCDCコンバーターGen4.5L」というもの。サーマル系は「バッテリー液クーラー」「R-744スマートヒートポンプ」「R-290スマートヒートポンプ」です。
「スマートeDrive3-in-1」はモーター/減速機/インバーターを統合したもの。「800V向け高性能ブラシレス巻線界磁型同期モーター(EESM)」は、高性能な巻線界磁型同期モーターでありながらブラシレスを実現したもの。



「車載充電器/DCDCコンバーターGen2.7(7kW)」は、市場最小サイズを実現しています。「車載充電器/DCDCコンバーターGen4.5L」は車載しやすい小さくフラットな形状で、400~800Vにまで対応。高い電力密度を実現しています。


「バッテリー液クーラー」は、レーザー溶接プレートを使うことでバッテリーの軽量化に貢献します。「R-744スマートヒートポンプ」「R-290スマートヒートポンプ」は、次世代の冷媒規制に対応するコンパクトなモジュールです。またサーマル関連では、ほかに車両向けの熱管理のソフトウェアや、データーセンター向けの冷却システムも「CES2025」の会場に展示されたとのこと。



量産車に採用された最新のライトシステムを紹介
最後の「ライティング」に関しては、すでに量産車に採用されたヴァレオの最新のシステムが2つ紹介されました。2つの量産車は中国の「Lynk & Co Z10」と「アウディA6 e-tron」です。
「Lynk & Co Z10」は、量産車としては世界初となる224個のRGB LDEが採用されました。


「アウディA6 e-tron」では、10個のOLED(有機ELディスプレイ)を採用し、45セグメントの分割制御を可能とします。これにより8種類のシグネチャーを表示することができるのが特徴です。
今回、説明されたのは「ソフトウェア/ADAS」「インテリア」「電動化」「ライティング」の4分野の技術でしたが、実際の「CES2025」の会場では、実機や実車などが用意され、よりリアルに最新技術を体験できたようです。
こうした最新技術は、少し待つと、その多くが量産車に採用され、身近になってゆくものばかり。一足先に未来のカーライフを感じることのできる説明会でした。
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筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
