【なぐもんGO・43】世界的なゲームプラットフォーム「Steam」は、今や日本のPCゲーマーに欠かせない存在と言える。しかし、数年前まで、日本で使うにはハードルがあった。
日本語に対応していなかったのだ。“ある企業”の奮闘で、日本でも快適に使えるようになってからは、PCゲームへ簡単にアクセスできるようになった。一体、“誰”のおかげで、どのようにSteamが日本に上陸したのか。立役者の姿を追った。

 訪れたのは、住みたい街ランキングで上位にあがる吉祥寺。目的は、駅から徒歩5分程度の雑居ビルにオフィスを構える、社員40人ほどの小規模な会社だ。決済、ゲーム、人材事業と、幅広いビジネスを手掛けるこの会社の社名は、デジカ。普段は海外企業が日本国内でECなどで商品を販売するためのサポートをしている。日本のSteam上では、主に決済サービスを担う。
●Steamとの出会い
 同社がSteamと関わったのは、2012年。カドカワの『RPGツクール』という作品をSteam上で世界に向けて販売することになったときだ。同作品は、だれでも簡単にRPGを作れるツール。
デジカのニコラ・デュフェール氏は、「世界で展開するにあたって、海外のクリエイターの声を聞きながら改修を重ねた。その結果、大成功を収めた」と振り返る。
 当時、まだ日本ではSteamが展開されていなかった。日本から利用しようにも、言語の壁に加え「ドルでしか買い物ができない」「海外ゲームしかない」という課題があった。しかし、デジカ社内にいる複数のゲーマー社員は「日本でもSteamの需要はある」と確信していたという。
 ニコラ・デュフェール氏は、「社員を信じて、Steamを展開するValveと話した。『ゆくゆくは』と言われたが、すぐにやろうと2013年11月に日本のサイトを立ち上げ、Steamで使えるウェブマネーを販売。すると、日本のユーザーが殺到し、用意したウェブマネーが売り切れるほど反響があった」と、数年経った今でも嬉しそうに語る。
 予想以上の結果から、デジカは日本円への対応を急いだ。得意分野の決済事業とあって、コンビニ決済やクレジットカード、電子マネーに対応するシステムをAPIからつくって整えようとValveに提案。この案が見事に通過し、2014年8月にSteamへデジカのシステムが導入された。デジカは同時に、日本のゲーム会社を訪問して回って、日本人が好きそうなゲームをSteamで展開する土壌を作った。

 デジカの大原諒子氏は、「当時、日本のゲーム会社はスマホゲームばかりに目がいっていた。でも、Steamでは販売終了になったゲーム機のゲームタイトルを販売することができると訴求したら、応えてくれるようになった。その後、Steamを少しずつ理解し始め、ビッグタイトルも展開するようになった」と経緯を語る。
 ゲーム会社が動いた理由は、ゲーム会社がすでに持っているコンテンツを再利用できるからだ。Steamが受け入れた理由は、遊べなくなったはずのゲームをユーザーが遊べるようになるから。PCゲームは家庭用ゲーム機に比べて、ハードウェアを丸ごと買い替える必要がないというのも利点だろう。
 Steamは世界中のゲーマーから愛されるゲームプラットフォームだ。Steamも、世界中のゲーマーの利益になることを最優先に考えている。その“世界中”の中に日本が含まれたのはデジカのおかげだ。今後、Steamにはサブスクリプションサービスを展開する方針があるという。この新サービスの円滑な運営を実現するのも、デジカの重要なミッションになりそうだ。(BCN・南雲 亮平)
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