2010年ごろ、東京のディスカウントストアで買った激安マスクは、50枚入り1箱が39円だった。不織布を使った一般的な使い捨てのサージカルマスクだ。この2月、ある通販サイトで販売していたマスクは、50枚入り1箱で3980円。別メーカーの全く違うものだが、ほぼ同じ不織布の製品だった。激安品と比べると実に100倍の高騰だ。3月、同じサイトで同じ製品の価格を調べたところ、8000円に値上げされていた。実に200倍の暴騰だ。通常ドラッグストアなどでは500円前後で販売していることを考えても、価格は実に8倍、16倍と跳ね上がっている。
悪質なマスク販売業者もある。米国や英国、ドイツの通販サイトでマスクが購入できないか調べたところ、米国のあるサイトでは、製品価格自体は50枚入りが5ドル(米ドル、以下同)と通常どおり。しかし購入しようと手続きを進めると、送料が1000ドル(10万円あまり)と表示され、詐欺まがいの業者であることが分かった。
花粉症が始まるこの時期、例年のマスク需要は月間4~5億枚。メーカー各社は需要期に合わせ、前もって増産して準備する。通常なら3月はすでに減産に入るタイミングだ。今年は各社フル操業で、週1億枚の供給を続けている。業界関係者は「明らかに需要は増えているが、極端な供給不足に陥るほどの状態ではないはず」と首をかしげる。転売目的の購入が需給バランスを崩している可能性が高い。安倍首相は3月5日、新型コロナウイルス感染症対策でのマスク不足について「転売を目的とした購入が品薄状態に拍車をかけている。国民生活安定緊急措置法を適用し、マスクの転売行為を禁止する」とし、近く具体策を打ち出すと表明した。