いまやすっかりオーディオ市場に定着した“完全ワイヤレスイヤホン”というジャンル。アップルの「AirPods」シリーズが代表的な存在だが、スウェーデンのオーディオブランド「EARIN」が全ての先駆けだ。
2015年に初代、17年に第2世代を発売し、このたび第3世代の「EARIN A-3」のリリースに至った。今回は、実機をさまざまなシーンで視聴し、新しくなったポイントを確かめてみた。

 EARIN A-3は、旧世代モデルからあらゆる面で大きな変化を遂げている。筒状の形状が特徴だったケースは、AirPodsをはじめとした多くのメーカーが採用しているスクウェア形状にチェンジ。上ぶたにさりげなくブランドロゴが刻印されており、表面にバッテリ残量を示すLED、丸みを帯びた底面にUSB Type-Cのコネクタを搭載している。
 カラーは、シルバーとブラックの2色。今回のレビューでは、シルバーを使っていく。金属素材のボディは、非常に洗練された印象を受ける。このあたりは、さすがの北欧ブランドだ。実機に触れて真っ先に感じたのが、その小ささだ。手のひらにすっぽりと収まるサイズ感で、厚みもそこまでないのでポケットなどにも入れやすかった。
 どちらかというとスタンダードなケースと違って、イヤホン本体に独自性が詰まっている。
従来はカナル型だったが、今回からはインナーイヤー型を採用。左右のイヤホンは同じ形状でどちらの耳に入れても構わない。特許を取得しているという「自動認識機能」を搭載しているので、どちらが右でどちらが左か、ということを考える必要がないのは非常に使い勝手が良かった。
 イヤーチップを必要としないので、装着感に不安があったが、これは全く杞憂だった。人によるのかもしれないが、記者の耳にはすっぽりときれいに収まった。カナル型は、しっかり耳穴をふさいでいるという安心と引き換えに圧迫感があり、長時間のリスニングに負担がある。一方、EARIN A-3は耳穴に抜群の安定感でホールドされつつ、つけているのを忘れるほど装着感が軽い。この着け心地は、EARIN A-3の最も特筆すべきポイントだと感じた。
 肝心の音質に関しても、コンパクトな見た目と裏腹にしっかりと厚みのあるサウンドを再生する。インナーイヤー型なので重低音は“腹に響く”というほどではないが、どのジャンルの音楽でも特徴を損なわないバランスの良さを魅力に感じた。また、定位感の優秀さにも驚いた。繰り返しになるが、「このサイズで!?」と感動する心地いい音場を楽しむことができた。

 EARIN A-3は左右イヤホンにそれぞれデータを伝送するTrueWireless Stereo Plus技術を採用しているので、電波が混線した場所においても音が途切れにくい。4個のマイクを搭載しており、電話やビデオ会議においても快適に使用することができた。パッシブノイズキャンセルと風切音の低減アルゴリズムを組み込んでいるので、外での通話もクリアだ。
 本体のバッテリは、1回の充電で最大5時間の再生が可能。充電ケースでチャージすれば最大30時間の電池もちを発揮する。また、最新モデルならではというところでは、ワイヤレス充電に対応したことがあげられるだろう。スマートフォンスマホ)で利用している人なら分かると思うが、この便利さは慣れると手放せなくなる。これからのスタンダードになるであろう技術なので、長く使いたい人にはうれしい限りだ。
 少し注文をつけるとするなら、操作性に若干の不便を感じた。EARIN A-3は、本体表面のタッチセンサーで再生・ポーズ・曲送り・曲戻し・音声アシスタント起動などのコントロールができる。ただ、このセンサーが耳の周りを触ったときやイヤホンの位置を調整するときににたびたび反応してしまった。小型でボタンを排したシンプルなデザインを採用しているため、仕方ないかもしれないが、やはり気になる部分ではあった。
また、オープンでノイキャン非搭載なので大きな騒音のする場所はあまり向いていないように感じた。
 とはいえ、最後の不満は重箱の隅をつついたようなもの。総合的に評価して、EARIN A-3は次世代モデルにふさわしい新たなリスニング体験をもたらしてくれる名機と言って差し支えないだろう。ポイントは多くあるが、何といっても冒頭に述べた“着けていることを忘れる装着感”が特出している。今はリモートワークなどで長時間ヘッドセットを装着している人も多いと思うが、十分にそうした用途にも応えられるように感じた。(BCN・大蔵大輔)
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