【木村ヒデノリのTech Magic #023】 ついに本格的にロボットと共同生活する時代が到来した。ルンバなどのお掃除ロボットは一般家庭にも浸透してきたが、その最新形では芝刈りもロボットに任せることができるようになった。
今回、紹介するのはスウェーデンのHusqvarna(ハスクバーナ)社が開発し、密かに全国の企業で導入されはじめているロボットだ。
 同社はチェンソーやトリマーなど農林・造園機器を作る老舗企業で、キャンプをされる方にとっては手斧が馴染み深いかもしれない。その実用性は折り紙付きで、芝刈りを新しい視点で解決してくれるものだった。記事で紹介するものは業務用途のもので高額だが、コンシューマー向けのモデルもラインアップされている。家庭で使用したい方向けに最後に紹介するので気になる方はチェックしてほしい。
●ルンバを彷彿とさせる実用性は必見
 生活を豊かにしてくれるロボットといえば、真っ先に思い浮かぶのがルンバのようなロボット掃除機だ。現在の家庭用向けではその他の分野のロボットは家電の延長だったり、あまり実用的でなかったりするように思う。例えば、GROOVE X(グルーブエックス)社の「LOVOT(らぼっと)」はかなり売れているが、どちらかというとペットのような立ち位置のロボットだ。
 何をもってロボットと定義するのかは難しいところだが、本稿では「ある程度の裁量をもって自律的に行動し仕事をしてくれるもの」としておきたい。行動というところがポイントで、人間が動かなくても広範囲にわたって行動し、家事をを代行してくれるのがロボット足るに欠かせない要素だろう。
 この点から見るとルンバの完成度はかなり高いが、芝刈りを同等レベルで自動化してくれるのがこの「Automower 435X AWD(以下、435X)」だ。「ロボットでなんてちゃんと刈れるの?」と疑問に思う読者は多いだろうが、少なくともルンバのUXと同等以上の体験を提供してくれる。
そんな驚きのコンセプトや機能を解説していこう。
●芝を刈るのではなく、伸ばさないというコンセプト
 電動芝刈り機というと手押しで刈った芝を袋に溜めていく、というのが一般的だろう。本機が画期的なのはその常識を覆してくるところだ。ハスクバーナの芝刈りロボットは芝を回収せず、剃刀くらいの薄い刃で微細にしながら処理していく。刈られた葉は微細なため、落ちて土に触れ、微生物に自然分解される。したがって毎日稼働させてもユーザーが芝を回収する手間はゼロになるのだ。
 芝を回収する必要がないので、本体サイズもコンパクトで合理的だ。通常であれば手押し式の延長として考えてしまいそうだが、最初から使う側の視点に立った設計がされており、この点はかなり好感がもてた。導入時に芝や雑草が伸びてしまっている場合は一旦手動で刈らなければならないものの、導入後の手間はほぼないというのがとても実用的だ。
●芝の成長に合わせた手入れも可能 ハイスペックな機能を搭載
 天候や季節に合わせて自動で手入れしてくれるのもすばらしい。モデルによるが、同社製品には「天候タイマー」という機能が搭載されており、芝生の成長に対して作業時間を調整し、成長期に自動で芝刈り時間を最大化してくれる。逆にシーズン後半は時間を削減してくれるので、芝生と製品双方の消耗を低減してくれるというから驚きだ。
ここまで自動化できるのであればロボットに任せる意義が出てくる。痒いところに手が届く仕様も300年以上の歴史から紡ぎ出されるものなのだろう。
 前述した表に記載しているモデルはどれもスマホアプリ「Automower Connect」に対応しており、スマホから毎日のスケジュールや刈高を設定できるほか、ベースに戻れなかったり、持ち上げられたりなど、異常があった場合でもリアルタイムに通知が来るようになっている。
 Bluetoothのほか、3G通信も備えているので盗難追跡ができ、防犯面でも心強い。ここまでハイスペックな機能を搭載するにも関わらず、本体は全天候に対応しており、本社所在地である北欧の過酷な気候にも耐えるように設計されているのも運用上の安心を担保してくれてるだろう。
●四駆ならではのパワフルな走行も必見
 さらに435Xは他のモデルと違い四輪で駆動する。これによって刈高や充電回数に不利な点が出てくるものの、傾斜角70%(約35°)まで対応する。庭なら平坦で角度は関係ないかもしれないが、業務用途だとかなりの起伏が予想される。通常モデルは20°弱とそれでもかなりの傾斜に対応しているが、35°は驚愕だ。実際に今回は筆者が関わっている団地の芝生で2ヶ月ほど実験したが、かなりの角度をギリギリまできれいにしてくれた。やはり二輪と四輪の差はかなり大きく、アップダウンの激しい状況では選択肢として唯一無二のものだろう。
●芝刈りを完全に自動化してくれる素晴らしい完成度
 繰り返しになるが、実用性を考えると435Xは他に追随を許さない完成度に仕上がっている。
業務用途として盗難や故障のリスクがあるので、保守管理も含めたリースやレンタルにした方が良いかもしれないが、一軒家に広い芝生をお持ちの方は人工芝よりも自然芝+芝刈りロボットをおすすめする。起伏が少ない場所であれば二輪モデルでも十分。さらに作業エリアが600平方メートル以下であれば価格も10万円代(ガイドワイヤーは別途)とコンシューマーが導入を考える際も現実的な価格となる。
 ニューノーマルが浸透していくなかで、郊外に広い家を買い、リモートで働くというスタイルも増えていくだろう。そんな際は広い家を自ら丹念に手入れするのではなく、ロボットなどで自動化して手動作業がない、新しいライフスタイルを目指すのも面白いのではないだろうか。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。
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