オーディオやヘルスケアの分野で数多くの製品を展開しているフィリップスは、日本でも老若男女に認知されている世界的なブランドだ。では、そのフィリップスから「補聴器」が販売されていることはご存じだろうか。
2020年1月、世界的な聴覚ヘルスケア企業であるデマント・ジャパンがフィリップスと補聴器分野でライセンス契約を締結。日本で同ブランドの補聴器が購入できるようになった。
 補聴器メーカーは聴覚に関する医療機器を専門に開発・販売している企業が多く、必要になるまでその名前をあまり知らないケースがほとんどだ。補聴器初心者は購入を検討する段階で、どこのメーカーを選べばよいのかという問題に直面する。その点、フィリップスは多くの人が信頼に値するという認識をすでに持っており、市場参入以来、そのブランド力で着々とユーザーを増やしている。
 そんなフィリップス補聴器は、今秋に次の戦略に打って出た。それが日本初となる「フィリップス補聴器コンセプトストア」だ。9月7日、マルイシティ横浜店の地下1階に補聴器専門店「ヒヤアリングストア」に併設する形でオープンした。どのような工夫があるのか、現地で取材してきた。
●先進技術が凝縮! フィリップス補聴器の特徴
 まずは、フィリップス補聴器のラインアップと特徴を簡単に説明しておきたい。2020年1月に日本市場に参入した同ブランドでは「フィリップス ヒアリンク」シリーズとして、耳あな型や耳かけ型で多くの製品を展開している。今年3月にはAI搭載モデルも発売し、選択肢が広がっている。

 幅広いカテゴリーの製品を手がけるフィリップスらしく、見た目はスタイリッシュでコンパクトだ。補聴器を初めて目にする人はそれまで抱いていたイメージを覆されるだろう。そして、なにより注目したいのが、多数の先進技術を搭載していることだ。
 たとえば、AIによる音声処理技術「SoundMap 2」は、1000万回相当の音環境の学習・検証を重ね、知識を蓄積した学習済みの人工知能を搭載することで、騒がしい環境においても、そのときにベストなクリアな音を耳に届けてくれる。また、補聴器のBluetooth通信機能「SoundTie 2」はスマートフォンと連携することで、通話や音楽を補聴器から再生することができ、生活のあらゆる場面で役立ってくれる。
 7月からは補聴器販売店まで出向くことなくオンラインで補聴器の調整(フィッティング)を受けられるサービス「フィリップス リモートフィッティング」の提供を開始したことも見逃せない。これはフィリップス補聴器のユーザーがスマホやタブレットを使って、自宅や外出先からアプリ経由で販売店のスタッフとコミュニケーションをとりながら、補聴器の調整を行えるというもの。外出がしづらい昨今の事情もあって、評価を高めている。
●補聴器の世界を気軽に体験! コンセプトストアの仕掛け
 実は特定の補聴器ブランドを全面に打ち出したコンセプトストアというのはとても珍しい。一般的には補聴器専門店でスタッフとカウンセリングしていて、どのようなブランドがあるのか知るという場合がほとんどだろう。フィリップス補聴器コンセプトストアは「ヒヤリングストア マルイシティ横浜店」に併設されている。まずは補聴器がどんなものか知りたいという人であればコンセプトストアを訪問するとよいだろう。

 もちろん双方は連携しており、ヒヤリングストアでフィリップスに興味を持った人がコンセプトストアを訪問することも可能だし、コンセプトストアでフィリップス補聴器についてより詳しく知りたいというときはヒヤリングストアのスタッフが対応する仕組みになっている。ヒヤリングストアはカウンセリングからフィッティング、購入後のアフターケアまで一貫してサポートしており、補聴器に関する全てが完結するのも魅力だ。
 コンセプトストアのユニークな仕掛けが入口をくぐってすぐの場所に設置されている「体験コーナー」だ。人の頭部の模型に補聴器が装着されており、その脇にヘッドホンが備わっている。ここでは補聴器を装着すると、実際にどのような音になるのか、ということを体感することができる。ヘッドホンは2機あるので、親子で来店して試すということも可能だ。
 フィリップス補聴器はアプリ経由で、音量やモードを切り替えて、個人にカスタマイズ可能という特徴ももっている。体験コーナーでは、このアプリによる操作を自分で行うことで「便利そうだが自分には難しいかも」という不安を取り払うことができる。さらにテレビの音声を直接補聴器に届ける外部機器との連携も同様に体験可能だ。
●オープンな店舗で新規顧客にアプローチ
 今回、取材に際してフィリップス補聴器の武田和浩セールスマネージャーとヒヤリングストアマルイシティ横浜店の山本雅哉店長に話を聞くことができたので、店舗の狙いや期待について聞いてみた。武田氏は「フィリップスの補聴器は発売以来、ユーザーの方に非常にポジティブに受け止められている。ブランド認知の高さから店舗で指名買いするケースも増えている」と販売動向を説明する。

 なかでも目立つのが、比較的若い世代の補聴器ユーザーからの関心の高さだ。デマント・ジャパンは、日本における補聴器装用率を高めたいという目標を持っているが、そのために早い段階から補聴器の必要性を感じてもらうことは欠かせない。フィリップス補聴器はまさに当初の狙い通りにブランド力を武器に幅広い世代に響いているようだ。
 ヒヤリングストアがフィリップス補聴器とコラボレーションする理由も、日本の補聴器市場にデマント・ジャパンと同じ課題を感じているからだ。山本店長は「以前から補聴器の装用人口を増やすために、特定のブランドを打ち出したコンセプトストアを作ることができないか模索していた。多くの人に名前を知っていただいているフィリップスならば幅広い年代の方に訴求できるのではないかと期待している」と語る。
 デパートの店内という出店形態も新規顧客を増やすための武器になるという。「独立した補聴器専門店は中の様子がうかがえず、入店するのに勇気がいるという方も多い。デパート内の店舗であればオープンで通りすがりでも雰囲気が分かりやすい。また駅から近く、家族で待ち合わせて店舗を訪問するというパターンも考えられる」(山本店長)。
 営業時間の長さも魅力だ。独立した専門店は夕方の17時や18時で閉店という店舗も多いが、ヒヤリングストア マルイシティ横浜店はデパートに合わせて20時30分まで(緊急事態宣言下の現在は20時)。
仕事帰りのビジネスパーソンでも無理なく来店できる。10月22日まではオープン記念で全てのフィリップス補聴器が10%OFFになるセールも開催しているので、関心がある人は気軽な気持ちで店舗をのぞいてみてほしい。(BCN・大蔵大輔)
【関連記事】
自宅や職場で補聴器のフィッティグが可能に! フィリップス補聴器が遠隔調整サービスを提供開始
今こそ求められる新しい補聴器販売、「出張訪問」と「リモートケア」の可能性
フィリップスが同社初のAI補聴器を発表、ブランド力を武器に中高年に訴求
フィリップスのIoT対応補聴器、デマントグループから今春発売
編集部おすすめ