一方、4Kビデオカメラは0.42とふるわない。フルHDモデルに至っては0.23とさらに悪い。もともと、デジカメとビデオカメラの販売台数構成は、デジカメ7に対してビデオカメラ3の割合。
デジカメの差別化ポイントが写真ではなく動画になってきている。デジカメであっても、動画機能を前面に押し出したデジカメのリリースが目立っているからだ。
この1年で最も成功したのは、ソニーの「ZV-1」だ。昨年6月に発売したコンパクトデジカメだが、自撮りを多用しつつ動画で日常を記録して発信するVloggerをターゲットにした。カメラのカテゴリながら、動画撮影用途を前面に押し出している。
発売から1年が経過しても、この5月現在でコンパクトデジカメの販売台数シェア4.0%。平均単価(税別)が2万9000円のコンパクトデジカメ市場で、平均単価8万6900円のカメラが上位にランククインしていることからも、その人気がうかがえる。
最近では、6月に発売するパナソニックのレンズ交換型カメラ「GH5 II」も動画撮影機能を前面に押し出した製品だ。YouTubeライブで行った製品発表会では、話題のほぼ100%が動画撮影機能に関する内容だったのには驚いた。さらに、5月に青山にオープンした「LUMIX BASE TOKYO」は、主に動画クリエーターを主なターゲットにした多目的スペース。
実際、ライブ配信や録画などもできる簡易スタジオも備えている。動画クリエーターのための施設という印象だ。この1年、デジカメ市場で同社のシェアは年間を通して4%前後で低迷しており、動画に振り切ることで難局を乗り切ろうとしているようだ。
レンズ交換型デジカメで動画撮影が本格化したのは、キヤノンが2008年に発売したフルサイズ一眼レフ「EOS 5D Mark II」から。大きな撮像素子と高性能なレンズの組み合わせで、比較的安価に本格的な動画が撮影できると話題になった。しかし、静止画向けのカメラだけでは、動画撮影時に不便な点も多かった。
あれから15年余り。腑に落ちないものの、いまだにフィルム時代の一眼レフの形を継承したボディで動画を撮影するというスタイルは、あまり変わっていない。一方で、ビデオカメラは縮小が続いているという妙な現象も起こっている。
デジカメの動画用途が注目されているのは、YouTuberなど動画配信を行う人たちが増えたからだともいわれる。高画質な映像コンテンツを作りたいというニーズも高まっているようだ。
※6月9日追記:当初「EOS 5D」に動画機能が搭載されたとしていましたが、「EOS 5D Mark II」の誤りでしたので訂正いたしました。
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