ロボット掃除機の代名詞「ルンバ」を展開するアイロボットジャパンが、ルンバを月額1200円からレンタルできるサブスクリプションサービス「Robot Smart Plan」を開始した。これは本国の米国でも実施していない“日本発”のサービスだという。
同社の挽野元社長にローンチに至るまでの経緯と戦略を聞いた。

●昨年発売の「ルンバe5」が大ヒット
 アイロボットジャパンの足元の動きは好調だ。2018年は過去最高の年間売り上げを達成。市場参入以来の累計出荷台数も300万台を突破した。起爆剤になったのが、18年10月に発売した「ルンバe5(以下、e5)」だ。ロボット掃除機としては購入しやすい5万円を切る価格ながら、頭脳や吸引力は上位機種並み。
圧倒的コスパで、多くの新規ユーザーの取り込みに成功した。
 「『e5』はわれわれの想像以上に受け入れられた。世界の他のマーケットと比較しても日本が一番売れている。価格と性能がベストバランスと評価されたのではないかと思う」と挽野社長は好調の要因を分析する。
 同社は「ロボット掃除機を一家に一台」というスローガンを掲げており、「2023年までに世帯普及率10%達成」を指標にしている。ちなみに現状の普及率は5.1%。
e5の発売前は4.5%だったので、同モデルのヒットがけん引する形で0.6ポイント伸ばしたことになる。
●目標達成を左右する製品軸以外のアプローチ
 認知は広がった。幅広い価格帯のラインアップを揃えた。最高のコスパを誇る普及機も出た。正直、ここからさらに普及率を上げるためには地道に販売していく以外にないように思えるが、そこで思考を止めずに打ち出したのが“サブスク”という選択肢だった。
 挽野社長によると、ロボット掃除機の購入を躊躇する人の理由はほとんどが「価格が高い」「本当に掃除できるのか不安」の2点に集約されるそうだ。
「これらの要因を解消するために製品軸以外の訴求が必要だという考えは以前からあった。サブスクについても着想自体は2年前からあり、準備には非常に時間をかけている」。
 サービスプランを固める上で議論になったのは、貸し出すモデル・期間・価格の三つだ。特に白熱したのは“価格”。実はアイロボットは以前からルンバとブラーバのレンタルサービスを行っているが、価格は15日間で4000円~7000円と高めの設定だ。ところが、今回のサブスクでは月額1200円からと、これまでよりかなり低めの設定に踏み込んだ。

 また、驚きなのが契約期間の36カ月を過ぎれば、貸与していたルンバはユーザーの所有物になることだ。最上位モデル「ルンバi7+」のレンタルは月額3800円で、36カ月分を合計すると13万6800円。一方、現在の公式オンラインストア価格は12万7275円(ストア表記では税込14万270円)。価格差も1万円程度しかない。
 「これまでの2週間のレンタルも効果的だったが、ロボット掃除機はある程度の期間を通して、生活に溶け込んでいくもの。年間を通してご使用いただきたいという思いから、最低1年からの契約期間を設定した。
レンタルの方がお得という見方もあるが、購入した方が安いのはたしか。販売店とはこれまで以上にパートナーシップを強化したいと考えているし、今回のサブスクによって、店舗で関心をもつ顧客も増えるはずだ」(挽野社長)
 始まったばかりということもあり、サブスクがどのように成長していくのかについては「まだ未知数」というが、家電レンタルサービスや日本の賃貸比率は伸びており、親和性はますます高まると予想している。
 先述した「2023年までに世帯普及率10%達成」について問うと、挽野社長は「これは確実に達成できるのではないか」と自信をみせた。製品軸以外のアプローチはサブスクのほかにも準備中とのこと。日本独自の二の矢、三の矢にも期待したい。(BCN・大蔵 大輔)
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