月次売上高(速報ベース)を発表している家電量販店の10月売上高が出揃った。3月決算企業は前月の9月で上期が終わり10月は下期初月となる月。
前年の10月はエディオンを除いて前同比90%台だった企業が多く、ハードルは決して高くはなかったが、今年10月は前同比90%台にとどまった。

●10月は高い外気温で暖房需要の顕在化はならず
 2023年4~9月までのPOSデータによる月次速報では、8月決算のビックカメラが前年プラスとなったが、同グループのコジマは前年割れだった。そのほかの3月決算量販企業各社は前年の上期に対して増減1%程度の範囲で収まっていた。
 10月は例年であれば暖房シーズンに突入する月だが、23年10月は季節外れの高温となる日が多く暖房需要が顕在化するまでにはいたらなかったといえよう。また、食品・食材の価格上昇は続いており、家電需要にとってはアゲインストの風が吹いている状況ともいえる。
 各社が発表した月次速報によると、ビックカメラの10月売上高は前年同月比107.8%と伸長。月次速報発表家電量販企業の中で唯一、前年実績を上回った。
 ヤマダホールディングスのデンキセグメントは前年同月比96.6%で、エディオンは同96.0%だった。ケーズホールディングス(以下、ケーズデンキ)は同95.3%、上新電機は同92.0%、コジマは同92.3%だった。
●10月のテレビ売上高は3社が前年8掛けに
 各社の商品別売上高で、共通して数値を発表している商品の10月の状況を見ると、10月は全体的に商品の動きが芳しくなかった。前年割れが続いているテレビは需要回復の動きが見られず、白物家電も前年割れだった企業が多い。
 3月決算家電量販企業の中間決算でも言及する企業が多かったが、やはり諸物価上昇に伴う消費マインドの低下や家電商品の売価上昇などが買い控えにつながっていると考えられそうだ。

 ケーズデンキの10月のテレビ売上高は前年同月比95.7%。月次速報公表企業の中で、ケーズデンキが最も高い数値となっている。同様にエディオンは同87.7%、コジマは同85.4%、上新電機は同81.8%と、いずれも前年実績に対して8掛けという結果だ。
 3月決算企業の第2四半期の売上高をけん引したといっても過言ではないエアコンはケーズデンキが前年同月比103.5%と前年実績をクリアしたが、コジマは同86.5%でエディオンは同83.6%。上新電機にいたっては同63.8%と大きくダウンした。
 夏シーズンの冷房需要が終わり、暖房需要へと切り替わる段階だったが、前述のとおり10月としては異例の高温となる日が多かった。そのため、暖房としてのエアコン需要が立ち上がってこなかったことが各社の売上高の減少要因の一つといえるだろう。
●冷蔵庫の10月売上高は全社とも前年割れ
 冷蔵庫は4~9月の上期でエディオンが前年同期比98.7%、ケーズデンキが同93.2%、上新電機は同101.0%と各社によって差が生じている。しかし、10月は全社とも前年割れとなり、エディオンとケーズデンキはともに前年同月比93.2%でコジマは同91.5%、上新電機は同80.9%である。
 上新電機は9月中旬から約2週間、阪神タイガースのリーグ優勝に伴うセールを実施した。これが全体売上高はもちろん、上記の各商品売上高にも大きく貢献したため、9月と10月の差異が開いているのだ。
 その他の商品を見ると、PCは全社とも前年同月比70%台と非常に厳しかった。
洗濯機も押し並べて同90%台。その中で携帯電話は好調だったようだ。携帯電話の売上高を公表しているのは上新電機とコジマだけだが、10月の携帯電話の売上高は上新電機が同112.1%、コジマは同108.1%。公表はしていないものの、ビックカメラも好調だったという。
 また、このところ出荷状況が改善してきたデジタルカメラについては、ビックカメラが10月の販売は好調だったと述べている。
 22年11月はビックカメラのみ前年実績を上回り、各社とも前同比は90%台だった。前年同月対比のハードルとしては決して高くはない。だが、消費マインドが低下している状況は現在も続いている。どのような結果が出るのか、発表を待ちたい。
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