右肩上がりのキャンピングカー市場。その中で日産自動車の「キャラバン MYROOM(マイルーム)」は「快適に寝られるスペースがあればよい」というライトユーザーに好適なモデルです。
ですが実際に使ってみると「ひとり身には、ちょっと大きいんだよね」とも。そんな声が多かったのかは不明でが、おひとり様車中泊にピッタリのクルマが登場しました。それが「NV200バネット MYROOM」です。今回このクルマを使って、琵琶湖の近くで2泊3日の車中泊をしてきました。
【ここが良かった その1】
使い勝手の良い大きさ




扱っていて思うのは「使い勝手のよい大きさ」であるということ。ボディーサイズは全長4.4m×全幅1.7m×全高1.86m、最小回転半径は5.2mなので、大抵の道は通りますし、峠道でのすれ違いでも苦労は少なかったです。駐車場の枠にだって綺麗に入ります。

ちょっとだけ注意が必要なのは、バックドアが大きいので、うしろに壁があると開けられない場合があること。
【ここが良かった その2】
シングルベッドサイズの就寝スペースがスグに構築できる
MYROOM部分は満足度が高く、というより不満はありません。まず移動中、ガタガタと音がしません。そういう安っぽさがないのです。そのあたり、さすがメーカー製と感心しました。


MYROOMのウリのひとつである、背もたれ部分が変更できる2 in 1シートは、とにかく秀逸。簡単にリア側に向けたり、フラットベッド化できるのも◎。




テーブルが移動式で、簡単に動かせるのも良いです。裏側にロック機構があり、走行中に移動することはありません。一方、ロック機構を外した状態ですと、車両に傷をつけるおそれがあるので、必ずロックをかけましょう。




側面には収納があり、キャンプ場の電源を車内に引き込むための電源ケーブルなどが収納できます。



荷室部分には、ポータブル電源の充電に便利なアクセサリーソケットなどを用意。キャンプ場が提供する電力を車内に引き込むソケットも用意されています。ちなみに床が結構滑りやすいので、走行中にポータブル電源や荷物が移動しないよう、滑り止めとして写真のようなゴムマットを敷いておくことを強くオススメします。

夏の車中泊に便利な換気ファンがついているのもうれしいところ。風量は2段階切替です。





それでは寝室をつくってみたいと思います。やり方はカンタンで、付属する2枚の板を取り付け、2 in 1シートをフラットベッド化するだけ。

寝る際に気を付けた方がよいのが、荷物の高さ。これはキャラバンMYROOMでも同じですが、ベッド下の高さが260mm程度ですので、荷物をそれ以下の高さにしなければ、ベッドを作ることができませんし、荷物を破損さえるおそれがあります。

走行中にベッドを使用するのはもちろんNGです。シートベルトはきちんと閉めましょう。一応、念のため。
【ここが良かった その3】
4ナンバーで税金が安い&ディーラー車検が受けられる
NV200バネットMYROOMは、小型貨物自動車(4ナンバー扱い)です。よって毎年納める自動車重量税は普通自動車に比べて安かったりします。ただし、車検は毎年受けなければならず、自賠責保険料も少しお高めの設定です。
そして、保険も車検も日産ディーラーに丸投げできるのも◎。
【ここが良かった その4】
いつでもどこでもワーケーション

キャラバン MYROOMでは、立ち作業でテーブルを使おうとした際、車両からテーブルがはみ出てしまうことがありました。ですが、NV200バネット MYROOMでは、それが解消されています。つまり写真のような状態で立ち作業をし、そのままバックドアを閉めることができるのです。これはとても便利。




夜作業する際、照明が欲しくなりますが、NV200バネット MYROOMは最初から照明がついていますので、別途ライトやカンデラを用意する必要がありません。しかも照明は手元で切替できるので、とても便利です。ノートPCがあれば、どんな状況でも作業ができます。MYROOMはMYOFFICEにもなるのです。
【ココが気になる 1】装備のわりには約500万円と高額

NV200バネット MYROOMは、商用バンであるNV200バネットの2列目シートを2 in 1シートにし、さらに荷室スペース部分を木目のインテリアに架装したモデル。価格は2WDモデルが475万3100円、4WDモデルが507万7600円。NV200バネットの最上位グレードGXが2WDで264万9900円、4WDで301万4000円なので、MYROOM代はザックリ200万円。ちなみに500万円あれば、セレナの上位グレードが手に入ります。
実際に運転してみると……、路面の凹凸による衝撃は結構強め。でありながら、どこかフワフワした乗り心地で、一言でいえば「いかにも商用車」といったところ。セレナやノート、エクストレイルなどに乗り慣れた身からすると、もう少し落ち着いた足にしてほしいと思ったり。





そして驚いたのが、運転席まわりにイマドキの快適装備がほぼないこと。スマホの充電に便利なUSBサービスレセプタクルどころか、ナビとスマホをつなげること自体ができません。そのナビの画面も小さくて、老眼が厳しい筆者には見づらいなぁと。ちなみに、12Vのアクセサリーソケットはあるので、ここにUSBチャージャーを取り付ければ充電はできます。

日産車といえば、高速道路巡行に便利なプロパイロットや、後退時にナビ画面に鳥観図を表示するアラウンドビューモニターが知られています。ですが、それらはおろかクルーズコントロールもバックカメラもないではありませんか。500万円もするクルマなのに……。

そもそもNV200バネットは、2009年に発売開始したクルマ。15年以上前のクルマがベースなので仕方ない部分はあるにせよ、一方で新車販売しているクルマでもあります。

たとえばヘッドライト。LEDじゃないので、最近のクルマに慣れていると夜道は少し暗くて怖いかなと思ったりします。


お金まわりの話はまだ続きます。お借りしたNV200バネット MYROOMには、カーテンや網戸がついているのですが、これがオプションなのです。具体的にはカーテンが9万9000円、網戸が1万1000円。MYROOMステッカーが3枚で1万9600円……。「網戸よりステッカーの方が高いのか!」とか「MYROOM代の約200万円に入っていないのか」とか、そんな事を思ったのでした。
【ココが気になる 2】もう少しエンジンパワーが欲しい

日産といえば、シリーズハイブリッド(発電用のエンジンでモーターを動かす)の「e-POWER」推し。ですが、NV200バネットが登場した2009年に、そのようなハイカラなパワートレインはありません。エンジンは1.6L 直4DOHCのHR16DE型で、燃費はガソリンエンジン車としてみると悪くはなく、街乗りで10km/L程度、高速道路で17km/Lくらいなのですが、最高出力は109馬力、最大トルクは15.5kgf·mと、ちょっと非力。山道などは、結構踏まないと進まない印象を受けました。
予想外だったのが運動性能。
【まとめ】快適な車中泊をしたい
移動オフィスが欲しいという人に好適
キャンピングカーのような水回りなどはなくてもいい。ただ、快適に寝る場所が欲しい。または車内で快適に作業ができるスペースが欲しい。そんな人にMYROOMはとてもオススメできます。
しかし、長距離移動をしようとすると、結構疲れやすいのも事実。でも疲れた時は車中泊すればいいわけで。最初は文句ばかり言っていましたが、一度寝ると人間忘れるもの。荷物も運べる、しかも寝れるNV200バネット MYROOM。正直欲しい1台です。
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