シェア急落が始まったのは昨年11月。前月の10月は22.3%でトップだったが、11月には17.0%と5.3ポイントも失い、一気に3位まで後退した。以降、毎月シェアを落とし続け、2月には8.8%と2桁割れ。それでもシェアの下落は止まらず、ついに5月には4.2%の7位までシェアを落とす結果になった。この間、わずか半年あまり。収益率の悪いコンパクトデジカメから撤退する前触れかとも思われた。しかし同社は6月23日、VLOGCAMのZV-1 IIを発売したばかり。当面撤退はなさそうだ。ただ、大幅なラインアップの整理が進んでいることもまた事実だ。
最も大きな変化はセンサーサイズの構成比に表れている。ソニーのコンパクトデジカメは、昨年5月の段階で1/2.3インチセンサー搭載モデルが販売台数の81.4%。比較的低価格なモデルが大半を占めていた。平均単価(税抜き、以下同)が1万5000円前後のCyber-shot W830を筆頭に、3万5000円前後のCyber-shot WX500などが売れ筋だった。しかし、この5月にはこれらの1/2.3インチのセンサー搭載モデルは23.0%まで縮小。逆に平均単価8万6000円前後のVLOGCAM ZV-1や同15万5000円前後のCyber-shot RX100 VIIなど、比較的高価な1インチセンサー搭載モデルが76.5%を占めるまでに拡大した。
現在、コンパクトデジタルカメラ市場全体では、1/2.3インチセンサー搭載モデルが59.8%を占めている。メーカー別では、トップシェアのキヤノンは1/2.3インチが77.6%を占めるほか、2位KODAKでは、すべてが1/2.3インチだ。その他、instax miniシリーズが好調の富士フイルムは、もっと小さな1/5インチが97.3%。ケンコー・トキナーも、1/2.3インチよりやや小さな1/3.2インチが77.5%を占める。このほか、1/2.3インチモデルの構成比は、リコーイメージングで91.9%、パナソニックでも85.7%を占める。一方ソニーの1/2.3インチは、昨年5月こそ8割を超えていたが、この5月までには2割台に縮小した。
一方、ソニーの1インチセンサー搭載モデルは堅調だ。事実、1/2.3インチ超のセンサーを搭載するコンパクトデジカメでソニーは、キヤノンとトップシェア争いを続けている。ソニー イメージングエンタテインメント事業部の齋藤佑樹 シニアマネジャーは、ソニーはコンパクトデジカメから撤退するのか、との問いに答え「コロナ禍が終わり、旅行に行く人が増えてきた。カメラのニーズも高まっている。ラインアップは変わってきているかもしれないが、コンパクトデジカメをやめるつもりは全くない」と話した。台数シェアは失っても、VLOGCAMで掘り当てた鉱脈を柱に据えつつ、独自の戦略を展開するソニー、フルラインで攻め続けるキヤノン、ソニーが去った空席を突くKODAK、デジタルチェキで突き進む富士フイルム……。コンパクトデジカメ市場の生き残り戦略は各社各様の広がりを見せてきた。(BCN・道越一郎)
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