出典:国民民主党の「政策パンフレット2024」
●1日7時間働くなら正社員の方がよくない?
年収103万円などの各壁は家族構成や就業状況など、家族ごとに条件が違うため、一律で示すことが難しい。ただ、報道などを見れば、課題も多々あるが、好意的な意見も多く、筆者も目先の政策としては賛成である。
ここで確認が必要なのが、勤務時間の増加分である。壁が引き上げられたからと言って自動的に収入が上がるわけではなく、その分、自分の時間を提供しなくてはならない。この政策が実現すれば、収入のシミュレーションだけでなく、自分のライフスタイルを十分に考えた上で勤務時間を決める必要がある。
増加勤務時間のシミュレーション
例えば、日本の最低賃金平均の時給1055円で計算した場合、年収103万円を得るための年間労働時間は976時間だが、年収178万円を稼ぐには1687時間となる。年間で715時間長く働く必要がある。
1日の勤務時間(20日で計算)に換算すると、年収103万円で4時間、年収178万円で7時間となる。1日当たり3時間長く働く必要がある。
1日7時間働くなら正社員としての勤務を考えた方がいいケースもあるだろう。
特に小さなお子さんがいる家庭では、急な発熱などで思うように働けないことも頻繁にあり、こういったことは既に経験されているだろう。結果として、他の「壁」の狭間の一番不利益な勤務時間に着地する可能性があることも考えておく必要がある。
もちろん、時給が上がれば年収103万円を超えるという議論もあるが、政府が目標に掲げる最低賃金の時給1500円は「2020年代」というように、今すぐに実現できるものではない。
●根本原因の解決に全省庁が一丸になってほしい
冒頭、筆者は「目先の政策として賛成」と言ったが、そもそも根本原因の一つは「失われた30年」にある。これがなければ年収は他国のように少なくとも倍増していただろう。今の倍の年収があれば、夫婦どちらかの収入で生活でき、さらに収入を増やしたい方は共働きという、自由で余裕を持った働き方ができたはずである。
現在、企業の利益は社員に還元されず株主に流れ、その多くが外国である。今の日本人は自由な時間を奪われ、家畜のように働かされ、利益は外国に回収されている。
この問題は財務省、厚労省だけでなく、経産省の政策など、全省庁を挙げて取り組むべき問題である。株主資本主義、新自由主義の弊害も明らかになっており、政治家の方々には、国民を最優先に考え、古い制度の抜本的な改革と長期的な成長戦略を示していただきたいと思う。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。
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