「おまえがしゃべるたびに足の小指をタンスの角にぶつけますように!」 そんな呪いをかけたくなる相手が何人か頭に浮かんでしまうあなた、こんにちは。ほんとに禍々しい想いでいっぱいになる今日このごろですよね。
でもね、実は「呪いの言葉」に縛られているのは、あなた自身かもしれない、という怪談が今日のテーマ。
 いきなりスピリチュアルか!?と身構えないで。ご安心ください。ここでいう「呪いの言葉」とは、あなたの思考の枠組みを縛ってしまう言葉のこと。たとえば「いやならやめれば?」ってセリフ。問題は別のところにあるのに、やめるかとどまるかという、あなたの選択の問題にされてしまいます。
あなたは「たしかにそうだけど……」「でもやめるわけには」と葛藤して、「とりあえずここは黙って従っておくか」と、相手にとって都合がよい方向に知らずしらず誘導されてしまうのです。
●だれかの言葉に行動を縛られていませんか?
 とくに女性はこの手の言葉を投げられることが多いと思います。
「お母さんでしょ」「仕事と家事の両立はどうするの」「専業主婦のくせに」「シンママだから……」「ふたりめは?」などなど。
 相手を萎縮させて、考え方や行動まで縛ってしまう。それが「呪いの言葉」なんです。一時期SNSで話題になった「母親ならポテトサラダくらい、つくったらどうだ」も、まさにこれ。
あなたはスルーしているつもりでも、くりかえし聞かされることで、無意識のうちに内面化していることもあるのでご用心。
●心理的な距離を置いて状況を俯瞰しよう
 「呪いの言葉」を正面から受け止めてしまうと、心理的にどんどん追い込まれちゃいます。この理論の第一人者であり、『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)を執筆した上西充子氏(法政大学キャリアデザイン学部教授)は「『自分が悪いんだ』『もう、どうしようもないんだ』という心理状態に追い込まれていると、身動きが取れなくなり、具体的な対処行動に乗り出せない」と、その危険性を指摘します。
 では「呪いの言葉」から逃れるためにはどうしたらいいでしょうか。
 上西氏は「呪いの言葉」への切り返し方を考えようと呼びかけています。考えるときのポイントは4つ。

■相手の土俵にのらない
「これは私を追い込むために投げられている言葉なんだ」と気づいて、その言葉を正面から受け止めないこと。心理的距離を置いて考える枠組みを相手に支配されないようにします。
■相手がなにから話を逸らそうとしているかを考える
 本当の問題はどこにあるのかを忘れないで。おそらくそれは相手にとって都合の悪い事柄では?
■状況を俯瞰する
 なぜそういう言葉を相手は私に投げてくるのか冷静に考えてみましょう。
■自分を主語に語らない
 問題は自分の側にあるのではなく相手の側にあると仮定して、相手に問い返す表現を考えてみましょう。「いやならやめれば」といわれたら「そうやっていつも黙らせてきたんですか?」というように。

●主語を相手に置き換えて、呪いを解いてみよう
 気をつけたいのは、切り返しの言葉をホントに口にするかどうかは別の話。相手によってはマジでこじれちゃうからね。
 ここで大切なのは、「自分はこの言葉に縛られている」と気づいて呪縛から逃れること。こり固まった考えから解放され、落ち着いて解決策を探るための手法だと思ってください。
 ためしにやってみましょうか。自分を主語にしない、相手に問い返す表現。

 「ふたりめはまだなの? 早く産んだ方がいいよ」
と言われたら(よくあるクソバイスですね)。
 「うーん、私はまだいいかなって……」
 これだと自分が主語になっています。相手に問い返すなら
 「うちの子どもが気になる?」
 ほら、相手の関心が可視化されてきますね。
 「●●ちゃん女の子なのにサッカーするの?」
 「なでしこジャパンって知らない?」
 「●●ちゃん男の子のくせに泣き虫ね」
 「泣き虫に男女って関係ある?」
 「そんなことも知らないの?」
 「あなたは知らない人を馬鹿にするの?」
 シュッシュッ、かかってこんかい。言葉のシャドーボクシングみたいですね。
●テンプレ表現に負けないで
 こうしてみると、クソバイスやイラッとする言葉って、「女の子なのに」「男の子のくせに」のようにいわゆるテンプレ的な言い方が多いですよね。
相手の個性や好みなどに関係なく型にはまった言い方をぶつけてくるから、その程度の関係性だったんだなあと、ガッカリが透けて見えてしまう。
 家族や、職場の人間などからも呪いの言葉をぶつけられる人は、かなりしんどいと思う。深刻な場合は自分ひとりでなんとかせず、できないことは「できない」とハッキリ言って適切な助けを求めてください。マジメな人ほどつぶれちゃうからね。
 前述の切り返し方が正解というわけもないので、相手との関係性やシチュエーションに応じていろいろなパターンを考えてみてくださいね。
 自分を認めてくれた人や力をもらった言葉(上西氏いわく「灯火の言葉」)を思い出すのもよさそう。意識して言葉の引き出しを増やしておくと生きづらさからちょっとずつ解放されるかもしれません。
 あ、でもね、逆に注意したいのが、あなた自身が「呪いの言葉」をかけている場合。
 「どうせ、あなたは」「やってもムダ」「汚すだけだからやらないで」「女の子なんだから必要ないでしょ」「男の子なんだから泣いたらダメでしょ」「●●ちゃんならできないはずないわ」
 ううっ、すみません、身に覚えありまくりです。YouTubeでも上西氏がゲームクリエイターの飯田和敏氏(立命館大学映像学部教授)らと、「呪いの言葉」の切り返し方を実践的に考えたワークショップを視聴できます。
 配信時間がかなり長いので、ラジオ感覚で流しておくと良いですよ。相手を肯定して力を与える「灯火の言葉」や、自分自身の生き方を肯定する「湧き水の言葉」など思考のヒントがたくさん登場します(ネーミングはちょっと宗教くさいけどね)。
 いやあ、しかし世の中に「呪いの言葉」がなんと多いことか。早く気づいて、生きやすくなる人がひとりでも増えるよう祈っています。(サラマンダー華子/イラストと漫画・しばざきとしえ)
サラマンダー華子
ジャンルを問わない雑食系コピーライター

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