5Gの特徴としてあげられるのが、「高速・大容量」「低遅延」「多接続」の三つだ。現在、主流の4Gと比較すると、通信速度は約20倍、遅延は10分の1、同時接続数は約10倍になるといわれている。「スマートフォンの通信速度が高速になる以外のメリットってあるの?」という声も多く聞かれるが、実はこれまでの世代交代以上に幅広い業界に影響をもたらす可能性を秘めている。
JEITA(電子情報技術産業協会)が12月18日に発表した5Gの世界需要額予想によると、20年には8兆円と試算される需要は、25年には77.3兆円に、30年には168.3兆円に達するという。注目したいのはその内訳だ。インフラが2.8兆円なのに対して、IoT機器が104.4兆円、ソリューションサービスが61.5兆円と高い比率になっている。
つまり、既存のものではなく、新しいコンテンツやビジネスにこそ、5Gの活路はある。編集部で真っ先に話題にあがったのが、VRだ。すでに大手キャリアは低遅延を生かしてスポーツをリアルタイムでVR観戦するサービスなどを先んじて展開している。
また、各部員の取材で5Gに対するアプローチが活発という印象が強いのが、ゲーム業界だ。遅延なく多人数がアクセス可能なクラウドゲームが普及すれば、ユーザーはゲーミングに特化していないデバイスでも快適にゲームをプレイできるようになり、参入障壁が下がる。業界はこれを市場拡大の好機と捉えている。
一方で、期待が強すぎるのではないか、という声も関係者からは聞かれるようだ。「果たして5Gで本当にオンラインゲームに支障がないレベルでプレイできるのか。数万人というアクセスに耐えきれるのか。現段階では何とも言えない」。編集部員からはこうした不安の声もあがった。
確度高く、成功が期待されるのは、エンドユーザー向けのサービスではなく、法人向けのサービスかもしれない。代表的なものが、自動運転だ。既存の自動運転は通信速度や遅延の問題から自動車に備わったAIやセンサーが取得した情報に寄るところが大きかった。
意外な業界にも5Gの恩恵はある。例えば、ペンタブレットで有名なワコムは5Gを活用したXR仮想空間における3Dモデル構築のソリューションを推進している。5Gの低遅延や多接続を生かせば、離れた場所にいる人がXR空間でリアルタイムに同じモデルを作成することが可能になる。こうした遠隔からのコミュニケーションは多くの業界の働き方を変えていくはずだ。
間接的な影響では「固定回線からテザリングへの切り替え」ということが発生する可能性についても議論になった。今でも若い世代では固定回線を引かずにスマホの大容量プランに契約してテザリングで済ませるというスタイルが広がりつつあるが、5Gの普及はこのトレンドをさらに推し進めるかもしれない。
現在も高画質の映像やゲームを快適に楽しむためには固定回線の高速通信が適しているが、5Gがこの代用として機能するのではないか。編集部員からは「引越しする上で固定回線はネックになる。5Gのモバイル端末をルータに切り替えることで、引っ越しがしやすくなるはずだ」とライフスタイルの変化を期待する声もあがった。
座談会では5Gに対する期待と不安が入り混じった議論が展開されたが、3Gが4Gに置き換わったときよりも大きな変化が訪れることは確かだという結論に至った。その変化を肌で感じ取ることができる時期は明確ではないが、認知を高めるという意味では、iPhoneの5G対応モデル投入は一つの転機になるかもしれない。
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