春に始まったコロナ禍が思いのほか長引いているが、多くのビジネスパーソンの方々はもう、在宅のまま仕事をこなせる環境を少しずつ整えてきたことだろう。パソコンを使う仕事の場合、マウスやトラックパッド、キーボードなどの入力デバイスをアップグレードしてみたり、作業の種類により合うものに換えてみることで効率アップを図れる場合がある。
今回はコスパにすぐれたデジタルグラフィクス・タブレットの多彩なラインアップを展開するXP-PENのタブレットをテレワークに賢く活かす方法を紹介したい。

●日本で生まれた人気のハイコスパブランド「XP-PEN」
 XP-PENは2005年に日本で創立したメーカーだ。2017年に世界進出を果たし、現在は液晶タブレットなどペンタブレットのスペシャリストとして初級者から上級者向けに多彩なラインアップを揃えている。
 XP-PENが得意とするデジタルグラフィクス・タブレットは、PCに接続して専用のデジタルペンで文字や絵を描くための入力デバイスの一種だ。液晶画面を搭載する製品を“液タブ”、PCの画面を見ながらセンサーボードにペンで入力する“板タブ”と俗に呼ばれる製品を中心に、イラストレーターやグラフィックデザイナーなどクリエイターの仕事に欠かせないツールとして普及してきた。
 XP-PENのタブレットにはライバルの製品と肩を並べる性能を持ちながら、より安価でコストパフォーマンスに優れる製品が多く揃うことから、昨今ではクリエイターを越えてビジネスパーソンや学生にも注目されている。
 タブレットとデジタルペンを組み合わせるとPCの画面操作がより直感的に、かつ繊細にできるのが大きな特徴だ。これが活かせる事例として、パワーポイント等のプレゼンテーションに使うファイルをペンで図形を描くような感覚で素速く作ったり、PDFのドキュメントファイルに手書きで赤字を入れて返す作業などが考えられる。
●「液タブ」と「板タブ」はどちらがおすすめ?
 今回はXP-PENの売れ筋製品から液晶タブレットの「Artist 12 Pro」と、ペンタブレットの「Deco mini 7」を各カテゴリの代表的な機種として取り上げたい。液タブは画面を見ながらペン書きができるので、デジタルグラフィクス・タブレットを初めて使う人にも扱いやすいと思う。接続したPC側でアプリを立ち上げて、PCと同じ画面をタブレットに表示しながらペンで描く。
 XP-PENからはさまざまな画面サイズの液タブが発売されているが、できればPCの画面サイズと同じ、または近いサイズのタブレットを使う方が作業中に画面を見比べた時に違和感が少ないのでおすすめだ。
ペンタブレットはPCとペンを動かす手元が離れるので、液晶タブレットに比べると操作のコツを掴むまでに最初のうちは少し時間がかかるかもしれない。液晶を搭載していないぶん、ペンタブレットの多くは軽く薄型で取り回しがよい。そして手頃な価格の製品も多く見つかる。
●ポータブルサイズの板タブ:Deco mini7
 最初にXP-PENのペンタブレット「Deco mini7」をMacBook Airに接続して試してみた。XP-PENのホームページに公開されているドライバーをインストールして、本体に付属するUSBケーブルを使ってMacBookに接続する。macOS 10.10以降のプラットフォームに対応している。
 タブレットの本体は9.3mmと薄型で、質量も約307gと軽い。家の中だけでなくシェアオフィスやカフェにPCごと持ち出してモバイルテレワークにも使える。USBバスパワー給電ができるため、別途アダプターを持ち歩く必要もない。
 専用のスタイラスペンは充電いらずのバッテリーフリー。安心して長時間に渡るモバイルワークにも没頭できる。筆圧感知の精度が高く、傾き検知機能も搭載されているので、イラストレーターには繊細な線画や色塗りもできる板タブとして人気を集めているようだ。

 同社オンラインサイトでの販売価格も5590円(税込)と安価だ。スタイラスペンは使い込むほどに先端が短くすり減ってくるが、ペン先を交換すれば長く使える。
