PC専門店「パソコン工房」を展開するユニットコムは11月29日、都内のカンファレンスセンターで2024年3月期の方針説明会を開催した。新型コロナ前の19年から4年ぶりの開催となるがコロナ禍に業績は大幅に伸長。
17年に275億円だった売上高は22年に535億円となり、ほぼ倍増を達成した。ゲーミングPC事業や積極的な出店戦略が成長のエンジンだ。直近24年3月期第2四半期は物価高騰などの影響で7900万円の営業損失となったが、端田泰三社長は「年末商戦の第3四半期で黒字転換する予定」と自信を示す。

●コロナ禍で売上高が倍増
 協和銀行(現りそな銀行)の元バンカーらしく、2017年1月にユニットコムの社長に就任した端田泰三社長は、有言実行の経営で手腕を発揮している。17年当時に発表した中期経営計画(18~20年)の売上計画は、いずれも大幅に伸長している。
 コロナ禍のテレワークやeスポーツによるゲーミング需要などを追い風に、売上高は21年に521億円、22年に535億円と順調に伸びた。17年比で見ると195%のほぼ倍増となる260億円を新たな売り上げとして積み上げた。
 23年3月期はコロナ特需の反動減に見舞われて496億円(92.7%)の減収となったが、それでも17年と比較してPC販売、PCパーツ・周辺機器・サプライ、リユース事業のコア事業で成長を成し遂げた。
●会員ビジネスで利益面を強化し、経営基盤を盤石に
 24年3月期からスタートする中期3カ年計画(24~26年3月期)の最終年度では一気に700億円を目指す。目標達成に向けて、25年10月のWindows 10サポート終了(EOS)に伴う買い替え需要と、コロナ特需後の買い替えサイクルをとらえながら、経営資源を集中的に投下していく。
 ユニットコムの売上構成比は、国内自社工場で製造するオリジナルPC事業が48%、PCパーツ・周辺機器・サプライが38%、リユースが10%、サービス・サポートが4%となっている。
 中でも注力しているのが、会員ビジネスであるサービス・サポートの強化だ。
ユニットコムが提供する販売・サービスの価値を評価するファン層をオムニチャネル戦略で囲い込みながら、営業と顧客基盤を拡大していく。
 既にECサイトのEコマース会員は83万人いる。これを25年3月末までに94万人に増やす計画を掲げる。また、法人事業のビジネス会員は9万社から10万社に増やす。LINE会員は38万人から41万人、有料会員は5万人に増やす計画だ。
●ポテンシャルの高い「首都圏エリア」に出店攻勢
 本社がある関西や中部エリアに強いパソコン工房の出店戦略では、「太平洋ベルト戦略」と称する首都圏エリアへの攻略を実施する。商圏が重複する衛星店舗をスクラップしながら、都心環状の30km圏内に攻めのスタンスで出店していく。
 端田社長は「首都圏の売り上げは50億円で1割の構成比だが、ポテンシャルは250億円ある」と語り、パソコン工房のブランド認知や成長の余力は大いに残っていることをアピールした。
 また、端田社長の発表の中で何度か繰り返し出てきたのが「筋肉質な収益構造」というキーワード。前述したEコマース会員などの強化で顧客基盤を盤石にすることを意味する。実際、24年3月期中間は減収だったものの、サポートなどの手数料収益の強化により売上高粗利益率は前年同期比で0.1%上昇したという。
 リアル店舗とECのオムニチャネル戦略で顧客や経営の収益基盤を固めつつ、首都圏市場への積極的な出店攻勢でゲーミングPC販売やWindows 10のEOS需要をつかみ取っていく。
ユニットコムの今後のさらなる成長に期待したい。(BCN・細田 立圭志)
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