国もオンラインにおけるCtoC市場の盛り上がりを新しい経済活動として捉えている。経済産業省が毎年実施している「電子商取引に関する市場調査」には、平成28年(2016年)度分からCtoCの市場規模が初めて追加された。調査を担当した商務情報政策局 情報経済課 課長補佐の岡北有平氏は「スマートフォンの普及と節約志向の高まりがフリマアプリの拡大に拍車をかけたのではないか」と分析する。
●スマホの普及と節約志向が追い風に
そもそもオンライン上で消費者が商品の取引きをする行為自体は目新しいものではない。「Yahoo!オークション(ヤフオク)」をはじめ、オークションサイトで物の売買は活発に行われていた。それが2、3年前から若い世代を中心に「メルカリ」が受け入れられたことで、一気に利用者の裾野が広がった。
岡北氏は「従来のオークションサイトはインターネット上で物を売買することに慣れた玄人向けという側面があったが、フリマアプリはスマートフォンがあれば誰でも簡単に参加することができる」と指摘。スマホの普及がフリマアプリの成長に拍車をかけたと分析する。また、所得の伸び悩みが続くなかで高まった節約志向も追い風になったという。
安心して商取引するための土壌がすでに整えられていたこともプラスに働いた。ネットオークションの黎明期には、決済は完了したが物が届かないという問題を解決するために、売り手と買い手の間に第三者が介入することで取引の安心を担保するエスクロー決済の仕組みが培われた。
●新しい経済活動に期待 ガイドライン策定で成長をサポート
市場が急速に成長する一方で、予期せぬ問題も起きている。17年4月にメルカリで発生した「現金出品」の横行は記憶に新しい。だが、行政の見方は冷静だ。「メルカリの対応は迅速だった。以降、出品に対するレギュレーションも強化されている。トラブルを事前に防止することは必要だが、新しい経済活動を促進するためにも市場が健全に成長できるようサポートしていくことが重要」と、国が推奨するシェアリングエコノミーの一形態としてフリマアプリに期待を寄せる。
経済産業省では16年に「シェアリングエコノミー検討会議」を実施し、フリマアプリを含む幅広いシェアリングサービスの今後について議論した。そのなかで、新しいビジネスモデルが登場する業界では、一律の法規制はマッチしないという考えが示された。
そこで策定されたのが、「シェアリングエコノミー・モデルガイドライン」だ。相談窓口の設置や本人確認の実施、トラブル時の保険制度などの項目が設けられており、シェア事業者が安全性を確保するための判断基準にすることを目的とする。
「現状、プラットフォーマーを規制する法律は議論の途上にある。
前例のない新しいムーブメントゆえ、フリマアプリ関連の問題は大げさに取り上げられる傾向にある。しかし、行政は発生したトラブルには的確に対処することを求めつつも、指導によってプラットフォーム事業者が委縮する事態は避けたいと考えているようだ。もちろん今後の議論次第では、現在のサービスに見直しを要求する可能性はあるが、まずは成長の土台を整えることに意識を向ける。(BCN・大蔵 大輔)
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