 アップル純正のプレゼンテーション作成用アプリケーション「Keynote」を立ち上げて、最初にDeco mini7で報告書の大まかなレイアウトを決めてオブジェクトを配置する。あとはキーボードで文字を入力していくというワークフローが確立できたら、企画書やプレゼンテーションのスライド資料の作成がとても効率よくこなせた。
 Windows PCには元からペン入力に対応するタッチパネル搭載ノートPCも商品化されているが、Macにはこれがない。Deco mini7をMacにつないで、画面やアプリケーションをスタイラスペンで触れて手早く操作できる感覚はとても新鮮だった。なおDeco mini7はAndroidスマホ・タブレットにUSBケーブルで接続してペン入力操作ができる。スマホでメモを書き留めたり、イラストを描いたりとPC作業の補助的なツールとしても役に立ちそうだ。●快適書き味の液タブ:Artist 12 Pro
 続いて液タブの人気モデル「Artist 12 Pro」をWindows PCに組み合わせて使ってみる。こちらも最初にXP-PENのホームページからドライバーをインストールしておく必要がある。
 PCとの接続は本体に付属する3-in-1ケーブルを使う。USBのほかHDMI端子に接続して、さらに余った1基のUSBケーブルを電源アダプターにつないでタブレットに給電する。
セットアップは複雑ではないが、Deco mini7に比べると必要になるケーブルの数とPC側の端子が増える。そしてタブレットが少し大きくなる。自宅のデスクに少し広めのワークスペースを確保して、在宅ワークの作業環境を拡充するデバイスとしたい。
 なお、Artist 12 ProはmacOS環境にも対応しているが、MacBookシリーズの場合、ここ数年で発売されたモデルにはHDMI端子やUSB-A端子がないため、Artist 12 Proに同梱する3-in-1ケーブルが直接つなげない。アップル純正のアクセサリーとして販売されている「USB-C Digital AV Multiportアダプタ」などを間に挟んで使おう。
 Artist 12 Proは液晶画面に直接描けるのでまるでペンを使って紙に文字や図形を書いているような書き味が得られる液タブだ。ペン先の動きに対する追従性能が高く、力を使わずにすっと自然に文字や線を描ける。
 ペンの筆圧感度は設定アプリケーションから細かく調整できる。専用スタイラスペンは柔らかなシリコン製のグリップとしているので長時間の筆記作業でも疲れにくかった。ストレスフリーに使えるデバイスであることは、快適なテレワーク環境を実現するために最も大事な要素といえる。
 ディスプレイにはフルHD解像度のIPS液晶を使っている。視野角も178度と広く、画面を斜めの角度からのぞき込んでも輝度が落ちることなく自然な色バランスを保つ。
筆者の場合、編集部に納めた原稿の校正確認のやり取りはPDFや画像ファイルに手書きで修正や追記の依頼を入れる作業がはかどった。ファイルを紙に印刷して赤入れをする準備の手間とコストも省けた。
 製品や人物の写真を撮って、画像データをPhotoshopで加工する作業も液晶タブレットとペンによる組み合わせの方がマウス、トラックパッドよりも格段に精度の高い作業をストレスなくこなせてよかった。タブレットのある作業環境に一度慣れてしまうと後戻りができなくなりそうだ。
●テレワーク環境の品質向上に確かな手応えアリ
 今回テストした液タブの「Artist 12 Pro」は、XP-PENのオンライン直販サイトでは2万8310円(税込)で販売されている。同等の機能と性能を備えるライバルの製品に比べるとコストパフォーマンスの面で魅力的に感じる。クリエイターからの評判がとても良いことは噂に聞いていたが、筆者も改めて自身の在宅ワーク環境で試してその実力を思い知らされた。ハイエンドクラスのワイヤレスマウスやキーボードを買い足す感覚で試してみたくなる。
 今後もしばらくは多くのビジネスパーソンにとって、オフィスを離れてテレワークを続けなければならない状況が続くことになりそうだ。この機会にXP-PENのデジタルグラフィクス・タブレットを導入して、仕事環境の充実を図ってみてはいかがだろうか。(フリーライター・山本敦)
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