iPodは2019年を最後に新製品が登場しなくなり、いつかは終わりが来るだろうと予測されていた。スマートフォン(スマホ)があれば、完全に携帯オーディオの機能をカバーできることに加え、ストリーミング配信で音楽を聴くスタイルも広がってきた。音楽もスマホという流れが確定的になり、iPodの存在意義が失われてしまった。撤退したのはアップルだけではない。この3年で29社が市場から去った。販売台数の縮小は続いている。2019年の10月の販売台数を1とした指数では、この9月は0.4。市場は依然として、前年割れ、右肩下がりの状態だ。
一方、踏ん張っているのはソニー。カセットテープ全盛の時代、1979年に発売したウォークマン初号機から連綿と続く製品群は健在だ。
平均単価(税抜き、以下同)は2万2000円。売れ筋は、ほとんどが2万円前後の製品だ。ところが、15位に登場するソニーの「NW-WM1AM2」は平均単価が14万7000円。結構な高額製品がTOP20に入っている。18位の「NW-ZX507」は6万7000円で、これもそこそこ高い。20位には、FiiO Electronics Technologyの「M11S」が来るが、これも8万1000円。極めつけはソニー「NW-WM1ZM2」。21位とTOP20からは一つ外れるが、なんと34万8000円と、とびぬけて高価だ。
価格帯別の販売台数構成比を見ると、大半は3万円未満。しかし、4万円以上のレンジは常に一定の構成比を維持しつつ、10万円を超える製品が徐々に増えている。昨年9月の時点では、10万円以上の製品は0.4%しかなかったが、この8月には3.1%と拡大。9月時点でも1.8%と一定の存在感を示すようになってきた。一方で3万円未満の製品が94.3%を占めており、手ごろな製品と超高級品の二極化が進展している。
これまでiPodが担ってきた「手軽に音楽を楽しみたい」というニーズは、一方ではスマホに吸収され、他方では、より低価格な専用機に流れている。しかし、スマホではかなえられないハイレベルなオーディオ分野にも、まだまだニーズがある。iPodが去った携帯オーディオは今後、さらに進む二極化の中で、ピュアオーディオ分野もじりじりと拡大させながらオワコン化を回避しつつ、生き残っていくことになるだろう。(BCN・道越一郎)
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