フェーダーを見ると気分が上がる。音響の世界でよく使う、音量を調整するための部品のことだ。
ボリュームつまみと同じ働きをするが、上下に直線的に動かすため、ボリューム位置が直感的に分かりやすい。複数の音源の音量を調節する機械、ミキサーに必須の部品だ。レコーディングスタジオやライブ会場でフェーダーがずらりと並んだミキサーを使っている写真を見たことがある人も多いだろう。フェーダーを操作する様子が、いかにも機械を自在に操っているようなイメージで格好良く見える。そのフェーダー搭載が特徴の製品、ヤマハの「AG03」が大人気だ。

 この1年あまり、PCの用途は大きく変わった。特に、音や映像を扱う機会は各段に増えたのではないだろうか。もちろんコロナ禍の影響。テレワークやリモートワークの機会が増え、オンライン会議の頻度が激増したからだ。映像ニーズで市場が膨らんだのがPCカメラ。市場規模はコロナ前に比べ4.6倍に拡大した。顔出しが求められるオンライン会議の場合、カメラは必須。
しかも、PCにはカメラがないものも多いのでPCカメラが売れているわけだ。
 映像に比べ音のニーズは地味だが、それでもPCにマイクなどを接続するオーディオインターフェース市場は1.8倍になった。ライブやレコーディングで使うような、本格的なマイクやその他の音源をPCに接続するために必要な機器だ。YouTubeなどで動画を配信する層には必須アイテムとして多く使われている。
 オンライン会議用途でオーディオインターフェースを経由してマイクを使うのはあまり一般的ではないだろうが、音にこだわる一部の人たちには愛用されている。
 オーディオインターフェースで、ダントツの強さを維持している製品がヤマハのAG03だ。2015年の発売から6年以上たってもオーディオインターフェースでトップシェアを維持している。この3月は44.2%とシェアが急伸。5月も37.2%と、2位以下を20ポイント以上つき離す頭抜けた売り上げを続けている。白いコンパクトな筐体に、PCで音を扱う際の必要最小限の機能を詰め込んだ。1万円台半ばの価格に収めた手頃さもあって受けているようだ。
 コロナ禍であまりにも人気が出てしまったこともあり、昨年の春ごろは供給不足に陥り半年待ちの珍しくなかったが、このところ供給が安定している。

 ヤマハでは、「ウェブキャスティングミキサー」として販売しているAG03。その名の通りネット配信に特化したオーディオインターフェースだ。マイク1本とエレキギターをつないだ弾き語りなどにも対応できる。PCで再生した音を配信に乗せることができる「ループバック機能」や192Khz/24Bitのハイレゾ対応、USBバスパワー駆動、ミニプラグ式のヘッドセット直挿し対応など、特徴の多い製品でファンも多い。
 しかし、最も目立つのはマイクの音量調整に使うフェーダーだ。マイク入力は1つかないのでフェーダーも一つしかないが、素早く操作できボリューム位置も分かりやすく使いやすい。
 販売台数シェア2位のBEHRINGER UM2も似たような機能を持つ製品だが、フェーダーはない。上位機種のヤマハのAG06はシェア3位だが、2本のマイク入力に対応したことでフェーダーではなく一般的なつまみ式のボリュームになっている。4位のSteinberg UR12、5位のBEHRINGER UMC22のいずれもフェーダー非搭載の味気ない面持ちだ。一方、フェーダー搭載のAG03は、2018年5月~2021年5月までの3年の累計シェアでも25.0%と、ぶっちぎりのNo.1。人気の秘密は、はやり気分が上がるロマン仕様のフェーダーにあるに違いない。(BCN・道越一郎)

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