●「フォールドタイプ」と「フリップタイプ」のメリット
フォールドタイプは、スマホとタブレット端末の両方を持ち歩くことを望むユーザーにとっては待ちに待ったベスト解だっただろう。一方、フリップタイプはケータイユーザーに馴染みのあるフィーチャーフォン風で、見慣れたスマホの形状だ。大きく広げて便利に使うのがフォールドタイプ、ストレート型スマホを折りたたんで小さく持ち歩けるのがフリップタイプ。フォールドタイプが大画面を生かしたマルチタスクやメディア視聴に、フリップタイプが携帯性とファッション性を重視するユーザーに適しているといえる。
なお、今は3面、4面のディスプレーを搭載した折りたたみスマホや画面の伸びるスマホなども存在するが、ストレートタイプの画面を前提に開発された現在のアプリでは残念ながら存在価値を発揮しがたいだろう。
●横開きタイプのスマホは岐路に
スマホに限らずITは理論的物理的に拡張・収縮を繰り返して、その都度成長してゆく。筆者が最初に手に入れた折りたたみスマホは世界初の折りたたみスマホであるRoyole(ロヨレ)が2018年に発表したFlexPaiの翌年、19年にサムスンが発表した型番なし無印のGalaxy Foldだった。
その後、Galaxy Z Foldを3世代ほど愛用し、並行してモトローラのrazrを2モデル、ハイコスパなnubia Flip 5Gなども使っていた。もちろん、同時並行的にごく普通のストレートスマホも常時数台を使っていた。
フォールドにせよフリップにせよ、開く前の外側にある1枚のディスプレーを一般的には「カバーディスプレー」と呼んでいる。そして開いた時の大きなフォルダブルディスプレーを「メインスクリーン」と呼ぶ。筆者が注目しているのは、世代ごとの変化を著しく感じるカバーディスプレーだ。カバーディスプレーは、折り畳んだ状態でも通知確認や簡単な操作を可能にする重要な役割を担っており、その進化は折りたたみスマホの使い勝手を大きく左右する。
まだ登場からたった1世代しか発表・発売していないGoogle Pixel Foldは置いておいて、今年は既に7世代目になるGalaxy Z Foldのカバーディスプレーの変化を見ると折りたたみスマホの光と影の一端が見える。今から6年前の19年に登場したGalaxy Foldのカバーディスプレーのサイズは上下の額縁が目立つ、たったの4.6インチ(720×1680)だった。その後、世代とともに6.2インチ(904×2316)、6.3インチ(968×2376)と大きくなり、次期モデルは6.5インチと予測されている。
6年間で4.6インチ~6.3インチと液晶サイズが36%大きくなり、解像度が2倍近くまで拡大している。初期のGalaxy Foldでは、カバーディスプレーの横列に並ぶアプリアイコンが多くて3個。従来のストレート型スマホを使っていたユーザーからすると、きちんと使うのならばカバーディスプレーではなくメインスクリーンを開くのが普通だった。
●カバーディスプレイーだけで事足りる時代に
その原則が世代を重ねるたびにカバーディスプレーの画面サイズが6インチを超え大きく変化し、わざわざ折りたたみ画面を開かなくても従来のスマホでやっていたことのほとんどはカバーディスプレーだけで事足りる時代に突入してしまった。折りたたみスマホは業界注目のリーディングエッジ・テクノロジーが集約されるフラグシップモデルなので、必然の結果だ。カバーディスプレーの大型化は、折りたたみスマホの利用シーンを大きく広げることになった。
後編に続く……(T教授)
■Profile
T教授
日本IBMでノートPC「ThinkPad」のブランド戦略や製品企画を担当。その後、国立大学芸術文化学部の教授、非常勤講師として10年間、「ブランドデザイン」などを教える。オリジナルのツバメノートなどをプロデュースする「Thinking Power Project」の創設メンバー。現在はパートタイマーで、熱中小学校の用務員。
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